幅200mの水道「今切口」が多様性を演出
静岡県の浜松市と湖西市にまたがる浜名湖は自然豊かな汽水湖。「汽水」とは海の塩水と川の淡水が混じったもののことだ。元々は淡水湖だったが、500年ほど昔に繰り返し起きた地震と津波によって一部が決壊し、現在の汽水湖になったとされる。決壊した場所は今切口と呼ばれ、現在も遠州灘から海水を湖内に送り込む水道になっている。
浜名湖は本湖を中心に、猪鼻湖、細江湖、庄内湖で構成され、面積は国内10位を誇る規模ながら、その大部分は船の行き来もままならないほど浅い。そこで湖内には浚渫による航路が多数巡らされており、湖内に生きる魚の多くは、この深みに沿って回遊している。浅い湖は溶け込んでいる酸素が多く、多種多様な生物が逞しく生きている。秋の釣り物としては、ファミリー向けのハゼやアジはもちろん、マニアが好むクロダイやキビレ、スズキなどが人気。一帯はウナギの養殖が盛んで食事処も多く、釣りの後は蒲焼に舌鼓を打つのもいい。
南北で異なる景色と対象魚
浜名湖は南北に長く、今切口から遠い北部は当然ながら塩分濃度も薄い。北部は奥浜名湖と呼ばれ懐かしい里山の風景が残る。湖岸に山が迫り、釣り場としてのロケーションは最高だ。ハゼやテナガエビといった小もの釣りがよく、秋の行楽シーズンを迎えると、ノベザオやリールザオでハゼを釣る家族連れで大いに賑わう。冬にはサヨリも群れで姿を見せ、これもまたファミリー層に人気だ。
そして、ここ数年で人気が上昇してきたのがキビレのルアー釣り。太陽が沈む時間帯に胸元まで胴長靴をはいて湖に立ち込み、日暮れとともにエサを求めて回遊してくるキビレを待ち伏せる。キビレがルアーに食いつき、静寂が破られる瞬間は、釣り人なら誰もが興奮する。最盛期は夏だが、晩秋までスリリングなやり取りを味わうことができる。
これに対して、塩分濃度が比較的高い南部を表浜名湖と呼ぶ。魚種は実に多彩で、小ものならアジやシロギス、カワハギにメバルが定番だ。特にシロギスはこれからの時期、越冬を控えて盛んにエサを口にするので、投げ釣りでねらうと丸々と太った良型が顔を出す。秋は大もののスズキやクロダイも活発で、表浜名湖の至る場所で良型が釣れる。さらに、餌木という漁具から発展したルアーを使ったアオリイカやコウイカ、マダコねらいも旬を迎える。
ファミリーで楽しみたい人は今切口に近い新居海釣公園に出かけるといい。敷地内に釣った魚を調理してくれる食堂もあり、子どもたちとの思い出作りにもってこいだ。
近年、表浜名湖で密かに人気を集めているのが夜の小アジ釣り。短めのノベザオに小さな電気ウキをセットして、1尾ずつ丁寧に釣っていく。遠い昔に田舎で楽しんだフナ釣りのような、そんな趣のある釣りだ。
天女伝説の残る弁天島
表浜名湖に浮かぶ6つの島を弁天島と呼ぶ。白砂青松が広がる景観の美しさに誘われて天女が舞い降りたという伝説が残る島だ。現在はリゾート地として開発され、釣りはもちろん海水浴や潮干狩りなど、シーズンごとに多くの人が訪れる。サオをだすなら弁天島海浜公園がおすすめ。秋なら夜釣りが気持ちよい。電気ウキ仕掛けを流せばセイゴ(スズキの若魚)やクロダイが釣れる。すぐ裏手に観光ホテルが並ぶので、宿泊がてら釣りを楽しむというのも一興。温泉地として栄えており、外湯もあるので車中泊プランも面白い。コンビニやレストランなどの周辺施設もある。弁天島から眺める夕日は絶景の一言だ。
この釣り場へのアクセス
中部国際空港から名古屋鉄道で名古屋駅まで移動し、東海道新幹線で浜松駅へ。浜松駅から東海道線に乗り換えて名古屋方面へ戻ると3駅目に弁天島駅。降りれば目の前が弁天島海浜公園。奥浜名湖への釣行も視野に入れるならレンタカーの利用が便利。
釣り場情報
〈奥浜名湖・表浜名湖/クロダイ・スズキ・キビレ〉
〈奥浜名湖/ハゼ・テナガエビ〉
〈表浜名湖/アジ・シロギス・カワハギ・メバル・アオリイカ・コウイカ・マダコ〉
解禁期間 | 通年。ただし冬は北西風の吹く日が多く、東岸は釣りができる場所が限られる。 |
問合先 | イシグロ浜松高林店(浜名湖全域の釣り。http://www.ishiguro-gr.com/fishing/)、 あけぼの釣具店(表浜名湖の釣り。http://akebono.hamazo.tv/)、 植むら釣具店(細江湖の釣り。http://ueturi.web.fc2.com/)、 イシグロ豊橋向山店(猪鼻湖、奥浜名湖の釣り。http://www.ishiguro-gr.com/fishing/) |
- 釣り場情報は2015年10月現在のものです。