「北海道・阿寒湖」釣り旅の記録
“ボイルに釘づけ!”
阿寒湖を代表するトラウトは、アメマスとニジマスの2種。今となっては我が国で大変貴重になった完全ネイティブ(在来種)のアメマスは、金粉を散りばめたように輝いているのが阿寒湖ならでは。
野生のニジマスは秋が深まるにつれコンディションがよくなり、シルバーメタリックの魚体にレッドバンドがひときわ映える。
どちらも、80cmアップのワールドクラスが潜んでいる。
阿寒湖は北岸の禁漁区以外、どこでも釣りができる。とはいえ、限られた日程では陸続きのポイントを釣るより、渡船やボートフィッシングの方がトラウトに出会えるチャンスは増す。
そんなサービスが充実しているのも阿寒湖がゲームフィッシングのメッカたるゆえん。
まずは手始めにボートフィッシングにチャレンジ。
ガイドをお願いしたのは、フライフィッシングのエキスパートで、毎年のように80cmクラスをキャッチしている阿寒湖漁協理事の桶屋潤一さん。
秋の阿寒湖では、ワカサギ漁が盛んに行なわれている。
その際、漁網から抜けたり、こぼれたりして衰弱したワカサギが釣果のカギを握っている。
特に水面を漂う瀕死のワカサギは、トラウトにとって食べやすい絶好のエサ。
それを模したルアーとフライが阿寒湖のヒットパターンのひとつになっていて、フライは「ドライワカサギ」などと呼ばれる。
また、水面に浮くワカサギが捕食されるようすを「ボイル」と言う。
有村さんは中禅寺湖で親しんだフライ、伊東はルアーで挑む。
これまでの豊富な経験をもとに、桶屋さんはボイルを捜しながらボートを操船する。
と、チャンスは突然、訪れた。ボートのやや沖めで、水面が沸騰するようなボイルを発見。
その荒々しい捕食シーンに目が釘づけになる。少し観察しているとボイルは2度、3度と起きる。
しかも、グッドサイズに違いない。
「あのボイルは釣れそうです。やってみてください」と桶屋さん。
激しいボイルを間近にし、2人は興奮気味にキャストを始める。
ドライワカサギパターンの場合、ルアー&フライが着水したら余計なアクションを加えず、湖流にまかせて自然に漂わせるのが基本。
あたかも瀕死のワカサギが、ぷかぷかと流れるように……。
ふと、有村さんの操るフライの周りが渦巻いたと思ったら「ガボッ」と水しぶきが上がってフライが消えた。「でた!」。
誰からともなく声が上がった直後、一瞬ロッドに緊張が走る。
が、惜しくもバラシ。確かに魚がフライをくわえた感触はあったが、掛かりが浅かったようだ。
その後も何度かボイルは見られたものの、ドライワカサギパターンを見慣れた阿寒湖のトラウトはなかなか手強い。
そうして、いつしかボイルは止み、今度は水面下を探る。
しかし、アタリがないまま正午を迎え、いったん湖畔に戻ることにした。
- このコンテンツは、2016年1月の情報をもとに作成しております。