アユの友釣りの面白さ
一度体験したら、多くの人が魅了されるといわれるのがアユの友釣りです。主な理由を挙げてみると、「川に浸るのが気持ちよい、夏に楽しむ季節感」「エサでもルアーでもない生きたアユを操作して、他のアユを釣るというユニークさ」「できることが1つ増えると、釣れるアユが確実に増えるという上達感の得やすさ」「アユが掛かった時の強いアタリと引き」「自分で釣ったアユを食べるアフターフィッシングの楽しみ」などがあります。
アユの友釣りは、この魚の生態と密接にリンクしています。アユは1年で生涯を終えますが、秋に川の下流部で親魚が産卵・孵化すると仔魚は一度海に降ります。その後、翌年の春頃から5~6cmまで育った稚魚が川を遡るようになり、川に入ったあとは川の中の石に生える苔(藻類)を食べ、秋の産卵までに20cm、25cm、最大で30cmという大きさにまで育ちます。アユにとっては、短い夏(=苔がよく育つ)に体を大きくすることが使命であり、よい苔が生える石に他のアユが近づいてくると、自分のエサ場を守るために激しく体あたりして追い払います。友釣りはまさにこのアユ独自の習性を利用したもので、生きたオトリアユの尻ビレ付近に掛けバリをセットして川に泳がせ、川でナワバリを張っているアユのところに送り込む。それによって体あたりをうながし、川のあちこちにいる野アユを次々に釣っていく(=掛けていく)という釣りになります。釣ったばかりのアユをオトリに使うと、元気に泳ぐのでさらによく釣れます。この好循環が得られると、次々にアタリが訪れる「入れ掛かり」になり、多くの人は夢中になってしまいます。
全国初のビギナー応援プロジェクト
このように魅力あふれるアユの友釣りですが、生きたオトリアユを川まで運ぶオトリ缶、釣りの最中にアユを入れておく引き舟、長いサオ(標準で9m)、オトリの付け外しの際に必要なハリの引っ掛かりにくいタモなど、扱い方も覚える必要のある専用の道具がいくつかあります。また、仕掛けの作り方、釣り場での取り扱いなど、覚えるべき基本も少なくありません。
そうした中、全国でも初の試みとして、「県内のアユ釣り場を持つ河川全体でビギナーの入門をサポートしよう」という活動を始めたのが、貴志川、有田川、日高川、日置川、古座川、熊野川などがある、和歌山県の内水面漁業協同組合連合会です。釣りメーカーのテスターなど一流の講師陣に友釣りのイロハを教わり、志を同じくする友人も増やせる「わかやま友釣り塾」が2016年からスタートしました。
塾の参加資格は、原則として卒業検定を含む4日間の講習をすべて受講できる人で、会場となる和歌山県の各河川まで車で来られる人。アユタビ、タイツ(またはウエーダー)、帽子、服装(アユベストなど)などは自前で準備します。そのほかのアユザオ、引き舟、タモ、ベルトなどはシーズンを通じて無料で貸し出を受けられます。講習そのものも無料で、その際に使われる仕掛け・ハリなどの消耗品、釣りに必要となる遊漁券やオトリまで費用は掛かりません。非常に恵まれた環境で新しい釣りにチャレンジできます。毎年20名ほどが受講(応募多数の場合は抽選)のうえ卒業しており、地元近畿圏はもとより、近年は関東からの参加者もいます。
残念ながら、2020年と2021年はコロナ禍で中止となっていますが、参加費だけで手ぶらで受けられる「鮎の友釣り教室(2021年は日置川)」や、友釣り用のサオの無料レンタル、18歳以下の遊漁料無料キャンペーンなどは実施しています。興味の湧いた人は、公式ウェブサイトである「鮎の国わかやま」を一度のぞいてみてください。
一度始めれば長く続けられる
初めの一歩は決して簡単ではないアユ釣りですが、一方でシニア世代になっても、自分の体力に合わせて釣り場を選べば、長く続けられます。急な流れに立ち込んで楽しむダイナミックなアユの友釣りももちろんあるのですが、アユの釣り場は人里離れた渓流ではなく、開けた平地の川であることが多く、全国のアユ釣り河川に行くと、夏のアユ釣りを毎週の楽しみにしている大ベテランの姿をよく見かけます。
また、川にはオトリのアユや遊漁券を販売しているオトリ店が各所にあるため、ビギナーであっても、最近の川の状況はどうか、当日はどこで釣るのがよさそうか、車はどこに停めればよいか、気軽に分からないことを聞くことができます。つまり、少しのきっかけがあれば、その後は自分で長く続けていける環境が、実は他の釣り以上に整っているのです。
一度はやってみようかと思ったら、ぜひ思い切って挑戦してみてください。
- 記載の内容は2021年6月現在の情報です。変更となる場合があるのでご注意ください。