「北海道・阿寒湖」釣り旅の記録
“小春日和、ドラマの予感……”
2日目は、午前8時過ぎからスタート。
昨晩から今朝にかけて雪が降ったらしく、路面にうっすらと積もっている。
山々の雪化粧も少し濃くなった。
未明はけっこうしばれたはずだが、今朝は昨日と打って変わって空は晴れ渡り、晩秋としては珍しいぽかぽか陽気。
まさに小春日和。
数分のクルージングの途中、毛嵐が見られたのも、今日の釣りの吉兆を予感させた。
毛嵐が現われた日中は晴天に恵まれることが多いからだ。
気温の低い時期は釣り人の集中力が持続するよう、天気が良いのに越したことはない。
前日とは風向きも異なり、北西の風が吹く予報。
そこで桶屋さんは、阿寒湖最大の島、大島に舵を向ける。
「この風向きなら、大島の裏に魚が回遊してくるはず」。
風を遮ってくれる島の裏はワンドを形成し、岸近くから急深になっている。
回遊してきた魚は手前でヒットすることがほとんどで、遠投する必要はない。ウエーディングもひざ下で充分だ。
昨日の状況からルアーに追いが悪いと判断し、今日は2人ともフライロッドを握っている。
有村さんはドライワカサギ、伊東はインジケーターフィッシング。
ワンドの左端からはビュービューと北西風が吹き抜け、沖に向かって明瞭な潮目ができている。
その潮目に乗って入ってきた魚が、ワンドの中に入って来てくれるといいのだが……。
そう願いながらキャストを繰り返していると、すぐ目の前でボイルが起きた。
「よし、魚が入ってきた!」。
そう桶屋さんが言ってまもなく、伊東のロッドが心地よく曲がる。
姿を現わしたのは、小さいながらもピンと尖ったヒレが印象的なニジマス。
「インジケーターがスーッと吸い込まれていったので合わせた」と伊東は頬を緩めた。
その一尾から40分後の9時10分、またも伊東がヒット。
しかも、良型であることはロッドのしなり具合から明らかだ。ラインを手繰り寄せてくると、大きな玉虫色の尾ビレが水面を叩いた。
アメマスだ! 伊東が焦ることなく岸に寄せたのは、黄金色の魚体に明確な白い斑点を散りばめた阿寒湖らしい一尾。
サイズは優に50cmを超え、風格さえ感じられる。「とても奇麗ですね、素晴らしい」。
有史以来、阿寒湖で脈々と受け継がれてきた野生のアメマスの末裔に触れ、伊東は満面の笑みを浮かべた。
その後もわずかながらチャンスがあり、ドライワカサギでもヒットしたが、残念ながら有村さんのロッドが曲がることはなかった。
それでも、「美しい景色と魚が見られ、とても満足しました。次は冬、ワカサギ釣りで来たいですね」と阿寒湖を堪能したようだった。
- このコンテンツは、2016年1月の情報をもとに作成しております。