「好きなお花を描いてみて」と、子供にたずねてみよう。きっとそこにはチューリップや朝顔、そして決して低くない確率でひまわりが登場するはずだ。あなたも子供の頃を思い出してほしい。お絵かきの時間にひまわりを好んで描いた覚えはないだろうか。学校の花壇で育てていたからなのか、夏休みに毎日通ったプールサイドに咲いていたからなのか。いつの時代からなのかはわからないが、ずいぶん昔から、私たちの心のなかに咲いている花。形はシンプルでありながら、「お花らしい」象徴的な形をしており、見ているとなんだか元気を分けてもらえるような、不思議な力を感じるのは私だけだろうか。そんなひまわりを、14年の歳月をかけて観賞用へと育て上げた会社がある。タキイ種苗株式会社。京都で170余年の歴史を持つ老舗の種苗メーカーである。

通常のひまわりは自分の背丈を越すほど成長し、顔の大きさほどの花をつける。また、花粉がたくさんついているので、観賞用に適した花とは言えなかった。それが現在では、花束としてプレゼントができるサイズになり、花瓶に飾っておいても部屋を汚す心配もない。

近いようで遠い存在であったひまわりを身近なものへと品種改良するためには、さまざまな苦労や困難があった。今回は、長年の歳月をかけてひまわりと向き合い、進化を実現させたストーリーを紹介したい。