NEWSANA

第10-69号
平成10年6月22日


「経営再建プラン」

  1. 基本方針

    中期経営計画(SPEED−21)の事業運営に係わる方針の下で事業利益からの安定的な配当を可 能とする収支構造に再構築するとともに財務体質を改善し、もって経営体力を強化する。

  2. 経営目標
    ・ 2000年度決算で復配する。
    ・ 抜本的な経営構造改革に取り組むことにより、真の競争力を持つ経営体質に再生する。
  3. 経営再建計画
    1. 事業計画

    1) 事業規模
    ・ 国内線: 伊丹空港の増枠(98年度)や羽田空港の新滑走路供用開始(2000年度)が予定されているが、収益性重視の路線休廃止や路線組み替えの積極的な実施などにより、期間中、フラットに推移するものと計画する。
    ・ 国際線: 日米航空交渉の合意に基づく米国線の増便・路線開設などにより、99年度まで約10%/年の伸びを示し、2000年度にはフラットに推移することを見込む。

    1998年度 1999年度 2000年度 平均伸率

    前年比
    前年比
    前年比

    座席キロ(百万キロ) 54,447 104.8% 54,165 99.5% 54,980 101.5% 101.9%
    旅客キロ(百万キロ) 34,509 102.6% 35,105 101.5% 35,753 101.8% 102.0%

    座席キロ(百万キロ) 30,626 107.2% 33,880 110.6% 33,786 99.7% 105.7%
    旅客キロ(百万キロ) 19,753 105.7% 22,103 111.9% 23,017 104.1% 107.2%
    国際比率(座キロベース) 36.0% 38.5% 38.1% ———

    2) 機材計画
    期間中の追加導入機数を当初予定の30機から21機に抑え、減機は18機を予定する。 2000年度末の保有機材数は134機(当初計画より11機減、対97年度比3機増)とする。
2. 経営改善のための重点施策

1) 収益力向上・増収策

(1)収益重視の路線再編
「自由化」・「国際化」をにらんだ収益本位の路線再編を推進する。
国内線: 自社枠転用による収益本意の増減便・休廃止と需給バランスを勘案した投入機材の見直しを行う。エアーニッポンとの路線分担も整理する。
国際線: 高需要路線の強化と競争力向上により収益性を高めるため、路線便数の再構築を行う。ユナイテッド航空およびルフトハンザ航空とのアライアンスを通じて競争力を向上させるとともに、日米航空交渉の合意に基づく新路線の開設を検討する。
(2)アライアンスの推進
コードシェアによりネットワークを拡充し乗り継ぎ利便を向上させるとともに、マイレージサービ スの提携を通じて顧客囲い込みを図る。双方キャリアの販売力を活用した増収と企業間での 施設・サービスの共有化によるコスト抑制を進める。

(3)商品競争力の強化と品質向上
「顧客満足」を実現するシームレスなサービス・商品の具体化と競争力強化を基本に顧客ニ ーズの変化に的確に対応した商品・サービスを創造する。また、定時性・利便性・快適性など 品質の向上を推進する。

(4)販売促進策の強化と抜本改革
国内・国際ネットワークの機能的な活用や顧客重視のマーケティングを強化するとともに市場 原理に適合する価格政策への見直し・充実を図る。
インターネットの活用など流通形態の拡充と販売チャンネルの強化を行う。
ANAマイレージクラブなどを活用したマーケティング体制・顧客販売体制の再構築を行い、 併せて自社流通体制を整備する。

2) コスト抑制策の推進

さらに徹底した予算編成と従来以上の予算・実績管理を行い一層の収支改善を推し進める。 賃借スペースの縮減による費用削減(含、本社部門の羽田空港地区への移転検討)を行う。

3) 財務体質の改善

(1)投融資の選別・圧縮
導入機数の圧縮、一般投資の選別・圧縮、ホテル事業における新規投資凍結などにより、期間中の総投資額を5,400億円程度に抑制(当初計画から約20%、1,300億円削減)する。

(2)資産の計画的処分
計画的な資産処分により内部資金確保と財務体質改善を行う。含み損処理は中期的視野から行う。

(3)有利子負債の抑制
投融資抑制による資金需要の低減や自己資金を確保し外部資金依存度を軽減するとともに、増収と計画的な資産売却による資金回収を推進し、2000年度末の残高を約9,300億円(当初計画の約91%)に抑制する。

