五つの瀬を有する川
五ヶ瀬川は宮崎県北部を東流し日向灘に注ぐ。源流部の向坂山は九州脊梁山地の中でも寒冷な土地で、日本最南端のスキー場があるくらいだ。上流部は深く切れこんだV字谷になっており、国の天然記念物に指定されている高千穂峡となる。巨岩怪石を縫う水は太く、文字どおりの急流である。
「五ヶ瀬」の名は、高千穂町にある吐ノ瀬、窓ノ瀬、あららぎノ瀬の3つの瀬、そして日之影町にある綱ノ瀬と、延岡市にある大瀬の、合わせて5つの大きな瀬から名付けられたといわれる。大きく曲流しながら、深い淵と荒々しい瀬が連続する川は、フトコロが深くヤマメやアユといった魚たちを大きく育てる。
体高あるヤマメと瀬に泳ぐ大アユ
日之影町から延岡市にかけての中流域には、背中が分厚く筋肉質なヤマメが潜む。春浅い3月から、ヤマメの大ものといわれる尺サイズ(約30cm)が釣れる。そうしたヤマメは水中で暴れると、思わず金属のタライが翻ったのかと思うほどの圧倒的な輝きと幅がある。五ヶ瀬川の水は、地元の釣り人の実感として、以前に比べて透明度が高くなっているといわれており、こうした水中の魚の動きがよりはっきりと目に入りやすくなっている。なお、ヤマメは夏場の高水温になる前の方が活性が高く、例年4~5月上旬がよく釣れる時期。釣り方はエサ、ルアー、フライのいずれでも楽しめるが、特におすすめは、水量の多い本流区間でも釣りやすいルアーフィッシングだ。特に稚アユが海から川へ入りソ上しているタイミングは大ヤマメ釣りの絶好の機会になる。7cm前後の小魚を模したミノーと呼ばれるタイプのルアーのうち、瀬やヒラキと呼ばれる開けた場所ではフローティング、それらよりも水深のある深めの場所ではシンキング、さらに白い波が立っているような激しい落ち込みの中を釣る時ならロングリップの付いたよく潜るタイプのフローティングを用意しておき、水中のヤマメを誘うように動かすと激しく襲いかかられる時がある。
そして、瀬の川である五ヶ瀬川では、夏になるとダイナミックなアユ釣りに魅了されるファンで賑わう。主な釣り場は八戸ダムの前後。ダム上流にある「カンバの瀬」といえば、尺を超える巨アユが掛かる高実績釣り場として名高い。また、ダム下流にはヒサゲの瀬、鶴の瀬、蔵田の一本瀬など人気ポイントが目白押しで、岩盤帯と大岩にナワバリを張ったアユはとてもパワフルだ。ヤマメと同じように、肩の肉が急激に盛り上がった体高のあるアユは迫力がある。
天孫降臨伝説の舞台
五ヶ瀬川の上流部にあたる高千穂峡は日本神話の舞台である。高千穂峡は太古に阿蘇山から噴出した火砕流が、五ヶ瀬川に沿って帯状に流れ出し、やがて急激に冷却されて固まることで出来上がった場所。柱状節理と呼ばれる特有の絶壁が続く渓谷となっていて、1934年には国の名勝天然記念物にも指定された。レンタルの手漕ぎボートに乗って、川から見上げる絶景はきっと目に焼きつくことだろう。
また、ユニークなところでは、旧国鉄による九州横断鉄道計画で未開通のまま残されたトンネルを、地元の神楽酒造が焼酎蔵にした施設も人気だ。総延長1,115kmものひんやりとした空間に、樽1,500本、一升瓶2万本の焼酎が納められている。
そのほかにも周辺には天照大神(アマテラスオオミカミ)を祀る天岩戸神社や高千穂神社など、神話にゆかりの神社や観光スポットも数多い。日本の歴史が息づく川で、釣りと観光を存分に楽しみたい。
この釣り場へのアクセス
宮崎空港のほか、大分空港からもアクセスできる。宮崎空港からは宮崎道と東九州道経由で延岡へ。大分空港からは大分道経由で延岡へ。
※お出かけの際には、事前に最新の交通状況をご確認ください。
釣り場情報
〈五ヶ瀬川/ヤマメ〉
解禁期間 |
3月1日~9月30日 |
遊漁料 | 1日3,000円~ |
管轄漁協 | 五ヶ瀬川漁協など(五ヶ瀬川は区域によって管轄漁協が複数に分かれる。 詳しくは宮崎県内水面漁業協同組合連合会のHPで確認できる。http://www.miyazaki-ngr.jp/) |
問合先 | タイトライン(釣具店/延岡市。TEL:0982-35-8455/ブログあり。営業は月~土16:00~21:00) |
〈五ヶ瀬川/アユ〉
解禁期間 |
6月1日~12月31日 |
遊漁料 | 1日4,000円 |
管轄漁協 | 五ヶ瀬川漁協(TEL:0982-47-2240) |
問合先 | タイトライン(釣具店/延岡市。TEL:0982-35-8455/ブログあり。営業は月~土16:00~21:00) |
- 釣り場情報は2015年5月現在のものです。