「高知・仁淀川」釣り旅の記録
“カツオのたたきと海山の珍味で夜が更ける”
土佐の高知はカツオの街だ。
総務省の家計調査による「1世帯当たりのカツオの年間支出金額」(平成23~25年平均)は、高知県が断然トップで1万円にせまる金額。2位の浜松4,000円弱、全国平均2,000円弱。自他ともに認める“日本一のカツオ好き県民”といえよう。
カツオはご存知のように黒潮に乗って回遊する。1~2月沖縄、2月末に九州・鹿児島南方海域に現われ、3月末に四国・紀州沖、4~5月に南伊豆・房総沖、さらに8月に三陸沖まで北上。この海域でエサをたっぷり食べて肥え太り、秋口から今度は逆方向の黒潮に乗って南下。土佐沖、鹿児島沖を通過するのは11~12月だ。つまり、日本海域ではほぼ1年を通じてカツオが獲れる。
「季節ごとに日本各地の港に水揚げされるカツオは、その日のうちに一大消費地である高知に運ばれて競りにかけられます。ですから高知のカツオは1年中新鮮でおいしく、毎日食べても飽きがきません」
こう力説するのは、高知市仁井田の土佐湾に近い食堂「土佐タタキ道場」のスタッフ。
土佐のカツオ料理といえば“たたき”である。この店では、客に伝統の“藁焼き”を体験させてくれる。
ドラム缶をタテに半分に割ったようなカマドに稲藁を入れて点火。燃え上がる炎の中で、金串に刺したカツオの節を炙り焼く。
藁は火力が強く、顔がカッと熱くなる。
「皮目をよく焼いたら、次は裏返して赤身はサッと炙る程度に焼くのがコツ」
焼きたてを、手早く厚切りにして盛り付ける。皿のはしっこには塩とワサビが。
「ポン酢で食べる“タレたたき”よりも、高知では天日塩で食べる“塩たたき”のほうが人気。こっちで食べてみてください」
厚さ1cmはありそうな“塩たたき”にかぶりつく。焦げ目のついた皮がカリッ、身はサクッ。潮の滋味を含んだ天日塩が旨味を引き出し、ワサビがスッと鼻に抜ける。
塩たたきは魚のニオイが鼻につくのではないかとの懸念もあったが、藁の香りに消臭効果があるのか、魚が新鮮だからなのか、まったく問題なし。カツオをこんなにおいしいと感じたのは初めてだ。
高知の郷土料理といえばもうひとつ、忘れてはならないのが「皿鉢料理」だ。明治7年創業の老舗旅館「城西館」の夕食で味わった。大皿の中央には真っ赤にゆで上がった扇エビ。見栄えも味も華やかだ。周りを取り巻くのは、アユの塩焼き、トコブシ塩ゆで、そしてゴリの唐揚げ、ミクリ貝、イタドリなど山海の珍味たち。ここ城西館は毎年「清流めぐり利き鮎会」の会場になっていて、全国から集まった2000尾を超えるアユを串焼きにする。
城西館では、見て楽しく食べておいしい「皿鉢料理」のプランを選択。カニや貝類、アユやゴリ、イタドリなど土佐の山海の美味・珍味が豪快に盛りつけられている。イワシの稚魚・ドロメやカツオの釜飯なども。
城西館は明治7年創業の老舗旅館。龍馬生誕地の市内・上町にあり、皇族の宿としても知られる。カツオの藁焼き工房を設け、毎夕“藁焼き実演”を披露。夕飯前、浴衣姿で見物するのもオツだ。屋上の露天風呂からは高知市内が一望。朝食のバイキング料理も充実。皿鉢料理のプランは1泊2食付きで13,900円~(TEL:088-875-0111)
もっといろいろ味わいたいなら、土佐の郷土料理から世界の味までそろうにぎやか屋台村「ひろめ市場」へ。食を中心とした屋台が約60店、朝から晩までにぎわっている。人気店「明神丸」では、カツオの藁焼きパフォーマンスが行われ、塩たたきやタレたたきをはじめ、脂の乗ったハランボ、酒盗など、カツオづくしを堪能できる。
さらに、ウツボのたたき、イワシの稚魚であるドロメ、四万十青さのり天ぷら、チャンバラ貝やヨダレ貝…。珍味のオンパレードに箸が迷い、酒がまわる。老若男女が卓を囲んで食べて飲んでおしゃべりをして、高知の夜は更けてゆく。
- このコンテンツは、2015年7月の情報をもとに作成しております。