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    掲載日:2021.05.21

    和歌山県・古座川。息を飲む青い流れでトラウトルアーキャンプ

    紀伊半島の南端、和歌山県の串元町で熊野灘に注ぐ古座川。山々の間を縫うように流れる川の水は、本州でも屈指と称えられる澄んだ青色をしています。ルアータックルを手に春のアマゴ釣りをキャンプとともに楽しみます。

    本州最南端のアマゴ釣り場

    思わず見上げてしまう名勝の一枚岩。目の前の川原でキャンプができる
    吊り橋を渡って上流へ。すぐにでもルアーをキャストしたくなる
    吸いこまれそうなブルー。プレッシャーは高そうだがルアーを追う影は多い
    ねらいは藍色のパーマークとこまかな朱点が鮮やかなアマゴ
    地元アングラー・田上智士さんのリードで川を遡る
    釣りを開始して間もなく、さっそく一尾目がヒット
    キャストを交代しながらどんどん上流へ。これで少し濁りがあるとは思えない川の色
    普段の釣りは海のライトゲームがメインの脇田さん。渓流はほぼ初めてだがすぐにコツを掴んだ
    「可愛いサイズですがいい反応です(笑)」と富永さんもすぐにキャッチ

    紀伊半島の南端、和歌山県の串元町で熊野灘に注ぐ古座川。源は標高1122mの大塔山で、いにしえの自然が残る熊野の山々の間を縫うように流れる川の水は、本州でも屈指と称えられる澄んだ青色をしています。流域には国の天然記念物にも指定されている一枚岩があり、日本の秘境百選、平成の名水百選に選ばれるなど、全国でも屈指の清流です。
    釣り場となる川も多く、古座川本流のほか、平井川、添野川、佐本川、三尾川、小川などの支流も多くあります。どこを訪れても釣り人の姿はまばらで、自然のままの流れにのんびりとひたることができます。

    今回、古座川を訪れたのは、いずれも関西在住の脇田政男さんと富永敦さん。ともに釣り具メーカーの社員。脇田さん愛媛出身で今は兵庫の丹波市在住。富永さんは富山出身で高知に住んだあと、現在は大阪市に住んでいます。二人が勤めるメーカーは違う会社なのですが、展示会などを通じて互いに「キャンプも釣りもする」ことが分かり意気投合。それなら一緒に行こうか、という交友が始まりました。
    ねらいは古座川の青い流れに磨かれたヒレのピンと張ったアマゴ。まるでスクリーンのような大岩が川のすぐそばから立ちあがる「一枚岩」は、高さが150m、幅が800mもありますが、その目の前がテントの張れるキャンプ場になっています。ここをベース基地にして、互いにソロテントを張りながら、渓流のルアーフィッシングで上流部をあちこち釣り歩くというプランです。

    古座川のアマゴ釣り場は、主に七川ダムより上流の古座川本流筋(松根筋)、平井川、添野川の3本の川です。管轄は七川漁協で、漁協による稚魚放流のほか、近年は地元の有志による発眼卵放流も実施されていて、夏のアユ釣りは天然魚の遡上がある下流部のほうが盛んなことからも、アマゴの釣り場作りに力を入れています。今回、地元の古座川町で夏は「田上おとり店」を営み、春は自身もアマゴねらいの渓流ミノーイングを楽しむ田上智士さんが川を案内してくれることになりました。

    当日は朝から穏やかな快晴。前々日に低気圧の通過によるまとまった雨が降り、減水が始まって2日目という絶好のコンディションでした。ダムを過ぎた上流部から川に降り、流れに架かる吊り橋から覗くと、川の水は少し緑がかった澄んだ色。しかし、本当に驚いたのは、そこからさらに上流を目指して谷をしばらく進んだあとでした。河畔林と岩場に囲まれた空間に立つと、目の前に現われたのは思わず息を飲むくらい青く透き通った水。田上さんによれば「これでもちょっと濁りが入っているくらい。でも、ルアーでアマゴをねらうならちょうどいい加減かもしれません」ということですが、これぞ古座川という素晴らしさです。

