
「北海道・渚滑川」釣り旅の記録
“厚い流れを割って飛び出すニジマス”

今回、渚滑川を訪れたのは、フライフィッシングの名手として雑誌やテレビなどのメディアでも活躍する里見栄正さん。
北海道の釣り場には毎年のように足を伸ばしており、渚滑川もこれまでに二度ほど訪れたことがあるが、夏のこの時期は初めて。
まずは滝上町にある通称「釣り小屋」を目指した。

釣り小屋は、「渚滑川とトラウトを守る会」の会長で、自身、渚滑川の釣りの魅力に取りつかれて滝上町に引っ越してしまった扇谷勝さんの自宅なのだが、現在は会の事務所も兼ねている。
この日は、同会の理事を務める佐藤雄次さんとともに里見さんを迎えてくれ、到着初日からさっそく一緒に釣りを楽しむことになった。
扇谷さんも佐藤さんも、熱心なフライフィッシャーだ。

滝上町内の滝上橋から渚滑川へ下りる。
岩盤帯をえぐるように流れる川は、橋の下で深い淵になっていた。
佐藤さんがその大きな淵で、ぜひ試してほしいとすすめてくれたのは、羽根の先までの全長なら5cmはある大きなサイズのフライだ。
初夏の北海道なら至るところで目にすることができるエゾハルゼミは、滝上町周辺なら早いもので5月の末頃から鳴き出す。
そのまま6月の半ばまで羽化があり、生まれてから10日ほどで短い命を終えるのだが、それらの一部は川に落ち、これが短い夏を生きる北海道のニジマスたちにとって、栄養豊富で最大級ともいえるご馳走になっているのだ。

周囲の岩に音が吸い込まれ、静けささえ感じられる中、里見さんが結んだセミフライがゆっくり川面を流れていく。
すると間もなく、辺りの静寂を破るように、もんどりを打ってニジマスがフライに飛び出した。驚く間もなく、今度は里見さんのロッドが大きく弧を描く。
これぞ北海道の洗礼。この一尾であっという間に釣り心に火が付いた里見さん。その後は浅い瀬が続く区間ではウエットフライに切り替えたり、ライズが確認できたプールでは少しサイズを落としたドライフライに替えたりしながら、渚滑川到着初日の釣りを存分に楽しんだ。


- このコンテンツは、2014年7月の情報をもとに作成しております。