本田技研工業が自動車メーカーとなってから31年の間、日本では新たに自動車メーカーが誕生する事はなかった。
もはや大手数社ですべてのシェアを分け合ってしまっている市場。収益的には参入のうまみがないと誰もが思っていた。
そんな中、「ただまっすぐにクルマが好き」というひたむきな思いだけで自動車メーカーを志した会社がある。
富山に本社を構える、株式会社光岡自動車である。

ここには、オートメーションの生産ラインはない。言うなれば、ちょっと大きな整備工場。かなづちで鉄板をたたく人、溶接をする人、研磨をする人、内装をくみ上げる人など、コツコツと手作業でクルマづくりが行われている。すべて受注生産のため、月間50台が限界だという。
「大量生産はしない。1000人に1人いるかどうかもわからないがファンになってくれる人のために全力でクルマをつくり続ける。」
そんなこだわりを貫き続ける姿勢に共感し、購入を決めるオーナーも多い。

購入者の多くは、10年や20年は当たり前に乗り続ける。さらには親子で乗り継ぐ人もいるという。大量生産と効率化によって利益を追求することが正義とされてきた消費社会。

そんな中、自分たちが信じるものだけをまっすぐに心をこめてつくるクラフトマンと、決して多くはないがそこに強く太くつながるユーザーがいる。ある意味クルマづくりの原点回帰ともいえる光岡自動車。むしろ、新しいものづくりのあり方がここにあるのではないだろうか。