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    掲載日:2021.05.28

    釣り好き水中写真家の水辺めぐり日記(第1回 北海道 然別湖/しかりべつこ)

    主に淡水魚の魅力に魅せられ、全国を訪ね歩いている写真家の知来要(ちらい・よう)さん。誰も来ない水辺でじっとその時を待ったり、魚たちと同じ視点を求めてウエットスーツで流れに潜ったり、ユニークな撮影スタイルの中で出会ってきた、水辺の景色やその土地の魅力をお伝えします。

    一万年のディスタンス ミヤベイワナとオショロコマ

    静寂な然別湖の夜明け。次第に魚たちが作るライズリングが広がる
    湖に陸封されたオショロコマはプランクトン食になりミヤベイワナへと進化した
    原始の森を流れる然別川の支流に棲むオショロコマ

    夜明け前の然別湖(しかりべつこ)が深い藍色から紫、そしてドーンピンクへと刻々と色を変えながら明けていくなか、湖から沸き立つモヤの中で魚たちが作りだす波紋(ライズリング)が音もなく広がっていきます。

    太古からの変わらぬ空気を感じられるこの静寂な時間帯に、コーヒーを啜りながら椅子に身をゆだね、ただボーっとこの光景を眺めるのがたまらなく好きな時間です。慌ただしい日々の喧騒から心をリセットしてくれる大切な時になっています。

    北海道の然別湖には十数年前、雑誌の仕事で絵本作家の釣りを撮影する目的で訪れたのが最初でした。以来、原始の森にたたずむ湖と世界でここだけに生息するミヤベイワナの魅力に引き込まれて通うようになりました。然別湖は一万年以上前に大雪山系の噴火でヤンベツ川が塞き止められて出現した湖です。噴火で塞き止められた川にはもともとオショロコマが生息していました。そのオショロコマが湖の生活に適応するために、一万年という長い時間をかけて進化したのがミヤベイワナです。

    面白いことに湖の生息場所で体色が変化し、湖の深いところではコバルトブルー、中央で比較的浅場はグリーン、そして岸寄りではブラウンという生息環境に合わせた保護色になります。このさまざまなボディーカラーに朱色の鮮やかな斑点がちりばめられ魚が水面に上がってくると、水の揺らめきとも相まって宝石のように光り輝きます。この美しい写真が撮りたくて毎年通っていると言っても過言ではありません。

    岸辺で釣りをしていると背後の溶岩の隙間から氷河期の生き残りと言われるエゾナキウサギが「ピチイッ、ピチィッ」と鳴きながら現れたこともありました。湖から下流や然別川の上流や支流には昔からオショロコマが生息しています。胸ビレはミヤベイワナよりも短く頭部は丸みを帯びています。なによりどんぐり眼で愛嬌があるのが一番の特徴です。地味で素朴なイメージのオショロコマと洗練されてスタイリッシュな趣のあるミヤベイワナは似たようでありながら、異なった魅力を持つようになりました。先祖が同じでありながら一万年という時間が少しずつ機能や形までも進化させたのです。

    然別湖の釣りの解禁中(資源保護のため年間50日)に釣りで訪れた際には、湖のミヤベイワナと川のオショロコマを釣って、いずれもじっくり観察し撮影するのがルーティーンになっています。静寂の湖や原始の川で一万年のディスタンスを感じられる楽しい釣り旅まだまだ続きそうです。

    然別湖の釣り情報

    大雪山国立公園唯一の自然湖である然別湖は、固有種のミヤベイワナをはじめ貴重な野生動植物が生息しています。釣りは1年のうち50日間のみ、1日50名限定の特別解禁で実施されています。

    アクセス

    新千歳空港から約3時間。帯広空港から約1時間30分。鹿追町市街から国道274号線で然別湖方面に進み、国道85号線で然別湖畔へ

    2021年度特別解禁スケジュール

    ファーストステージ:※緊急事態宣言にともない調整中。詳しくは下記のグレートフィッシング然別湖事務局まで問い合わせ。

    予約・問い合わせ

    グレートフィッシング然別湖事務局(https://www.shikaribetsu.com/

    • 写真はすべてイメージです。
    ライター:知来 要
    フォトグラファー:知来 要

    釣り好き水中写真家の水辺めぐり日記

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