ダムのない清流
安田川は高知県東部に位置する小河川だ。水源は標高1,228mの碑己山にあり、流程は約30km。そのうちアユがいるのは約24kmとほぼ流域のすべてで、黒潮洗う土佐湾から多くの天然アユがソ上する。上流の馬路村は総面積の97%が山林で、うち75%は国有林が占める。特に魚梁瀬地区の千本杉は樹齢200~300年の巨木であり、それが約9,000本もある。林業に加え、近年はゆずの産地としても全国的に有名だ。
日本有数の多雨地帯で、「ビワの実のよう」と言われる大粒の雨が降る。年間平均降水量は4,000mmを超えるが、特筆すべきは流域にダムがないこと。そのため安田川は水の引きが早く濁りにも強い。釣りができる機会は、高知県下のアユ河川のなかでは比較的多いといえる。
また生物相豊かな安田川の河口付近は小魚が多く、それらを追ってスズキなどの肉食魚も回遊する。海が荒れた時は岩礁帯でヒラスズキが有望で、周辺はルアーアングラーの姿が多くなる。
海のすぐ近くから掛かる食べ頃サイズ
馬路村内の安田川は当地で「アメゴ」と呼ばれるアマゴも多いが、安田川といえばなんといってもアユ釣りだ。すぐそこが海の河口周辺に始まり、馬路村内の相名の堰堤まで広範囲に天然アユがナワバリを張る。例年、天然アユが多いのは安田町と馬路村の境界辺りまで。河口から川と並行に県道が続いているので川にも入りやすい。川を横目に、釣り人の有無や流れの状況を確認できる。
アユは一般に早くソ上したものが上流部に行き、下流部は小型が多くなる傾向がある。
だが、安田川では必ずしもそうならない。下流部でも18cmクラスの食べごろサイズがよく掛かる。魚の密度やエサの採りやすさ、水温、さまざまな要因があると考えられるが、安田川は河口まで勾配があり、河口付近にもアユが好む大きめの石がゴロゴロとしている。それらの環境が相まって、海がもう目と鼻の先という瀬でもまずまずの型が釣れるのである。
注意点はボウズハゼが多いこと。アユが常食する藻類を食べ、ナワバリ意識も強い魚で、オトリアユが近くに来ると追い払おうとする。この魚が頻繁に掛かってしまうと、オトリが早く弱ってしまい釣りにくい。ボウズハゼを避けるには、大石周りをあえて避け、小石底になっている部分を重点的にねらうとよい。
土佐の美味、維新の里
安田川のアユは高知県友釣連盟が主催する「清流めぐり利き鮎会」でグランプリを2回、準グランプリを2回受賞している。安田川の天然アユは大きくても20cmほど。エメラルドグリーンの非常にきれいなボディーに精悍な顔つきで、はっきりとした黄色い追い星が光る。背ビレも美しく香り高いアユは、ワタに関しても良質なアカを食んでいるせいか、苦さより甘さが際立つ。グランプリも納得の味だ。
また、馬路村の名産である柚子を使ったポン酢や、土佐といえば外せないカツオやマグロといった黒潮の幸の味も絶品である。食の楽しみが大きいのも安田川の魅力だ。
周辺には幕末の志士が活躍した史跡も多い。安田川の隣を流れる奈半利川には竜馬とともに幕末に活躍した陸援隊の中岡慎太郎の生家がある。釣りを通して豊かな自然に触れるほか、こうした歴史に触れるのもまた一興だ。
この釣り場へのアクセス
高知龍馬空港からレンタカーで移動。海沿いのR55に沿って安田町までおよそ1時間。
釣り場情報
〈安田川/アユ〉
解禁期間 | 6/1~ |
遊漁料 | 3,000円 |
管轄漁協 | 安田川漁協(TEL:0887-38-6272) |
問合先 | 河田釣具店(安田町/釣具店。TEL:0887-38-6816) |
- 釣り場情報は2015年7月現在のものです。