間欠泉が間近に控えるトラウトフィッシング
1872年に世界で初めて国立公園に指定されたアメリカのイエローストーン。ワイオミングを中心に、アイダホ、モンタナのアメリカ北西部3州にまたがるおよそ9万ヘクタールの土地には、北アメリカ大陸で最大といわれるダイナミックな火山帯の自然が広がる。周囲には5つのゲートが設置され、年間400万人ほどの観光客が国内外から訪れるが、そのうちの約5万人は釣り人だ。お目当てはカットスロート、レインボートラウト(ニジマス)、ブラウントラウトなどのマスの仲間である。
イエローストーン国立公園で釣りができるのは、毎年5月の最終土曜日から11月の最初の土曜日まで。釣りをするための許可証は公園内の事務所で購入できる。外国人であっても問題なく、3日間有効な許可証が18ドル、7日間のものが25ドル、シーズン券が40ドルと値段もリーズナブルである。この他に公園への入場料が必要となる(車の場合は1日15ドル)。釣り方はルアーまたはフライフィッシング。国立公園内の釣り場では、ダイナミックな間欠泉やバイソンやプレーリードッグなどの野生動物が間近に見られることも珍しくない。
釣り人のすぐ横で草を食むバイソンの群れ。プレーリードッグなどの小動物を含む67種の哺乳類も生息している
アメリカの国立公園では、訪れる人に釣りの機会を積極的に設けることが理念として確立している。守るべきレギュレーションがしっかりと定められ、ホームページなどでも分かりやすく明示されている一方で、川の状態や生息する魚類の生息状況を的確に把握するには、協力者としての釣り人が欠かせない存在であると位置づけられているからだ。なお、イエローストーン国立公園は北アメリカ大陸の分水嶺である中部ロッキー山脈の上に立つ。そのため、公園内はもちろん、公園の周辺にも多くの川が流れ、マス類が生息する。
国立公園周辺の町には釣り人のためのタックルショップが多く建ち並び、必要なタックル類や豊富なフライ(毛バリ)が常時販売されているほか、店でフィッシングガイドを頼むこともできる。慣れてくれば自分の足でポイントを捜し、好きな場所で釣ることもできる。
フライフィッシャーの聖地もすぐ近く
イエローストーン国立公園からほど近い有名河川の1つにアイダホ州のヘンリーズフォークがある。豊富な湧水を水源に持つ川で、水温が安定しているため流れには数多くの水生昆虫が生息している。それを飽食して育ったニジマスは、大型の目安とされる20インチ(50cm)を優に超え、釣り人はその魚をねらって、その時に羽化している水生昆虫に合わせた緻密な毛バリで釣りをする。フライフィッシング好きなら一度は行ってみたいと考える聖地のような釣り場だ。日本からも毎年多くのフライフィッシャーが訪れる。
ヘンリーズフォークの40インチオーバー・レインボートラウト。釣りには水生昆虫を模した繊細な毛バリを駆使する
広大なアメリカの大自然を流れる川は、景観や釣りも素晴らしいが、アメリカ各地はもとより世界中から繰り返し訪れるベテランも多い。そして、釣りに没頭する者同士が日中の川やタックルショップ、夜のパブやレストランで気軽に声を掛け合う光景もよく見られる。そんなトラウトフィッシングの良き時間を過ごせるのも大きな魅力だ。
川の上に広がるのは西部アメリカらしい一面のブルースカイ。地元のタックルショップはいつも釣り人で賑わっている
この旅のインフォメーション
行き先
- イエローストーン国立公園とその周辺
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イエローストーン国立公園へのルートは複数ある。日本からはロサンゼルスやシカゴなどを経由し、国内線で最寄りのボーズマンやジャクソンホール空港へ。そこからレンタカーを利用する。
気候(イエローストーン国立公園) | 平均最高/最低気温(℃):12/-3(5月)、17/1(6月)、23/4(7月)、22/3(8月)、16/-1(9月) 降水量(mm):62(5月)、54(6月)、31(7月)、28(8月)、42(9月) 気候がよく釣りもしやすいのは6~9月。夜はかなり冷えるため夏の間も重ね着をする。 |
通貨・公用語 | 通貨はUSドル。公用語は英語。道路は日本と反対の右側通行。 |
ビザ | 90日以下の観光目的での渡米にビザは必要ないが、日本を出発する前までに電子渡航認証システム(ESTA)による渡航認証が承認されている必要がある。 |
釣り場情報
対象魚 | カットスロート、レインボートラウト、ブラウントラウトなど。 |
シーズン | イエローストーン国立公園の釣りは5月の最終土曜日から11月の最初の土曜日まで。ただし秋はかなり冷え込むため、ベストシーズンは6月後半~9月頃になる。 |
ライセンス | 国立公園内の事務所で購入。公園外で釣りをする場合はそれぞれの州のライセンスをタックルショップで購入する。 |
タックル | ロッドは1人1本までで釣り方はルアーまたはフライフィッシングのみ。マジソン・リバー、ファイヤフォール・リバーなどフライフィッシングのみの川もある。 ルアー:ルアーはスプーン、スピナー、ミノーなどで鉛のオモリやジグヘッドを使用しないタイプのみ使用可。大きなもので20インチ(50cm)までに対応したトラウト用ルアータックルであれば幅広く使える。 フライ:8~9フィート#4~5クラスのシングルハンド・フライロッド。ラインはフローティングラインに9~12フィート4Xのリーダーシステム。フライはその時期の水生昆虫に合わせた各種フライが必要。#10~18のCDCダンやソラックスダン、#14~18のエルクヘア・カディスやCDCカディス、#12~18のヘアズイヤー・ニンフやフェザントテイル・ニンフなど。 |
ウエア | 川に立ち込むためチェストハイウエーダーを着用する。日中は日差しが強いので日焼け対策が必要。また朝晩は冷涼で天気が変わりやすく、サンダーストーム(雷を伴う夕立ち)もしばしば発生する。レインジャケットを含めた防寒対策も必要。雨雲が近づいてきたら速やかに川から上がり安全な場所に退避する。 |
- 釣り場情報は2018年6月現在のものです。