冬季五輪の地の渓流魚
2018年には平昌冬季オリンピックが開催され、日本でも広く知られるようになった韓国北東部の江原道(カンウォンド)。夏は雪岳山(ソラクサン)や五台山(オデサン)などの風光明媚な山々への観光登山の拠点となり、国内外から多くの人が訪れる景勝地だ。山が多い地域だが、東岸の江陵(カンヌン)や束草(ソッチョ)などには美しい海岸も広がる。ドラマ『冬のソナタ』で有名になったスキーリゾート・春川(チュンチョン)があるのもこの江原道だ。
この江原道での釣りが、日本の渓流釣りファンの間で徐々に知られるようになってきたのは今から10年ほど前。日本で非常に人気のある、ヤマメ(海に降って大きくなるものがサクラマス)の釣りが、お隣の韓国では人も少ない理想的な環境で楽しめるらしい。そんな情報が少しずつ聞こえてくるようになってきた。
ヤマメは現地でサンチョノと呼ばれる。日本のヤマメと同一種であり、ただし放流はわずかでほとんどが自然繁殖したものだ
韓国のヤマメは、朝鮮半島の東寄りを南北に走る分水嶺を境に、東側(日本海側・韓国名東海側)へ注ぐ川に生息している。西側(黄海側)に注ぐ川には、ヤマメではなくロシアやモンゴルの川でも釣れるレノック(コクチマス)がいて、韓国の渓流では数年前まで、分水嶺をまたいで複数の川を巡れば、この2種の釣りを楽しむことができた。ただ、レノックは残念ながら2013年から現在まで禁漁措置が実施されている。
懐かしい風景の中で釣り三昧。食の楽しみも大きい
この地のヤマメ釣りを体験した日本の釣り人は、「まるでひと昔前の川に来ているようだ」と口をそろえる。実は日本に比べて韓国では渓流釣りをする人の数がそれほど多くない。そのため、少しよいポイントを見つけられると、驚くほどの数のヤマメに出会うチャンスがあるのだ。長い区間を貸し切り状態で釣ることができ、そのあちこちで警戒心の強いはずのヤマメが素直に毛バリをくわえる……なんていう夢のような時間を過ごせることもある。
そんな釣りを、全くの異境という雰囲気の中ではなく、どこか懐かしい気持ちも湧きおこる山村景色の中で味わえるという点が、江原道のヤマメ釣りのユニークさとなっている。流れのようすも日本の渓流とよく似ていて、だからこそついつい腕試しも兼ねて夢中になる。
川で存分にサオを振り、お腹が空いたら地元の食堂へ。都市でも田舎でも韓国は基本的に外食店が充実している。そして田舎の小さな店でも、前菜として出されるキムチなどの小皿料理の数は驚くほど多く、あれよという間にテーブルがいっぱいになるようすには、ちょっとしたカルチャーショックを受けるほどだ。
ゆっくり前菜をつまんでいる間に作られるサムゲタン(参鶏湯)やスンドゥプチゲ(純豆腐チゲ)などの料理も、どこでもアツアツの出来立てが提供される。
ほどよく辛く発汗作用も抜群の韓国料理に舌鼓を打ち終わる頃には、また心ゆくまでサオを振りたくなっている。
この旅のインフォメーション
行き先
- 韓国・江原道
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日本からはソウル仁川空港に入り高速道路で移動。
東京-ソウル間は約2時間30分。ソウルから東岸の江陵までは車で2時間ほど。
気候(江陵) | 平均最高/最低気温(℃):22.1/12.5(5月)、24.4/16.8(6月)、27.4/20.9(7月)、28.2/21.4(8月)、24.3/16.1(9月) 降水量(mm):79(5月)、119(6月)、220(7月)、253(8月)、210(9月) ヤマメ釣りシーズンにあたる夏から秋は温暖冷涼。冬は寒く日本同様に春夏秋冬がある。 |
通貨・公用語 | 通貨はウォン(1ウォン≒0.1円)。公用語は韓国語。道路は日本と逆の右側通行。日本語は都市部のホテルやデパートなど一部で通じる。 |
ビザ | 90日以内の観光目的の滞在はビザ不要。 |
釣り場情報
対象魚 | ヤマメ(サンチョノ)。 |
シーズン | 4~10月。日本の渓流釣りシーズンと同じ。 |
ライセンス | ヤマメ釣りに特別なライセンスは必要ない。ただし国立公園内などに釣り禁止の区域もあるので現地の看板などに注意する。 |
タックル | 日本の渓流釣りに使えるトラウト用のルアータックル、フライタックルをそのまま使用可能。 ルアー:5~6フィートのトラウトロッド、4~5ポンドライン、シンキングミノー50mm。 フライ:#3~4の渓流フライロッド、#3~4フローティングライン、14~16フィート・5Xリーダー+6Xティペット。 |
ウエア | 釣り用キャップ、偏光グラス、長袖速乾シャツ、渓流用ウエーダー&ウエーディングシューズ。朝晩は涼しいので防寒のためにもレインウエアも携行する。 |
- 釣り場情報は2018年6月現在のものです。