食通もうならせた日本海の冬の味覚
日本海の冬の味覚といえば「越前がに」です。毎年11月に入ると漁が解禁になり、産地である福井県の漁港(越前漁港、三国港、敦賀港、小浜港など)は一斉に活気づきます。「越前がに」とは、オスのズワイガニのこと。この種はオスとメスでサイズが大きく違い、漁獲されている地域の多くでは、雌雄で別の呼び方がされています。
今回紹介するのはメスのカニです。こちらは福井では「セイコガニ」と呼ばれ、大きさはオスに比べて小さくなりますが、濃厚なミソ(卵巣・内子)と卵(外子)があり、オスにはない味わいを楽しめます。内子は甲羅の中にある卵巣内の未成熟な卵のこと、外子は腹に抱えられた粒状の卵のことですが、特に内子はセイコガニ最大の旨味の元といわれます。
セイコガニの漁ができるのは、例年11月6日~12月31日の2カ月間のみ。資源保護のためで、セイコガニは2月頃から産卵を始めるため、オスよりも先に禁漁になります。そして、このセイゴガニをこよなく愛したのが、『食の王様』などの著書があり、食通としても知られる文豪の開高健でした。
開高は福井で味わった、旬のセイコガニ(特にミソ)をたっぷりと使った丼を絶賛しました。その逸品は地元の老舗旅館「こばせ」のオリジナルで、今も「開高丼」として提供されています。現在はコース料理内や他の料理と合わせた注文のみですが、セイコガニの内子、外子、カニの身、すべてがたっぷりと盛られる贅沢な丼は圧巻。一度は味わいたいと全国から食通が訪れます。なお、開高丼は同店のオリジナルですが、「越前セイコガニ丼」は他の店舗でも提供があります。ただし、いずれも食べることができるのは、セイコガニの漁期に合わせた例年11月上旬~12月末までです。
ふるさとの宿こばせ
- 住所:福井県丹生郡越前町梅浦58-8
- TEL:0120-37-0018
- ウェブサイト:ふるさとの宿こばせ
ちなみに現地で越前がに・セイコガニを味わったら、立ち寄ると面白いのが越前町の「越前がにミュージアム」です。越前がにの生態が大画面で見られるシアター、越前がにの漁を出船から帰港まで体験できるリアルなシミュレーターなど、ユニークな学び体験が用意されていて、大人はもちろん、お子様も楽しめます。
越前がにミュージアム
- 住所:福井県丹生郡越前町厨71-324-1
- TEL:0778-37-2626
- 営業時間:9:00~17:00
- 休館日:火曜日 ※
- ウェブサイト:越前がにミュージアム
- 夏休み期間中は無休、11月~3月は第2・4火曜日休館
そして冬の福井で味わえるグルメは、越前がにだけではありません。越前かれい、若狭ふぐ、ハタハタ、ブリ、ヤリイカといった豊富な海の幸も、同じ時期に旬を迎えます。それらもじっくり味わうなら、日本海に沈む美しい夕日も眺められる、漁火温泉、三国温泉、波の華温泉などの越前海岸の温泉地に宿を取るとよいでしょう。
冬の福井で、ぜひ素敵な時間を見つけてください。
協力:つり人社
- 記載の内容は2023年8月現在の情報です。変更となる場合があるのでご注意ください。