journey+

リーダーとしての
マインドセットを学ぶ旅

静岡県浜松市都田町に本社を置く都田建設。地域に根ざし、町全体の活性を意識しながら、「1000年続く会社」を目指している。また一方で、社員ひとりひとりの個性と主体性を生かしつつ、顧客に対しての「おもてなし」を徹底的に追及する。
 2回目となるJourney+ツアーは、未来を見据えた組織のあり方、理念、経営スタイルなど、新たな時代にふさわしい「組織・人・働く」のマインドセットをテーマとした学びの旅となった。

 JR浜松駅から車でおよそ40分。都田町は、フルーツ栽培が盛んな緑豊かなエリアだ。その一画に、突如としてあらわれる洗練された町並み。カフェやレストラン、インテリアショップ、宿泊施設などが点在するこのエリアは『DLoFre’s Campas』と呼ばれ、地元の人はもちろん、遠方からも多くの人たちが訪れる人気スポットだ。
 これらをプロデュースするのは『DLoFre’s(ドロフィーズ)』。夢(Dream)、愛(Love)、自由(Freedom)、仲間('S)それぞれの頭文字数字からなる、株式会社都田建設の愛称である。

 代表取締役社長の蓬台浩明さんは、先代の社長から受け継いだこの土地で、地域とのより良い関係を築きつつ、1000年続く企業を目指し、さまざまなことにチャレンジしている。
 本業においては「1本の映画のような家づくり」をコンセプトに、単に家を建てるだけでなく、その先にある家族の暮らしや幸せにフォーカスした家づくりに取り組んでいる。技術面はもちろんのこと、顧客への「おもてなし」といったサービス面、社員たちのコミュニケーションスキルの高さなどにおいて、近年注目を集めている。

週に一度のバーベキュー

「社風力」こそが、組織においてもっとも大切だと考える蓬台社長。そのためには、何より社員ひとりひとりが“自分ごと”として、仕事を捉えることが求められる。さらには人間関係や、そこから生ずるコミュニケーションなど、組織だからこそ起こりうる問題にも、常に課題意識を持たなくてはならない。また一方で、クライアントとなるお客さんに対してのサービス向上にも務める必要がある。

「あるとき、私たちを選んでくださったお客さまたちに『なぜ都田建設を選んでくれたのか?』と聞いてみたんです。
すると『なんとなく...』という答えが多くて、はじめは驚きました。けれどもよく考えて見ると、それはすごいことなのかもしれないと思うようになったんです。なぜなら、普通は“なんとなく”という気持ちで、何千万もの買い物はしませんよね。けれども、我々を選んでくださった方たちは、“なんとなく”という理由で一生に一度の買い物をしてくださった。そこにこそ、自分たちの強みがあると感じたのです。そしてそれは、人や雰囲気、仕事への丁寧さなのだと確信しました。
ならば、もっとお客さまに喜んでいただくために、この強みをさらに生かすにはどうしたら良いのかと考えました。そこで行き着いた答えがバーベキューだったのです」

 都田建設では週に1度のランチタイムに、社員総出のバーベキューを行っている。準備から調理、食事、片付けまですべての工程を1時間で終らせるというルールだ。レシピ考案や買い出しも社員が当番制で担当する。

「当初は社風力向上のため、社員みんなのことを知ろうという意図でやっていましたが、だいたい80回目くらいで慢心の空気が漂ってきました。これはマズいと思い、外部の参加者の受け入れを始めたのです。
外部の方が加わることで、社員たちは気配りや気遣い、おもてなしを意識するようになりました。そして続けるうちに、その場の空気を感じ、自ずと考えられるようになってきたのです。考えて、動きながら、且つ周りを巻き込んで、その場をひとつのチームとして動かす。そういったことを、ひとりひとりが課題をもちながら進める。これはまさに組織づくりと同じだと思います」

 社長自らの発案ではじまった週に1度のバーベキューはすでに500回を超えるが、今もなお、それぞれが当事者意識を持ち続け、気付き合う時間を創造している。たった60分という時間のなかに、相手への配慮や嫌みのないフォローアップ、周りとの調和など、スムーズな仕事運びと円満な人間関係に欠かせないすべての要素が詰まっているのだ。

