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【高知県・仁淀川の釣り旅】三段引きの若アユがサオを絞る

「高知・仁淀川」釣り旅の記録

SCENE 01
坂本龍馬と志士たちの足跡
SCENE 02
ゆたかな川文化、土佐の和紙と地酒
SCENE 03
三段引きの若アユがサオを絞る
SCENE 04
究極の仁淀ブルー安居川の釣り
SCENE 05
カツオのたたきと海山の珍味
SCENE 06
そしてまた、仁淀川に立つ

“三段引きの若アユがサオを絞る”

翌日は、午前4時起床。
仁淀川のアユ釣り解禁日である。高知市内の宿から釣り場まで車で約30分。中流・柳瀬橋のたもとで高知の全国区アユ釣り名手・内山顕一さんと落ち合った。内山さんは、高知県友釣連盟の代表理事であり、日本一おいしいアユ河川を決定するイベント「清流めぐり利き鮎会」の主催代表でもある。

名手・内山顕一さん
仁淀川でのアユ釣りは十数年ぶり。今回は、子どものころからこの川に親しんできた名手・内山顕一さんという強い味方を得て、いざ出陣!
橋から見下ろした仁淀川

橋から仁淀川を見下ろすと、瀬の左右にサオの列。
といっても、関東の解禁日や休日ほどの混雑はない。釣り人たちはサオ1本分以上の間隔を保ち、整然と釣っている。見る間に、サオが曲がり、アユがタモに納まる。

「今年は天然ソ上にも恵まれ、アユはいっぱいいます。ただし、いまはちょっと渇水ですね。少し下流へ移動しましょうか」
内山さんに案内されたのは、柳瀬橋から約500m下った“能津”というポイント。
仕掛けをセットし、8本継の友釣り用の長ザオを1本ずつ丁寧にのばしてゆく。去年の秋の終わりに納竿して半年ぶりのアユ釣りである。
解禁日はいつも、子どものように心がはやる。

フレッシュマート キシモト
柳瀬橋へ行く途中の川沿いにある「フレッシュマート キシモト」ではオトリ・遊漁証を販売。
店前には氷も常備。店の裏手でオトリを購入して主人と話していると、「先日、こんなモノが獲れました」と置きバリで釣れた天然のスッポンを見せてくれた。小座布団のような大きさにびっくり。
これもまた、仁淀川の自然の豊かさを表す証のひとつだ(TEL:088-850-5014)
仁淀川 柳瀬橋の下流
解禁日の朝。柳瀬橋の下流には7~8人が入川していたが、広い河原に車が1台、釣り人も2~3人という場所も多くある。緑の山々、青い空には泳ぐように悠々と飛ぶトンビの姿。透明度の高い水色、輝く底石。スケールの大きい仁淀川の流れに立ち込んでいると、このままこの悠久の大自然の中に溶け込んでしまいたいような気分になる。
しかし、ガガーンと体に響きわたる仁淀アユの強烈な引きに夢は醒め、現実に引き戻されるのであった

「目の前の瀬肩の波立ち、あそこにきっといいアユがいます。まず、そこで野アユを取りましょうか」
内山さんのアドバイスに従ってオトリアユを泳がせる。水がキレイなので、石の間を縫って沖へ進むオトリの動きがよく見える。その黒い影がキラッとはじけた。ポイントの波立ちに、オトリが侵入する前にアタリ。一気に瀬の中にもっていかれる。むりやり引き抜こうとして、ハリが外れてバラしてしまった。

予想外の所で魚が出るということは、アユが濃い証拠。再び、瀬肩の波立ちをねらうと、思い通りの場所でアタリ!今度は、瀬に逃げられる前にサオをため、水面に浮きあがったところで引き抜きを決める。17cmほどの追い星の鮮やかな、まさに水もしたたる溌剌と美しい若アユだった。

水もしたたる溌剌と美しい若アユ
黄色い追い星も鮮やかな“仁淀川の宝石”。本物の宝石は女性を惑わすが、こちらは生涯釣り人を惑わし続ける。立ちのぼる芳香、ぬめる肌、誘うように嫋(たお)やかに舞うヒレ、そして“逃げ足”鋭い発達した尻尾

ここで5~6尾釣って、次に瀬の下流に広がる深瀬に場所を移す。流心の水深は1mほど。深く、押しの強い流れだ。
「解禁日のアユは、自分の居心地のいい流れにいます。流れのキツイ流心よりも、その手前の瀬脇のスジがねらい目です」
こう内山さんに教えられ、瀬脇の流れのスジを引き釣りで上流へ上らせる。
すると、サオを持つ手に激しいアタリ。腰を落としてためる。サオは、仁淀川の空におおきな半円を描いている。浮いてきても、すぐに潜られる。引きに耐えられず、2~3歩下る。それでもまた潜られる。3回目の突進をかわしてやっと相手も力尽きた。
「俗にいう、仁淀アユの“三段引き”です。底流れが強い仁淀川で育ったアユは、体高があって背ビレが立ち、尾ビレも魚体に比べて大きいのでなかなか降参してくれません」
その抵抗の強さ、激しさが、釣り人を歓喜させる。内山さんも我慢できず、対岸に渡ってサオをだす。さすがに名手、見る間に入れ掛かりである。

仁淀アユの三段引き
仁淀アユ

美しくて強い。これが仁淀川のアユである。その引き味の強さ、鋭さは“仁淀アユの三段引き”といわれる。野アユが掛かると腰を落とし、サオを上流に倒して下流や沖への走りを止める。そしてサオを立て、オトリアユの顔が見えてからが実は本当の勝負になる。
一度、二度と、降参しかけてはまた水底にグングン潜る。良型は三度、四度と川底へ突進。これをこらえてやっと引き抜けるというわけだ

内山さんは、午前中3~4時間で30数尾を釣り上げた
内山さんは、午前中3~4時間で30数尾を釣り上げた。「今年はとくにアユが濃いですね。アユが多すぎて型はそれほど期待できませんが、数はすごいことになりそうです」
束(100尾)釣りも充分ねらえるだろう
同行した月刊『つり人』編集長が釣り上げた50cm近いニゴイ
アユだけではない、ニゴイもこんなにキレイ!同行した月刊『つり人』編集長が釣り上げた50cm近いニゴイ。「こんなにキレイなニゴイを見たのは初めてだ!」と歓喜(?)。それにしても、アユ釣り用の細イトが切れなかったのが不思議だ。「仁淀アユの引きのほうが強いですね。だってきょう、2回もアユにイトを切られていますから」
腕がいいのか悪いのか…。とにかく楽しい仁淀川

仁淀川は、アユの力強さと美しさとともに、川とその周りの風景も魅力的だ。
川を囲むように連なる高い山々。仰ぎ見る空の青さと白い雲。景色に曇りがなく、清澄な空気感に包まれる。
また川底の石に泥っぽさや砂っぽさがなく、いつもキラキラと輝いている。

  • このコンテンツは、2015年7月の情報をもとに作成しております。
ライター:世良 康
写真:浦 壮一郎
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