「鹿児島県・錦江湾」釣り旅の記録
“伝統漁具×最先端の釣法、そして海の幸“
錦江湾奥の霧島市隼人町周辺には天降川や別府川といった河川の流入があり、
桜島周辺は起伏に富んだ地形に加えて200mを超える水深が控え、多様な魚を呼び込んでいる。
釣りのターゲットはクロダイ、スズキ、アジ、タチウオ、カンパチ、ブリ、オオモンハタ、そしてマダイにアオリイカ。
松岡さんは、「懐の深い湾の奥なので台風がきても子イカが死滅しにくいところが個体数の多さにつながっている」と分析している。
初日はアオリイカをねらった。釣法はティップランと呼ばれる最新のスタイル。繊細な穂先のサオを使い、15~40mの水深に定位したアオリイカへコンタクトする。
釣り場に着くと、松岡さんから「餌木(えぎ)を着底させたらサオを数回シャクりながらイトを巻き取り、餌木を海底から少し浮かせてください。その後はイトを張ったまま船体の流れに任せて餌木を水平移動させるイメージでアタリを待ってくださいね」とアドバイスがあった。
しかし、なかなかアタリがない。厳しい出だしだ。船長も「う〜ん」とうなった。そして厳しさの理由をこう教えてくれた。
ティップランは、「風が吹いて船を流してくれることではじめて餌木の水平移動が連続し、それが誘いになる」のだ。つまり、船体を流してくれるだけの風が頼り。
風はそよとも吹かず、肌でも感じられないほどだった。
船長と松岡さんが会話を進め、「エギングに切り替えます」という判断になった。エギングだと釣り場は深くて10m前後。今度は浅い場所にアオリイカがまだ残っているかがみんなの気がかりとなった。
釣り場を見渡す船長の眼差しには真剣さが増していた。松岡さんからは「エギングはティップランとアプローチが異なりますからね。餌木を着底させ、海底に着いたらシャクリ上げるところまでは同じですが、その後はイトを緩めて餌木を潜行させてください。餌木が再び沈んでいくときにヒットしますから」と解説。
エギングに切り替えて間もなく、お手本を示すように松岡さんが掛けた。「キビキビと動かしたあとにピタッと止めて、餌木が沈み始めたと思ったらすぐに抱いてきました」とメリハリのある誘いが有効との感触が伝えられた。
松岡さんに続いたのは阪本さんだ。餌木を遠くまで飛ばせるようにしっかりと投げ、餌木が着水したら余分なイトを回収して、最初からイトを張った状態でアプローチした。イトを張っておくとアタリがわかりやすくなる。阪本さんの1パイは、サオ先まで引っ張っていくほど鮮明な反応で掛かってきた。
そんなふたりの釣れぐあいから、船長は「浅場にはそこまで多く残ってないけれど、残っているのはとてもやる気があるので期待できる」と釣り場とイカの状態を読んだ。
夕方に差しかかる頃、沈黙を続けてきた伊東のサオに変化が現われた。流れに変化のあるスポットが目に止まり、そこに餌木を投入。基本どおりに着底。餌木が流れを受けているのを感じ取って、柔らかくシャクった。それに反応が出た。
海中の相手は、雨に濡れた伊東の手元がサオのグリップから滑りそうになるほどの勢いでアタックしてきた。
キャッチも決まって破顔一笑。人生初アオリをその手に収めた。
こうして全員安打が決まると、次は釣りたての味が気になるところ。
港から10分ほどの海鮮料理店「魚処うえやま」は、釣果を持ち込めば、それも調理して提供してくれる。
釣りたてのアオリイカのほか、鹿児島の味覚に舌鼓を打った3人は、一日を振り返りつつ明日のマダイ釣りに期待を寄せた。明日は復路便に乗って帰途にも着くが、時間が許す午前中はめいっぱい鹿児島の海を満喫する、と盛り上がっていた。
〈魚処うえやま〉
http://uodokoro.wixsite.com/ueyama
- このコンテンツは、2017年11月の情報をもとに作成しております。