切り立つ巨岩怪石
和歌山県串本町・潮岬は本州最南端に位置する。そのすぐ側で熊野灘に注ぐのが古座川だ。中流域は奇岩怪石が切り立つ絶景の地。古座峡と呼ばれ中国の桂林にたとえられる。中でも「一枚岩」は国の天然記念物に指定された巨岩で、このほか飯盛岩、天柱岩、ぼたん岩などの名勝が点在する。
魅力はなんといっても天然アユ。流れを寸断する七川ダム下までソ上があり、背ビレが長く追い星(アユのエラ近くにある黄色い斑点)が美しい。この魚体に魅せられるアユ釣りファンは多く、地元名手は当地の方言で「美女(みめ)アユ」と呼ぶ。
上流域にはアマゴも生息し入梅のころにはサツキマスがソ上する。アユ釣り解禁当初はサツキマスをねらうルアーフィッシングファンの姿も見られる。
平坦な川を攻略する
古座川は小石底で水は青く澄んでいる。底付近の流れが速くオトリが沈みにくい。そこで水中イトと呼ばれる水の中に入れるイトは金属ラインや水切りのよい細いタイプが使われる。
天然ソ上が多い年は各所でアユが魚体をひるがえし、苔を食む姿が見られる。アユの活性が高ければ広範囲にオトリを泳がせれば掛かる。が、渇水などの影響でアユが低活性の時は人影や物音におびえる。釣り人が川に立ち込んだ瞬間にさっと散るアユも少なくない。こんな時はオトリを静かに操作しなければ反応しにくく、浅い場所よりも深い場所がねらいめになる。
多くのアユが釣れるおすすめシーズンは天然ソ上のアユが充分な大きさに育つ9月。アベレージサイズは22cm程度。温暖な気候ゆえ、10月を過ぎても産卵のため下流に落ちるアユは少なく、元気にオトリを追い回す強い魚が掛かる。水面まで浮かせても何度も突っ込む引きは素晴らしく、魚体の美しさには思わず見惚れてしまうだろう。
シーズン中、本流の水は七川ダムの放水によって増減する。大雨が続くと放水が収まらないので、そのような時は支流の小川や佐本川がおすすめ。こちらの川にも天然アユがソ上する。本流に比べ川幅は狭まり渓流の様相となるが、苔むした大石が織り成す風景でサオをだすのも風情がある。
即座に反応するアユは瀬の中に多い。オモリも背バリも使わず、いわゆるノーマル仕掛けで探ってみるのがおすすめ。その後、4B~0.5号程度のオモリを使うと同じ場所を探っても異なるアユが反応する。なお、小川にある県の名勝・天然記念物「滝の拝」は、夏期に滝壺に密集したアユをオトリなしで引っかける「トントン釣り」が行なわれる場所。ただし、この釣りは釣り場の険しさから漁協組合員のみに限られている。
熊野古道と古座街道
古座には世界遺産・熊野古道の一部である中辺路と大辺路の狭間を走る古座街道があり、司馬遼太郎が好んで旅した道で「街道をゆく」シリーズにも登場する。こうした古道散策も兼ねてアユ釣りの旅を楽しむのもよいだろう。また流域には月の瀬温泉、美女湯温泉といった入浴施設があり、水墨画のような古座峡で天然アユのアタリを堪能した後はゆったりと温泉に浸かりたい。
この釣り場へのアクセス
関西国際空港からレンタカーを利用。阪和自動車道を串本・古座方面へ。
釣り場情報
〈古座川/アユ〉
シーズン | 6月1日~12月31日 |
遊漁料 | 日券3,300円 |
問合先 | 鮎の国わかやま 入れ掛かり総合案内所(http://www.naisuimen.com/koza.html) |
- 釣り場情報は2020年8月現在のものです。