道東の夏海アメ
本州では、イワナといえば河川最上流部の深山に棲む渓流魚のイメージがある。ところが、北海道に生息するイワナ属のアメマスは、河川の最上流部はもとより、中下流部、さらには海にも生息する。それらを広範に往来する遡河回遊魚なのだ。
川にとどまらず海をめざすのは、海のほうがエサが豊富で短期間のうちに急成長を遂げられるから。ちなみにイワナはサケなどと違い、秋に川で産卵した後も死ぬことがなく、一生の中で降海と河川へのソ上を何度も繰り返すことができる。そして中には70cm、80cmという非常に大きなサイズまで育つものが現われる。そんな魚に出会える有望フィールドのひとつが、北海道の道東エリア、釧路西港から音別海岸にかけてのサーフ一帯だ。
このエリアでの大型アメマス(海にいるので〝海アメ〟と呼ばれる)の釣りの歴史は比較的新しい。北海道の海アメ釣りといえば、日本海側の島牧村・江ノ島海岸での釣りが有名だが、こちらの季節は冬。そのため海アメ釣り自体にも、長く冬場の釣りというイメージがあった。ただ、全体で見ると冬に降海するのは特殊なケースで、アメマスは本来、春に降海し、晩夏にソ上する性質を持つ。その基本に立ち返り、降海もしくはソ上のために海岸近くに集まってきたアメマスを夏に海でねらえることが判明したのが、今回紹介している道東太平洋側のサーフだった。今から10年ほど前に地元の釣り人が気づいて以来、〝道東の夏海アメ〟は北海道でも人気の釣りになっている。
釣り方はルアーフィッシングがメイン
場所によって多少の違いはあるものの、このエリアは遠浅のサーフが続く。波が落ちてもウネリが残ることが多く、シケ後は濁りが続くこともある。釣行時にはこの点に注意が必要だ。
当初は遠投がしやすいルアーフィッシングで釣られることが多かったが、その後、場所によっては岸からそれほど遠くない場所でもヒットすることが分かり、近年はフライフィッシングでねらう人も増えている。フライフィッシングの場合、岸近くにあるカケアガリ(海底が傾斜しているところ)が好ポイントになる。釧路西港周辺や音別エリアは特にフライフィッシャーの姿が多い。
海アメ釣りのシーズンはサケの稚魚が海に降る5月頃からだが、例年安定して釣果が聞かれるようになるのは6月に入ってから。以降、カラフトマスやシロザケの姿が見え始める8月下旬まで楽しめる。アメマスのソ上が始まるお盆前後は、特に大型魚の釣果がよく聞かれる。
海サクラも人気上昇中
また、最近では海アメにくわえて、海サクラ(サクラマス)の釣りも盛り上がりを見せている。海アメが釣れ始めた当初から、「サクラマスもいる」という話はあったが、ここ数年で実際の釣果も上昇している。海サクラは北海道でも人気の魚だけに、こちらに的を絞って通うアングラーも少なくない。
海アメにしろ海サクラにしろ、希少な天然魚である大型のマス族に出会えた時は魚体をていねいに扱うことを心掛けたい。というのも、高温の夏のサーフでは、無造作に岸にずり上げてしまえばたちまち魚は弱ってしまうからだ。水から完全に出してしまう前にリリースできるのが理想である。なお、このエリアのサーフは夏でも霧に包まれることが多い。そんな時は7~8月でも防寒対策が必要。充分に保温できるウエアを着たうえで釣りを楽しみたい。
この釣り場へのアクセス
釧路空港からレンタカーを利用。海岸線まで約10分。旧音別町方面は約40分、釧路港方面は約30分。
釣り場情報
シーズン | 5~8月 |
問合先 | ランカーズクシロ(釧路市/釣具店。TEL:0154-55-2288) |
- 釣り場情報は2017年6月現在のものです。