今に残る江戸前釣りの人気メニュー
釣りの世界に「江戸前の釣り」という言葉があります。クロダイ、ハゼ、カレイ、アナゴ、スズキ、アオギス(現在の東京湾では絶滅)などが代表格ですが、多くは川と海が接する干潟や汽水域を好む魚です。多摩川、墨田川、荒川、江戸川、養老川など、多くの流入河川があることからもわかるとおり、東京湾はもともと、地上から供給される栄養が豊かな恵みの海でした。そこに「江戸前の釣り」が生まれたのです。江戸時代の浮世絵には、釣りをする武士や庶民の姿が多く描かれています。
テナガエビ釣りもその1つです。テナガエビは河川の下流部、海とつながる汽水域に棲息しています。魚ではありませんが、東京エリアでは昔から人気の釣りの対象でした。繁殖期の梅雨頃になると、オスとメスがそれぞれ河川の下流域の浅場(岸寄りの浅い場所)に集まります。そして夏頃までにかけて釣れるようになります。食欲旺盛、そこにいさえすればエサにすぐ反応し、ハリに掛かるとエビ特有のキックバック(尾で水を蹴って逃げようとする動作)で抵抗。気持ちのよい手応えで釣り人を楽しませてくれます。そしてこのテナガエビ、食べるととても美味しいのです。
釣具店のテナガエビコーナーへ
東京と神奈川の境を成す多摩川、埼玉と東京の境を成す荒川、さらに東京と千葉の境を成す江戸川などは、いずれも下流部の広いエリアに、テナガエビ釣り場が点在しています。
例年5月頃から、これらの地域にある釣具店のどこにでも「テナガエビ釣りコーナー」が設置されます。サオ、仕掛け、釣ったテナガエビを生かしておくためのクーラーやポンプ、そしてエサといったアイテム一式が分かりやすく販売されていますので、まずは釣具店をのぞいてみてください。お店から近いおすすめの釣り場も教えてくれます。
熱心なベテランファンも多いテナガエビ釣りですが、入門者に最適な釣りとも位置付けられています。迷ったら遠慮せずスタッフに相談してみましょう。
なお、テナガエビは釣り場によって、水位が上がって岸際に水が満ちてくる時間帯が釣りやすい所と、逆に水位が下がっている時のほうが釣りやすい所があります。出かけるタイミングもアドバイスを聞いておくと役に立ちます。