今に息づく阿波釣法(あわちょうほう)の伝統
阿波踊りが全国に知られる徳島県。しかしもうひとつ、釣りファンの間でよく知られているものに「阿波釣法」があります。海と山の両方に恵まれ、地勢の変化に富む徳島県は、昔から釣りが盛んな土地柄。江戸時代には、藩主が磯で釣りをたしなんだという記録も残っており、特に太平洋に面した県南エリアでは、グレ(メジナ)、チヌ(クロダイ)、イシダイといった磯魚の釣りが今も人気です。阿波釣法というのは、その中でも、現在のグレ釣りの元になったといわれる釣り方を指します。
現在のグレ釣りは、潮の流れを読みながら寄せエサをまき、ねらった場所に魚を浮かせたら、繊細なウキ仕掛けを流し込んで釣る「フカセ釣り」という方法が主流になっています。そして、磯というダイナミックな釣り場において、釣り人同士が守るマナーを含め、現在につながるフカセ釣りの基本を確立していったのが徳島の釣り人たちといわれています。そのため、全国に広まる過程で「阿波釣法」とも称されるようになりました。なお、グレというのは西日本および釣り人の間での一般的な呼称で、標準和名はメジナになります。
空港からのアクセスもしやすい
徳島県南の釣り場へは、徳島空港から車でアクセスできます。海岸沿いの国道55号線を南下し、シーズン初期の釣り場となる伊島への渡船が出る椿泊までが約1時間15分。その先の牟岐(むぎ)までが約1時間40分、宍喰(ししくい)までが約2時間です。海水温がまだ高い10月は、最も北に位置し、瀬戸内海から出てくる潮流が影響していち早く水温が下がる伊島がおすすめ。10月でも30~40cmのグレが高確率で釣れます。11月に入ると南部の水温も徐々に低下し、県南全域で標準以上の大きさのグレが釣れるようになります。
グレ釣りの最盛期は冬。北西の季節風が背後の山から吹き下ろす頃が、通称「寒グレ」のベストシーズンになります。ただ、温暖な四国地方でも、この時期の寒さは厳しく、磯釣りの入門者であれば、グレ以外のさまざまな魚たちも狙える10~12月もおすすめです。釣り方は同じフカセ釣りで、水温が低下する年の瀬に近づくにつれグレも40cmオーバーの良型が期待できますが、そのほかに大型のイサキ、シマアジ、サンバソウ(イシダイの幼魚)、さらに回遊があれば、ハマチ(ブリの若魚)やツムブリなどの多彩な魚が釣れて楽しませてくれます。なお、磯釣りのために利用する渡船については、徳島県釣連盟のウェブサイトにある「渡船案内」が参考になります。
全国に知られるウミガメの名所やDMV体験
釣り場に恵まれた徳島県南ですが、この地域は観光で訪れても、新鮮な海の幸や地元に息づく自然や歴史を楽しめます。そのひとつが、磯釣りの渡船も出ている旧日和佐(ひわさ)町。穏やかな海辺の町には、四国八十八ヶ所霊場第二十三番の薬王寺が建ち、町から海に出ると、アカウミガメの産卵地として全国に知られ、日本の渚百選にもなっている大浜海岸が広がっています。なお、すぐ近くにはウミガメの生態を詳しく学べる「日和佐うみがめ博物館カレッタ」もあります(※)。
- 2024年3月31日までリニューアル工事のため一時閉館中
また、宍喰の周辺で体験できるのがDMVです。DMVは「デュアル・モード・ビークル」の略。マイクロバスをベースにした車体が、モードを切り替えることで、線路と道路の両方を走ることができるという、世界でもこのエリアで初めて本格運行がされている乗り物です。宍喰周辺の徳島県南エリアは、ちょうど鉄道モードとバスモードの両方を体験できる区間になっています。DMVは導入時から観光資源としても期待されており、海沿いの美しい景色も眺めることができます。
阿佐海岸鉄道株式会社 宍喰駅(DMV)
- 住所:徳島県海部郡海陽町久保字松本34-2
- TEL:0884-76-3700
- TELお問い合わせ(6:00~18:00)
- 駅窓口営業時間(8:30~17:30)
- ウェブサイト:阿佐海岸鉄道株式会社 宍喰駅(DMV)
グレ釣りはもちろん、観光で訪れても豊かな自然の中にユニークな魅力を発見できる。それが徳島県南エリアです。
- 記載の内容は2023年9月現在の情報です。釣り場のルールや状況は変更になる場合がありますので、事前にご確認のうえお出かけください。
協力:つり人社