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nojuku SDGsキャンプ in 鹿屋

野に出て学ぶSDGs

国内外各地の観光マーケティングを手掛けてきたプロデューサーの江藤誠晃が塾長を務める「nojuku」は社会課題の現場を旅して持続可能な地域創生を学ぶ私塾コミュニティ。

登録メンバーの条件はSDGs思考で観光産業と地方創生を学ぶ1990年代中盤以降に生まれたZ世代と呼ばれる大学生と社会人で、塾といっても学習塾的な受け身の学びの場ではなく、江戸時代半ばから幕末に向けて有能な人材を輩出した各地の私塾をモデルにした塾生たちの主体的・対話的な探究活動を重視するコミュニティです。
※ nojuku公式サイトはこちら

そんな「nojuku」のメインプログラムとしてスタートしたのが「野に出て学ぶSDGs」をスローガンに掲げるSDGsキャンプで、学びの舞台は提携する鹿児島県鹿屋市の廃校ホテル「ユクサおおすみ海の学校」です。全国各地から集まった11名が過疎地域の抱える各種社会課題の現場を訪問し、体験と議論を重ねた旅の概要を紹介します。

社会課題の連鎖とは

全国各地で顕在する少子化・高齢化・過疎化の三点セットは本格的な人口減少時代を迎えた日本にとって最大の社会課題といえるものです。一次産業を担ってきた高齢者が田畑を手放すことで耕作放棄地問題や鳥獣被害が深刻化したり、他所へ移住することで空き家問題が生まれたりなど負の連鎖が加速してしまいます。

そんな中、過疎化が進む鹿児島県鹿屋市の菅原地区で廃校をリノベーションして誕生した体験型宿泊施設「ユクサおおすみ海の学校」はユニークな存在として注目を集めていました。近年、小中学校の廃校は全国で加速度的に増えていますが、地方公共団体にとって貴重な財産である廃校の有効活用策として宿泊・体験施設化する事例は着実に増えています。このプロジェクトと準備段階から縁があった江藤がスタディ・ツーリズム分野におけるコラボレーションを模索してきた結果、今回のキャンプが生まれました。

ユクサは可能な限り学校の状態を残した施設運営を進めており、教室で講義を行うことも校庭にテントを張ってキャンプをすることも可能。目の前に錦江湾が広がり桜島も見える好立地で、夕食は地元食材を使った地産地消バーベキューだったり、食後に校庭で都会ではなかなか出来ないキャンプファイヤーをしたり、と非日常体験が盛りだくさんです。

  • トートバック

少子化で地元の子ども達の姿が一旦は消えた学校が廃校ホテルに生まれ変わることで、遠方から「新たな学び」を求める人達が訪問し、雇用を生み出し地場産業に刺激を与える…

社会課題は負の連鎖も早いが、適正な復活マーケティングを仕掛けることで正の連鎖も生まれることを実証している場がこの廃校ホテルです。
※ ユクサおおすみ海の学校 公式サイトはこちら

短期開拓民という発想

今回のSDGsキャンプはユクサおおすみ海の学校を核として進む「菅原地域まちづくり計画」とも連携して行われ、キャンプ参加メンバーが地域の方々から農業を学びながら耕作放棄地の蘇りを目指すプロジェクトに挑戦。耕作放棄地を再整備した畑にじゃがいもを植える活動を行いましたが、老若男女の笑い声が畑に響く和気あいあいとした時間を共有。農作業の合間にはタープを張って椅子を並べた即席農園レストランで餅を焼いたりホットジンジャーを飲んだりと、「にわか農民」体験ができました。

nojukuでは「コモンズの畑」とでもいうべきこの畑で、今後も各種農作物の植え付けと収穫体験を組み込んだキャンプを定期的に開催する計画を持っていますが、菅原地域を「第2のふるさと」のように感じて時々訪問する若者に「短期開拓民」というコンセプトネームを付けました。

地元の人々にとっては植え付けと収穫のタイミングだけ訪れるメンバーでも貴重な戦力となるはずで、繁忙期の助っ人として「里帰り」ならぬ「里行き」をする旅人の市場を育てる価値は充分にあります。

旅する先に故郷を見つける

都会育ちの若者が遠く離れた地方の社会課題現場を訪れて学ぶことは何でしょう?

少子高齢化や過疎化の実態をライブに知ることはもちろん大事ですが、実は「日々食しているものはどこから来ているのか?」という極めてシンプルで当たり前のことを再確認するだけでよいのかもしれません。そしてその気付きを共有できる仲間と出会う機会を準備してくれているのが廃校ホテルなのだと思います。

ユクサおおすみ海の学校の入り口には「鹿屋市立菅原学校・閉校記念碑」という石碑が建っていますが、SDGsキャンプを体験したメンバーには、何かが終わった「過去」ではなく、何かが始まる「未来」に向けた道標のように見えてくるはずです。

ひとつの役割を終えた学校が新たな役割を得て復活する…

そんな循環が生まれているのなら、ここは訪れる旅人全てにとって持続可能な「母校」なのです。
※ キャンプ参加者のレポートはこちら

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