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    掲載日:2021.06.11

    楽しい!釣りの自然科学(第2回:静かにする大切さ)

    公立中学校と高校で37年にわたり理科教諭を勤め、『かわいい子には釣りをさせろ』の著書もある奥山佳一さんが、釣り場で起きる自然現象やその理由を大人にも子供にも分かりやすく解説。自然科学の楽しさを伝えます。

    魚は「振動」に敏感

    池に桟橋が浮かぶヘラブナ釣り場。「移動は静かに」がマナーになっています
    夏の川でクロダイをねらうルアーアングラー。上手な人は川のようすを静かに歩いて観察します

    子供の頃、釣り場ではしゃいで走り回ると、「釣れなくなるから静かに!」と大人に注意されました。実際のところ、こうした行動は魚の釣れ具合に影響するのでしょうか?

    まずおしゃべりについて考えてみましょう。音を出しているものはギターの弦のように振動しています。その振動が空気を介して耳に届くと、「音」として感じ取られます。ですので、振動を伝える物質(たとえば空気)がないと音は聞こえません。真空の宇宙空間では、音は伝わらず聞こえないのです。

    また、音は振動を伝える物質の種類によって速さが変わります。空気中では1秒間に約340mの速さで伝わりますが、水中ではそれが約1,500mになります。水中のほうが5倍以上速く音が伝わるのです。

    これだけを聞くと、人の話し声もすごい速さで魚に伝わる……と思えるかもしれません。しかし、実際には空気中で発せられた声は、水との境界面でほとんど反射してしまい、魚に人の声はほとんど届いていません。自分が水中に潜った場合を考えるとすぐに分かりますね。

    一方、マンションでは上の階の住人の話し声は聞こえなくても、歩く音は聞こえることがあります。仕切りがあるので空気を伝わる会話は聞こえなくても、歩く振動はコンクリートのような固い物質を伝わって下の階にまで影響するので、最終的に音として伝わってくるのです。

    つまり、最初の状況に戻ると、釣り場でのおしゃべりは魚にほとんど影響しなくても、コンクリートの岸壁や岩場を走り回る音は、振動として地面を伝わり、確実に水中の魚たちにも届いているのです。「釣り場で騒いだら魚は釣れない」というのは、特に走り回ることなどについては、正しいアドバイスだと言えます。音がコンクリートや岩を伝わる速さは、水中よりもさらに速く、1秒間に約3,000mと空気中の9倍近くになります。

    そのうえで、人間は空気中を伝わる音を、外耳、中耳、内耳の順に取り入れ、奥にある鼓膜に伝えて聞いていますが、魚には外耳や中耳がなく、音は脳の近くの内耳に直接伝わります。そのため音をとらえること自体は人間より苦手です。

    ただ、耳が発達していない魚は、代わりに水中の振動をすばやく感じ取る「側線」と呼ばれる器官を発達させました。体の横にある側線によって、水中や水辺近くで発生する振動(人の足音も含む)は敏感に感じ取れるのです。

    マナーも含めて釣り場で騒いではいけないのはもちろんのことですが、近づく時から地面に振動を与えないようにすれば、魚に警戒されずによい結果を得られる可能性が高まります。大人も子供も、釣り場ではまず、「静かに歩く」ようにしましょう。

    岸の近くでカニや貝を捜すクロダイ。警戒心が強く物音(振動)にも敏感
    静かなアプローチはいい魚への第一歩です
    ライター:奥山 佳一

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