忘れられない奥行きと風味
太平洋の大海原に浮かぶ伊豆七島の中でも、最南端に位置する八丈島は、昔から「鳥も通わぬ」と表現される遠隔の地でした。東京からおよそ300km。
三宅島よりもさらに南にあり、2つの島の間には「黒瀬川」と表現される黒潮の非常に速い流れが横たわります。黒潮は漂流・漂着の文化を島にもたらし、古くは明の船、さらに漁師の船、流人の船とすべてを受け入れてきました。米が年貢として納められていた時代、八丈島の特産は塩。急斜面が多く米が育てられない島では、代わりに貴重品であった塩が盛んに製造されました。
その貴重な塩をうまく活用し、編み出されたのがクサヤです。クサヤは魚醤に似た風味を持つ独特の発酵液(クサヤ液)に新鮮な魚を浸して作る干物。その臭いは強烈ですが、一度味わうと忘れられない奥行きと風味があります。江戸時代から珍味として知られてきましたが、クサヤ液は貴重な塩を節約するため、魚を浸けた海水を繰り返し使ったものが元になったともいわれています。
魚は伊豆諸島特産のトビウオやアオムロを使います。春に八丈島の沖合で獲れるトビウオ、通称ハルトビは特に珍重されます。風土を活かした製法で作られるクサヤは日本が誇る発酵食品の1つです。
八丈島には、今も流人たちが積み上げたという石垣が多く残されています。その味わいには、島が紡いできた深い歴史が秘められています。
食べるなら
八丈島の郷土料理専門店
梁山泊
住所 | 東京都八丈島八丈町三根1672 |
電話番号 | 04996-2-0631 |
八丈島産のクサヤを製造・販売。直売所と食堂もある
藍ヶ江水産
住所 | 東京都八丈島八丈町大賀郷2333 |
電話番号 | 04996-2-2745 |
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