    川のカーブに合わせて日向と日陰がはっきり分かれている場所。先にキャストをした脇田さんの第一声は、「なにこれ、アマゴいるやん! 釣れるやん」。なんと最初のポイントで、いきなり18cmのアマゴがヒットしました。実は脇田さん、渓流のミノーイングはこの時が初挑戦。ルアーフィッシングはお手のものですが、普段はアジングやメバリングなどの海のライトゲームを主に楽しんでいます。渓流釣りに慣れているのは、富山育ちの富永さんのほうで、すると間もなく、少し上流へ行った富永さんも藍色のパーマークがきれいに並ぶアマゴをキャッチしました。その後も互いに距離を取りながら、数尾のアマゴを釣ってはやさしく流れに帰し、すっかり満足できたところで、明るいうちに一枚岩前のキャンプ場に戻ることにします。

    ソロ+ソロの男同士キャンプ

    テントは互いにソロ用をセット。脇田さんの寝どこはコッシュ、断熱マット、シュラフの組み合わせ
    富永さんはミニマルなワンポールテントながら高機能のシュラフで快眠
    キャンプサイトにまず欠かせないのが快適なイス。コンパクトに畳めるローチェアタイプが二人のお気に入り
    テーブルもイスに合わせて低いものをチョイス
    少し里に降ると水生昆虫も盛んに羽化をしていた
    民家の近くを流れる区間にもアマゴはいる。特に春のアマゴ釣り解禁直後であれば、水温が上がりやすいこうした場所がよいこともある
    テント泊ならではの開放感。夜は降り注いできそうな星空が広がった。キャンプ場の問い合わせは「一枚岩鹿鳴館(TEL:0735-78-0244)」。利用料は大人1名1泊1,100円。水道・トイレが利用可能で温泉も近くにある

    ともに釣り好き、野営好きな二人ですが、キャンプを始めたきっかけは少し違います。富永さんは「親がいわゆるファミリーキャンプ好きで、昔からさまざまなところに連れ出されました。おかげで、一時はキャンプが嫌いだったんです(笑)」「でも、車を運転できるようになって、連日川に泊りで釣りに行きたいとなったらキャンプ道具が必要になった。それで親の道具を引っ張りだして再開したのがきかっけです」と言います。脇田さんはもっと今風。「ヨメとインスタを見ていて、これオシャレやな~。これならやってみようか?と。おかげでキャンプ予算はヨメからも出ます(笑)」とのこと。

    そんな二人ですが、今では共通しているのが、釣りでもキャンプでも、デザインと機能を兼ね備えた道具を自然に使いこなしていること。テント場の設営、寝床のセッティングと、あれよという間に済ませてしまうと、「焚き火を見て、飲んで、寒くなったらシュラフに入っちゃう。そしたら朝までぬくぬくです」と、まだまだ夜は冷え込む季節でしたが、まったく気にも留めていません。「キャンプは冬もやっていますし、こんなの気持ちいいくらいですよ」と、ウイスキーとツマミをやりながら男同志の馬鹿話でリラックス。そのまま満天の星空を眺めて快適に過ごしました。
    翌朝はのんびり朝食を作ってから、再び田上さんと支流の平井川へ。こちらは本流筋以上に青い水色が特徴ですが、この日は追ってくるアマゴの大半が稚魚サイズ。「もう少し暖かくなって、また来たら最高では?」と、早めに午前中でロッドをしまいました。キャンプのためのキャンプでもなく、釣りだけに時間を縛られるのでもない。そこにあるのは、ひたすら心地よい時間の流れでした。

    古座川流域には旅館や民宿も多数あり、キャンプはもちろん、宿泊でも釣り旅は楽しめます。また、夏からは海から遡上する天然アユの釣りが盛期を迎え、古座川の澄んだ流れに育つ良質な苔を食べるアユは「美女鮎(みめあゆ)」と呼ばれ、姿も香りもよいことで近年はブランドにもなっています。川も海も山も豊かな流域を、ぜひ訪れてみてください。

    (この釣り場へのアクセス)

    関西国際空港からレンタカーを利用。阪和自動車道を串本・古座方面へ。

    (釣り場情報)
    <古座川/アマゴ>

    シーズン:3月1日~9月30日
    管轄漁協:上流/七川漁協(TEL:0735-77-0063)、下流/古座川漁協
    http://www.ayuayu.server-shared.com/

    遊漁料:(七川漁協)日釣券2,500円、年券5,500円/(古座川漁協)日釣券1,100円、年券3,300円

    <古座川/アユ>

    シーズン:6月1日~
    管轄魚漁協:古座川漁協
    http://www.ayuayu.server-shared.com/
    遊漁料:日釣券3,300円、年券1万1,000円

    フォトグラファー:津留崎 健

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