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    掲載日:2021.08.12

    釣り好き水中写真家の水辺めぐり日記(第5回 北海道 夏の斜里川水系)

    主に淡水魚の魅力に魅せられ、全国を訪ね歩いている写真家の知来要(ちらい・よう)さん。誰も来ない水辺でじっとその時を待ったり、魚たちと同じ視点を求めてウエットスーツで潜ったり、ユニークな撮影スタイルの中で出会ってきた、水辺の景色やその土地の魅力をお伝えします。

    サクラマスが跳ねる滝

    早朝、神秘的な雰囲気の「さくらの滝」
    魚たちは繰り返し水の壁に挑む

    オホーツク海から昇った朝日が、木々の隙間から黒く静かだった川に射し込みます。すると川は急に活気づき、生き物の気配が漂い始めました。光がまだ完全には届いておらず、青味を帯びた「さくらの滝」でも、数尾のサクラマスが跳ね始めます。
    北海道の斜里川にあるさくらの滝は、毎年6月から8月にかけて、秋の産卵のために海から遡上したサクラマスたちがジャンプする貴重な場所です。高さは3~4mあり、そこを登り切って上流に行けるサクラマスは、100回のジャンプで1尾か2尾ほどです。ほとんどのサクラマスは強い水流に弾かれて落下してしまいます。時に傷付き、それでも何回もトライして、運が良ければ登れるという難関の滝なのです。
    私は夏になるとよくここを訪れます。観光客の多い日中と違い、夜明け直後の早い時間はほとんど人がいません。朝露で濡れた森の澄んだ空気に包まれながら、太古から粛々と繰り返される光景に身を置くと悠久の時を感じられます。

    可憐なオショロコマ

    青い湧き水が輝く神の子池
    日本では北海道だけに棲息するオショロコマ
    ヒレや腹部は深いオレンジ色をしている

    この季節は、支流の札弦川上流にある「神の子池」にもよく行きます。池にはオショロコマがいて、透明で冷たい湧き水の中を気持ちよさそうに泳ぐ姿や、水面を漂う虫を捕食する姿をカメラに収めることができます。オショロコマは大きさこそ20cm前後と小さめですが、体の側面には赤い斑点があり、ヒレや腹部は熟れたマンゴーのような鮮やかなオレンジ色をしていて、日本のサケマスの中でも特に美しいと私は思っています。
    オショロコマの体の色は、場所や個体によっても少しずつ異なります。斜里川はさくらの滝の周辺をのぞいてどこも釣りができますが、私がオショロコマを釣るのは源流域です。中流部でもオショロコマを釣れるのですが、北海道には川でサクラマスを釣ってはいけない規則があり、この季節の中流部では間違ってサクラマスが釣れてしまう可能性もあるため自発的にそうしています。
    ちなみに源流域では、小さなヤマメも毛バリに飛び出します。北海道では地域によりヤマメ釣りの禁止期間が設定されていて、オホーツクエリアは5~6月がヤマメ釣り禁止。それ以外は問題ありません。ヤマメとサクラマスは生物学的には同じ魚で、川に留まって成魚になるものがヤマメ、海に降って大きくなるものがサクラマスです。斜里川上流域のヤマメは、あの難関のさくらの滝をクリアしたサクラマスの親が秋に残した子供かもしれません。
    魚たちをじっくり観察しては写真を撮り、魚が釣れたらまた写真を撮る。夏の斜里川水系は、魚好き、カメラ好きには魅力的な題材の宝庫なのです。

    アクセス

    さくらの滝のある清里町までは女満別空港から車でおよそ50分。中標津空港からはおよそ60分。

    • 写真はすべてイメージです。
    ライター:知来 要
    フォトグラファー:知来 要

    釣り好き水中写真家の水辺めぐり日記

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