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    掲載日:2021.08.19

    楽しい!釣りの自然科学。(第5回 浮くだけではないウキの役割)

    公立中学校と高校で37年にわたり理科教諭を勤め、『かわいい子には釣りをさせろ』の著者でもある奥山佳一さんが、釣り場で起きる自然現象やその理由を分かりやすく解説。生涯役立つ自然科学の基礎知識を、大人にも子供にも分かりやすく教えてくれます。

    ウキの浮力と基本性能

    古典的なウキの1つであるヘラブナ釣りのウキ
    ドングリのような形をした磯釣りの円錐ウキ

    釣具店にはさまざまなウキが売られています。ウキは釣る場所、狙う魚、釣り方などにより、形、長さ、重さ、色などが変わるため、どれを選んだらよいのか迷うくらい多くの種類があります。

    ウキの役割を支える一番の要素は「浮力」です。浮力を教科書的に説明すると、「水中にある物体は、水が押し返してくる力の働きによって、空気中にある時より軽くなる。物体をバネばかりに吊るして空気中で測った時の重さと、同じ物体を水に完全に沈めた時の重さの差が浮力である」ということになります。浮力は物体の重さ(質量)に関係なく、体積(=押しのける水の量)に比例して大きくなります。

    ウキの体積を大きくすると、ウキが見えやすくなります。ただし浮力も大きくなり、魚がエサをくわえた時の抵抗(違和感)も大きくなって、エサをくわえてもすぐに吐き出してしまいます。では、ウキの体積は小さくすればよいのかというと、浮力が小さいウキは安定しづらく、同じ材質の場合は遠くに仕掛けを飛ばしたい時も不利になります。

    ウキの最も基本的な役割は、魚がエサをくわえたことを知らせるというものです。しかし、実際にはそれだけでなく、魚が泳ぐ層を正確に狙う役割もあります。さらに仕掛けを狙った場所まで運ぶ役割もあります。ウキを流れに乗せることで、手の届かない場所まで仕掛けを移動させることができ、あるいは仕掛けの中に質量の大きなウキを取り付けることで、軽い釣り糸やハリだけでは届かない場所まで直接キャストできるようになります。

    ウキの種類が多い理由

    刻々と自然条件が変わる磯釣りの風景
    波間を漂わせるウキは、小さなガン玉1つで浮き加減が変わる
    バランスのよい仕掛けで釣りあげた磯のメジナ

    このように、浮力を含めてウキには「何を重視するか」という要素がいくつも含まれているため、一筋縄ではいかないのです。

    たとえば磯や堤防からのメジナ釣り(グレ釣り)で使用される円錐ウキには、似た形と大きさのウキの中に、「B」「3B」「0(ゼロ)」など実に細かい浮力のバリエーションがあります。この場合のB、3Bとは「このウキはB、3Bの重さのガン玉まで付けることが可能な浮力を持っている」という意味です。メジナはエサを食べた時に感じる抵抗に非常に敏感な魚で、ウキの浮力はなるべく小さいほうがよいとされます。一方で、磯の周りは潮の流れも複雑で、時間による変化もあるため、ただ軽ければよいわけでもありません。「その時点で仕掛けを自然に漂わせられるギリギリの浮力」が求められます。そこから発展して、最近ではオモリ(ガン玉)なしの状態でギリギリ浮かぶ「0浮力」や、オモリなしでもジワジワと沈んでいく「00浮力」といった、他の釣りには見られない特殊な表示の商品まで作られるようになっています。さらに同じ浮力のウキの中で「S」「M」「L」といったサイズ違いもあり、近くを釣るならより敏感な「S」、キャストで遠くをねらうなら「L」といった選択もします。

    魚を釣るための釣り人の努力は、ウキ1つとっても際限がないのです。

    ライター:奥山 佳一

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