イトウ保護に力を入れる南富良野町
“幻の魚”とも称される希少魚イトウ。いつか釣ってみたいと夢見つつ、実現のハードルは高いと考えている人が少なくないだろう。しかし、むしろ近年、イトウと釣り人の距離は、以前より身近なものになってきている。
現在、国内でイトウが天然分布するのは北海道のみ。その北海道では、開発の波にのみ込まれるように、生息域、個体数とも減少の一途をたどってきた。2000年前後、その流れを危惧する声が高まり、全道的に保護の機運が高まった。各地で有志グループによる保護をめざす活動が活発化し、減少傾向に歯止めが掛かり、回復に向かうフィールドも見られるようになってきた。南富良野町に位置するダム湖であるかなやま湖は、その先進的事例のひとつ。
漁業資源として認知されていないイトウの場合、法的な保護策を講じるのは難しい。そこで南富良野町は2009年、全国的にも珍しく画期的といえる、町条例による独自の『南富良野町イトウ保護管理条例』を施行。産卵期のイトウを保護し、産卵を促すための規則を設定した。こうした各種の取り組みにより、産卵床数から推定されるイトウの資源量は、右肩上がりの増加傾向が確認されている。
これらの動きは、釣り人を排除しようというものではなく、活用されてこそ関心を高め、維持していけるという、ワイズユースの考え方に基づく。これは、釣り人にとってうれしく、ありがたいこと。かなやま湖を訪れた際には、その趣旨を理解したうえで大切なイトウと向き合いたい。
チャンスは誰にでも
条例によって定められた、イトウの保護区・期間などは次のとおり。産卵期のイトウを保護するため、4月中旬~6月中旬、同町字落合の北落合橋から上流の空知川水系全域を『産卵保護区』に指定。全魚種の採捕自粛を要請している。
湖内は、JR金山湖橋梁の上流50mの地点から下流側の水域は『生息保護区』に指定され、全魚種周年採捕自粛。さらに、結氷初期の12月中旬~1月下旬、生息保護区を除くかなやま湖全域が、『越冬保護区』に指定される。夏場の湖内の釣りに関しては、生息保護区以外の制限は特になく、誰でも自由にイトウ釣りを楽しむことができる。
湖内のイトウの主なベイトはワカサギとウグイ。ルアー、フライとも、これらを意識した釣りが基本とされている。開幕は解氷直後の4月中旬。5月はイトウの産卵期で上流部へ遡上している個体が多いが、産卵に参加せず、湖内に残る個体もいる。シーズンは、越冬保護区の自粛の関係で12月上旬まで。なお、湖岸全域、ヒグマの目撃情報が多く、朝夕のマヅメ時など注意と対策が必要。
かなやま湖上流の空知川本流は、真夏でも水温が低い清冽な流れで、気持ちのよい渓流釣りが楽しめる。ダム湖と行き来するアメマスのほか、イトウの可能性もある。
2016年台風の影響
2016年8月、南富良野町は台風による記録的な豪雨に見舞われ、堤防決壊、市街地の冠水など、甚大な被害を受けた。空知川とかなやま湖のイトウへの影響も心配された。しかしながら、一時的な釣果の落ち込みやサイズの小型化が見られたものの、数年を経て、釣り人の間では「台風前に近い状況まで回復してきた」と語られている。
調査を担当している町職員によれば、近年、釣りによると思われる傷を負ったイトウが見られるという。資源への影響を最小限にするため、シングル&バーブレスフックの使用を検討していただきたい。
「イトウと暮らす町づくり」というスローガンを掲げ、イトウ保護に尽力してくれている南富良野町のかなやま湖。イトウファンならぜひ訪れてみたい。
この釣り場へのアクセス
新千歳空港からレンタカー利用。道央自動車道、道東自動車道経由。ダム湖上流側へはトマムIC、ダム湖下流側は占冠IC利用が便利。約2時間
釣り場情報
〈かなやま湖/アメマス、イトウ〉
シーズン | 4月中旬~12月上旬 |
問合先 | 南富良野町役場(https://www.town.minamifurano.hokkaido.jp/) |
- 釣り場情報は2020年9月現在のものです。