4) 人事政策

(1)賃金・人事・福利厚生制度の改定
人件費圧縮に留まらず、コスト競争力を強化するため、中長期的観点から全般的・抜本的な改定 を実施する。賃金では「業績・成果」の比重を高める。また、専門性を高める人材育成を推進す る。
  1. 役員関連
    • 月例報酬の減額(社長・副社長:20%、専務・常務:15%、取締役・監査役:10%)
    • 賞与返上の継続
    • 役員定数の見直し(今期3名減、取締役:33名、監査役:4名)
    • 定年制・任期制の導入
  2. 人件費関連
    [1] 賃金制度の改定
    • 部長資格以上の管理職:
      55歳以降の定期昇給廃止(99年度〜)
      業績・成果の賞与への一層の反映(99年度〜)
    • 部長代理資格以下の管理職:
      資格滞留が一定期間越えの場合の「本給」の減額(99年度〜)
    • 全管理職
      低評価連続時の昇給見送り・減額(99年度〜)
    • 一般職:
      一時金への個人業績の反映など諸環境に適合した制度への見直し(時期別途)

    [2]退職金制度
     勤続年数に応じて自動的に加算される現行制度の見直し(99年度中)
    [3]諸手当
     旅費関連手当、昼食補助費、変則勤務手当などの見直し(〜2000年度)
    [4]その他
     全管理職の資格手当・付加給、運航乗務員管理職の職務手当の減額(98年度上期〜)
  3. 人事制度
    [1]早期退職者優遇制度
     対象年齢の拡大と乗務職・一般職への対象拡大(98年度下期〜、期間限定)
    [2]転身支援制度
     乗務職・一般職への対象拡大(98年度下期〜)
    [3]希望転籍制度
     管理職が希望により転籍することのできる制度の新設(98年度下期〜)
    [4]進路選択制度
     部長代理資格以下の管理職対象に55歳到達時の進路選択制度を導入(99年度〜)
  4. 福利厚生制度
    共済会への拠出金低減など制度の見直し

(2)要員計画
生産性向上の成果を加味しつつ、人員増加を抑制する。2000年度の人員数を当初予定の約 900人減とする。
・ 総合職: 99年度は凍結、2000年度以降は一定の採用を計画
・ 特定地上職: 各年度の採用を計画
・ 運航乗務員: 生産性向上の効果を取り入れながら、養成配置計画を実行
・ 客室乗務員: 事業遂行に必要な稼働確保を前提に、適正な要員採用を計画
3. 収支・利益計画

1997年度 2000年度 対1997比 平均伸率
営業収入(億円) 9,103 9,950 109% 103%
営業費用(億円) 9,096 9,690 106% 102%
営業利益(億円) 6 260 +254 ———

1)営業収入
「収益力向上と増収策」を積極的に推進し、2000年度には9,950億円の営業収入(対97年度比: 約9%増)を確保する。
・ 国内線旅客収入: 6,170億円
・ 国際線旅客収入: 2,210億円
・ 貨物郵便収入: 800億円
・ その他付帯事業収入: 770億円

2)営業費用
重点施策の推進と生産性向上やコスト抑制策の確実な遂行により、営業費用の伸びを営業収入の伸び以下に抑え、2000年度の営業費用を9,690億円に抑制する。

3)利益目標
2000年度決算での復配に向けて営業収支の大幅な改善を図り、2000年度で営業利益260億円と経常利益180億円を確保する。


4.グループ企業にかかわる経営課題

1)グループ収支の改善
企業会計制度の変更を視野に入れ、競争力強化の着実な実行により、グループ収支の抜本的改善を図る。
海外ホテル事業を段階的に縮小、国内ホテル事業はスリム化・効率化を進めるほか、期間中、ホテル関連の新規投資を凍結する。
その他の事業では、利益率向上を推進し、必要により再編・再構築を行うほか、再建見通しのない事業の場合には整理を行う。

2)グループ航空会社
競合他社では、既にローカル線の低コスト運航を担う航空会社を設立し、その運航を開始するなど競争時代への対応を急いでいる。
“グループとしての航空事業”と“グループ収支改善と競争力強化”の観点からエアーニッポンとの路線分担の整理を行うとともに、エアーニッポンの経営改善策の検討・実行を行う。
国内線・国際線事業の競争激化への備えとしてワールドエアーネットワーク(WAC)の今後の役割とその方向性について、事業再開を含めて具体的検討を進める。

  1. その他の経営課題

    1) 定期航空協会での取り組みを通じて、公租公課の低減化を推進する。
    2) 定期航空協会での取り組みを通じて、ターミナルビル賃料や施設使用料の低減化を推し進める。
以上