「これからもバーベキューのテーマはどんどん変わっていくでしょう。会社や社会といったそれぞれのテーマはもちろん、仕事を通じて、幸せとはなんだろうということを学んでいきたいと思います。
と同時に、社員が誇りをもって躍動する、ということも大切にしたいですね。馬鹿らしいことを真剣に、真面目にやることの大切さ。それらを大事にしながら、お客さんの前で躍動できる自分たちでありたいと考えています」

「ライフスタイルを通じ『人生観』を商品とする会社」

 蓬台社長が大切にしていること。それは、社員の笑顔ややる気がが涌き上るような風土をつくることである。
 あるとき、蓬台社長は、会社の成長よりも大事にしなければならないものがあることを気付いたそうだ。当然、会社であるから少しずつは成長させる必要はあるが、給与の価値以上に社会に貢献しなければならないことは、人としての徳を高めること。すなわち「人格を磨く」ということだ。同社へ入社すると、まずこの部分を鍛え上げられるという。

「私は、採用面接の際に必ず聞く質問があります。それは『人生でたったひとつしか学ぶことができないとすると、何を学び続けるか?』というものです。この質問の回答が、その人の人生観を表していると考えます。
大人の学び場は職場しかありません。働く上では当然、スキル、技術、知識は高める必要がありますが、それと同時に道徳的の部分をどれだけ真面目にやれるかだと思うんです。ですから人としてこういうことは大事にしなさい、ということは徹底的に教えています」

 現在、年間100軒の家を建てている都田建設だが、事業はそれだけではない。冒頭に紹介したドロフィーズキャンパス。現在は8000坪を超える敷地に、30以上ものショップやレストラン、庭や施設が点在している。2007年、これらは蓬台社長が描いた夢の構想のひとつであった。ところが、わずか6年後の2013年、それらが現実となったのだ。

「2007年、この都田という素晴らしい場所に、世界から人が集まるような『美とおもてなし』の街を作りたいという念いが強くなりました。地域との関係性を一番に考えながら、少しずつ土地に溶け込むような店づくりをリノベーションで作り続けてきました。そして2013年、近所の方が500坪を無料で貸してくれたことをきっかけに、次々と近隣の方たちが土地を貸してくれるようになり、やがて8000坪へと広がったのです。
この間、私たちがしてきたことは、社員全員が率先して挨拶すること、地域の皆さんに喜んでもらえることをするということでした。
つまり、自分たちができることで与え続けた結果、誰からも奪うことなく8000坪という土地を借りることができたのです」

 当然、すべてが順風満帆であったわけではない。蓬台社長は、うまくいかないときこそ、損得の関係ないことを丁寧に続け、懸命に努力しつつ社会と向合うべきだという。すると、気付いた時には、人力ではできないような大きな力がサポートしてくれるのだ。
そのためには、しっかりとビジョンを持ち、自分が何のためにしているのかということを、損得ではなく、善悪で判断し進んで行くことが大切だと。

「我々は、日本人としてのもっとも大事な部分を事業という形で見える化しています。日本人が忘れてしまっている心をしっかりと学び、実業のなかで社員の立ち振る舞いや挨拶、商品など『場』として表現されていくのです」

 蓬台社長曰く、「マネジメントとは、自分の天才と使命に気付いて、社会に役立つことを通じて人格を磨く」こと。
そして、“天才”は自分では気付くことはできず、誰かのために何かをする時に見えてくるものという。つまり、自分が誰かの役に立つことで、自らの使命に気付くことができるのである。
 今回の都田建設訪問における学びは、単なる組織論やコミュニケーション論として片付けることはできない。人として何をすべきか、どこを目指すのか、そして何に命を使うかといった、壮大なる問いと、熱いメッセージを受け取ったのではないだろうか。

撮影:小林忠広(セブンハンドレッドクラブ)
取材/文:富岡麻美(THINK AND DIALOGUE Co., Ltd )

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