然別湖だけで出会える魚
固有種とは、限られた地域にのみ生息する生物学上の種のこと。その貴重なひとつであるサケ科魚類が、北海道十勝の山あいの湖、鹿追町と上士幌町にまたがる然別湖に棲む。一般的に、希少な固有種は保護対象となり、採捕が禁止される例が少なくない。しかしここでは、釣り人による釣果情報を資源管理上の貴重なデータと位置づけ、厳格なレギュレーションのもと、保護と利用の両立をめざす試みが続く。そのおかげで、美麗なるミヤベイワナに、今も誰もが出会うことができる。
然別湖は、1万数1000年前の火山活動により出現した湖。その際、周囲約14km、最大水深約100m、水面標高810mの湖にオショロコマが陸封された。そこで独自の進化を遂げて固有亜種になり、1938年、ミヤベイワナと命名された。プランクトンなどを主食とする生態から、エラの内側にある鰓把数が多いのが主な特徴。小渓流のオショロコマは20cm前後が多いのに対し、ミヤベイワナは25~30cmを中心に、大型のものは40~50cmに成長する。
容姿は渓流のオショロコマとは趣を異にし、淡めの魚体に鮮やかな朱点をちりばめる。初めて目にすれば、きっと誰もがその美しさに目を奪われる。背部の色味も独特で、グリーン、ブルー、ブラウンの3タイプがいるとされる。
ミヤベイワナのほか、移入種であるサクラマス、ニジマス、ワカサギ、ウグイなども生息する。ニジマスは昭和の一時期に放されて以降、追加の放流は行なわれていない。自然産卵によるワイルドな魚体がロッドを絞り、これを楽しみに訪れる人も多い。
グレートフィッシング然別湖
然別湖の遊漁事業は現在、漁業権をもつ鹿追町から依託を受け、『NPO法人北海道ツーリズム協会』が担う。2005年から続くこのスタイルは『グレートフィッシング然別湖』と称され、道内外の釣り人に親しまれている。
釣りによるプレッシャーと環境への負荷が考慮され、解禁期間と人数が制限されている。近年の解禁期間は春と秋、ファーストとセカンドの2ステージ(期間)が設けられ、全50日間、各日とも1日50人となっている。釣法はルアー、フライ、テンカラで、エサ釣りは禁止。フックはシングル&バーブレスフックのみ使用可。ミヤベイワナはすべてキャッチ&リリース。
釣果情報は資源管理のための貴重なデータになる。このため釣り人は調査員としての役割を担い、釣果の報告が求められている。将来にわたって遊漁事業を継続していけるよう、希少種に接する釣り人の義務として、ていねいに協力していきたい。
この釣り場へのアクセス
帯広空港からレンタカーを利用。幸福ICから帯広広尾自動車道に入り、芽室IC下車。道道54、道道133、R274、道道85経由で然別湖畔へ。約90km。所要時間約1時間40分。
釣り場情報
〈然別湖特別解禁遊漁規則(2018)〉
遊漁期間・遊漁時間 | ファーストステージ:6月1日~7月2日(6:00~15:00) セカンドステージ:9月15日~10月2日(7:00~15:00) |
遊漁者数 | 1日50人 |
遊漁料 | 1人1日/4110円 ※ファミリー割引あり。両親いずれかが同行する場合、小中学生は無料 |
釣法の制限 | ルアー&フライフィッシング、テンカラのみ。エサ釣り禁止 |
釣り具の制限 | シングルバーブレスフック1本のみ使用可。ただし、ミノーに限り、フック2本の使用を試験的に許可。サオは1人1本のみ使用可。予備の持ち込みは制限なし |
キャッチ&リリース | ミヤベイワナはすべてリリース。ニジマスとサクラマスは1人合計10尾まで持ち帰り可。ただし、道内水面漁業調整規則により、6月はサクラマスを採捕することはできない。釣れた場合、すみやかにリリースすること。そのほかの魚種は持ち帰り制限なし |
ボートについて | 持ち込みボートは手漕ぎのみ可。アンカーの使用は禁止。ライフジャケット必着。転倒防止のためボート上での立ち釣り禁止。レンタルボート2000円(2人用)、レンタルライフジャケット500円 |
フロートチューブについて | 指定区域内のみ使用可 |
申込方法 | 予約はインターネット(http://www.shikaribetsu.com/)、または電話で |
問合先 | グレートフィッシング然別湖事務局(TEL:080-5599-9591) |
- 釣り場情報は2018年9月現在のものです。