日本随一の干満差
有明海は長崎、佐賀、福岡、熊本の九州四県に囲まれた国内屈指の干潟。島原湾の北寄りの浅い海域が一般にそう呼ばれ、干満差による海面の上下は最大で約6mもあるが、島原湾全体をさして有明海と称することもある。潮の満ち引きは月の満ち欠けによって生じるが、有明海ではこの自然の働きが体感できることから、「月の引力が見える街」としてPRする自治体もあるほどだ。そして、潮位変動の大きな干潟は、さまざまな海の恵みを持っている。
有明海といえば味のよいノリの一大産地として知られる。これは、筑後川から栄養塩を含む豊富な養分が供給され、さらに大きな干満差により、干潮時に空中でノリがほどよく乾燥することが好条件となっているためといわれる。ほかにも、川からの養分が供給されるとともに、浅い水辺が広がることで酸素も行きわたる干潟には、貝類などの水を浄化する生物が多く住み、さらにムツゴロウ、ワラスボ、エツといった、ここでしか見られない魚たちも含めたユニークな生態系が見られる。
秋は陸からねらえるヒラ釣りが手軽
有明海の秋は釣り人にとっても楽しい季節だ。対象となる魚は、ヒラ、メバル、マダイ、ヒラメ、スズキなど。
それらの中でヒラは、国内では有明海のほか岡山県の一部にのみ生息する魚で、地元では古くからエサ釣りの対象として親しまれている。近年、擬似餌を用いるルアーフィッシングの愛好者の間でも、このヒラが陸から手軽にねらえるターゲットとして人気だ。ニシン科に属すヒラは、名前のとおりとても薄い魚体をしていて、この魚がねらいやすい夜に釣りあげると、外灯の光を受けた目が独特のルビー色に輝く。釣り場は有明海西部の佐賀県から長崎県の各漁港がよい。酢締めのほか、フライにしても美味しく、秋の有明海の恵みを体感するにはうってつけの魚だ。
ルアーはオモリとハリが一体化したジグヘッドに、ワームと呼ぶ軟らかいルアーを装着したものを使う。ジグヘッドは1~3gのものを使い、ワームは1.5~2インチ(約3.75~5cm)のものを用意すればよい。これを沖の流れや堤防の際に沿って投げ入れ、任意の深さに沈めてからゆっくりリールで巻き取る。基本はゆっくり巻けばよいが、巻く手を止めて沈め直したり、サオの穂先を小刻みに揺らしてアクションを付けるのも効果的だ。
沖のメバル釣りもおすすめ
また、冬を迎える頃からは、船に乗って沖で釣るメバル釣りが楽しい。水深10~30mのエリアをエサ釣りでねらう。仕掛けは一番下にオモリをセットし、その上にハリを複数伸ばすドウヅキ仕掛けを使う。エサはモエビやタエビという小型のエビ。これをハリに刺して船べりから落とし、一度海底に付けたあとに船長が指示する深さまでオモリを巻き上げ、あとはイトを張ってアタリを待つ。メバルのアタリは明快なので、魚がハリに掛かって暴れ、サオ先にはっきりとした変化が出たら巻き上げればよい。こちらもヒラ釣り同様に手軽で軽快な釣趣が持ち味。特にシーズン初期は大型が出やすいのでチャンスだ。煮付けがポピュラーなメバルだが、有明海の新鮮なものは身の甘さと歯ごたえがたまらない刺し身がおすすめである。こちらの釣り場は、福岡県沖がメインで、状況しだいで佐賀、長崎、熊本の各県の沖もフィールドになる。
大きなハゼの仲間、ハゼクチ
また、佐賀県の南部の白石町、鹿島市から長崎県西部の諌早市の各漁港や河口、護岸などからねらえるのがハゼクチ。大きなものでは50cm以上になるハゼの仲間で、秋から年内いっぱいまでがシーズン。地元の釣具店で手に入るテンビン仕掛けで釣れる。そんな釣りも楽しいだろう。有明海の一帯は、荒尾のノリ棚などの印象的な景観はもちろん、雲仙温泉、柳川の水郷地帯、さらには大小の島々が点在する天草地域など、いずれも長期滞在に適し、見どころにあふれた観光地が多くある。穏やかな九州の自然を、きっと満喫できるはずだ。
この釣り場へのアクセス
佐賀空港からレンタカーで各エリアへ。
釣り場情報
〈有明海/ヒラ〉
シーズン | 梅雨~10月末 |
問合先 | ポイント佐賀店(http://www.point-i.jp/index.php?id=528) |
〈有明海/メバル〉
シーズン | 12~4月 |
問合先 | ポイント荒尾店(http://www.point-i.jp/index.php?id=arao) |
〈有明海/ハゼクチ〉
シーズン | 10~12月 |
問合先 | つり具のまるきん佐賀北部バイパス店(佐賀市/釣具店。http://www.marukin-net.co.jp/com/saga.html) |
- 釣り場情報は2015年10月現在のものです。