[主な生息地]
北海道・浦河沖~静内沖
千葉県・南房総沖
神奈川県・真鶴沖
~静岡県・富戸沖
水深1000mでねらう深海釣りの究極ターゲット
東京スカイツリーに東京タワーを重ねても、まだ届かない千尋の海底に生息するのがベニアコウ。10kg以上に成長する大型のメヌケ類で、全身が一様に赤く、墨と称される黒い斑紋がある個体もいるが、その形や位置には決まりがない。ベニアコウは通称で、標準和名「オオサガ」と「サンコウメヌケ」の2種をまとめてそのように呼ぶ。現在は口腔内が白ければオオサガ、黒ければサンコウメヌケとされるが、後者は将来オオサガの異名同種として消滅する可能性がある。見事に釣りあげることができると、紺碧の海にまるで真紅の大輪が咲いたような光景を見ることができ、その鮮やかなコントラストに深海釣りファンは他では味わえない達成感と陶酔を感じる。
常識外の深場にいる相手だけに釣るのは簡単ではない。2kgのオモリが海底に届くまでに要する時間は15分。仕掛けを巻き上げる時はそれ以上の数十分を要する。一日船に乗っても、仕掛けを入れることができるのは平均4~5回。そして「1km先」から一本のラインが伝えてくる地形をイメージして仕掛けを操作し、目の覚めるようなアタリを待つ。アタリがあっても無事に釣りあげられるかは分からない。電動リールで巻き上げてくる途中、ハリ外れ、ライン切れ、サメなどによる奪い食いなどさまざまなリスクがあり、それらを潜り抜けて初めて手にすることが叶う。紺碧の海面に浮かぶ真紅の魚体は、深海魚の中でも間違いなく最高クラスの美しさ。何度も挑戦して釣れないことも覚悟の相手だが、冒頭の「クライマックスシーン」を一度経験してしまった者は、フィナーレの再現に想いを馳せ飽くなきチャレンジを続ける。
濃厚にしてとろけるような脂肪の甘さと、しっかりした身肉の食感が絶妙の味わいも唯一無二。握りずし、鍋物、煮付、漬物、空揚げ等々、すべて美味しい。市場では「メヌケ」「コウジンメヌケ」の名で高値取引される超高級魚であり、その味覚を存分に楽しめるのも釣り人の特権だ。
タックル情報 & おすすめフィールド情報
タックル情報
- 深海釣り
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500~700号と最大級のオモリを使用する大型電動タックル・ドウヅキ仕掛けでの釣りになる。ロッドは単にオモリ負荷をクリアするだけでは不充分。海底を「叩く」アクション、水深1000mからのアタリを確実に伝達する敏感な穂先、数十kgにも達する大きな負荷に負けない強度と粘り、口切れさせないしなやかさを求められる。これらの条件をクリアした「グラスチューブラー素材」の深海釣り専用ワンピースモデルが必須。リールは口の周りがもろいベニアコウを口切れさせずに巻上げるため、高性能のドラグを搭載した大型電動リールに高強度PEライン10号を1600m巻き込む。標準的な仕掛けは幹イト30~40号、ハリス24号、ハリはムツ25~28号。ハリ数は地域・船により10~20本と幅がある。オモリは船により鉛500~700号(350号×2)、もしくは鉄製2kgを使う。エサはスルメイカの大型短冊が基本。
おすすめのフィールド3選
1. 北海道・浦河~静内沖
競馬馬の産地として有名な浦河の沖は20数年前、連日の大釣りに沸いた一級釣り場。当時ほどの釣果は望めないが、現在も船中10~20尾を記録する日がある。水温の関係で中心となる水深は700~800mと若干浅め。関東同様に上潮(表層の潮流)が速い7~9月を除いた9ヵ月間が好期となる。
2. 千葉県・南房総沖
関東地方におけるベニアコウ遊漁発祥の地である乙浜港を筆頭に、南房総市や鴨川市に複数の釣り船が操業する。現在も関東周辺で釣り人が「魔性の紅色との対面が叶う」確率が最も高い釣り場といえる。釣期は申し合わせにより毎年11月1日~5月31日までの7ヵ月間に定められている。ポイントは航程1時間前後が中心。
3. 神奈川県・真鶴沖~静岡県・富戸沖
相模湾西岸~東伊豆沖で本格的にベニアコウの遊漁が行なわれるようになったのは十数年前。急峻な地形から、航程30~40分と釣り場が港から近く、霊峰富士を眺めながら水深1000mを探るロマンを味わえる。時に20~100kg近い深海巨魚アブラボウズも釣れる。釣期は上潮が早い7~9月を除いた9ヵ月間。
- このページの情報は2017年12月現在のものです。