初物好きの日本で根付いたワインの新酒
「初物七十五日(はつものしちじゅうごにち)」という言葉をご存じですか? その年に初めて採れたものや旬を迎えたばかりのものは縁起が良く、それを食べると寿命が75日延びる、という意味があります。江戸時代に広まった俗言だそうですが、寿命への効果はさておき、新米や新酒、新茶、初鰹など、食を通じて新しい年や季節の到来を体感できる初物は、今でも人気ですよね。
海外でも収穫祭などで初物を喜ぶ習慣があります。みなさんご存じ、ワインの新酒ボジョレー・ヌーヴォーもその一つ。実はこのワイン、毎年11月の第3木曜日0時に販売が解禁されることが決められているため、日付変更線の関係から日本では本国フランスより数時間早く飲むことができます。縁起を担ぐだけではなく、誰よりも早く手に入れたい「初物食い(はつものぐい)」と呼ばれる人もいるくらい初物に価値が置かれる日本ですから、ボジョレー・ヌーヴォーがポピュラーな存在となったのも頷けます。ちなみに今年の解禁日は11月17日。すでにANAショッピング A-styleでは予約販売がスタートしています。
軽やかな口当たりで親しみやすいワイン
ここ数年は完売になるほど人気の高いANAのボジョレー・ヌーヴォー。その魅力に迫る前に、まずはANAショッピング A-styleでアルコール類のマーチャンダイジングを担当する松尾さんにガイドしてもらいながら、簡単にボジョレー・ヌーヴォーについておさらいしてみましょう。
「ボジョレー・ヌーヴォーは、その年に採れたブドウを使った新酒のワインです。もともとは地元ボジョレー地区の人たちが収穫のお祝いだったり、ブドウの出来栄えを確認するために試飲をしたり、そういった目的で飲まれたのが始まりでした。それが美味しいと評判が広がって、今や世界中で愛飲されています」
ブルゴーニュやボルドー、シャンパーニュなど、フランスにはあちらこちらに名高い産地があり、数多くのワインが生産されていますが、ボジョレー・ヌーヴォーにはどのような特徴があるのでしょうか。
「産地となるボジョレー地区は、スター級のワインを数多く産出するブルゴーニュ地方の南端に位置します。ボジョレー・ヌーヴォーに使われるブドウは黒ブドウのガメイ種。したがってボジョレー・ヌーヴォーは赤かロゼのみ。この品種は粒が大きく皮が薄いので、一粒あたりの果汁の割合が高く、他のワインに比べると色は少し薄くなります。渋みを左右するタンニンが少なく、口当たりは軽やか。酸味が鮮やかで果実味の輪郭がはっきりしているので、親しみやすい味わいです」
作り手は1880年創業の名門ワイナリー
数あるボジョレー・ヌーヴォーのなかでも、ANAショッピング A-styleが扱うのは、ブルゴーニュの名門メゾン・ジョゼフ・ドルーアンの商品。「この作り手は、1880年にブルゴーニュで創業した老舗ワイナリーです。創業時から家族経営と育成地の個性(テロワール)を最大限引き出す製法にこだわり、当代の4代目までその伝統が受け継がれています」と松尾さん。ボジョレー地区でも早くからブドウ作りに携わり、ブルゴーニュ同様、テロワールを大切にした丁寧なワイン作りで、高い評価を得ています。
「ANAでは、2011年に国際線ビジネスクラスのワインとして、メゾン・ジョゼフ・ドルーアンのワインを採用したのが最初です。その後、2014年からANAショッピング A-styleでオリジナルラベルのボジョレー・ヌーヴォーを販売するようになり、今年で9年を迎えます」
ANAショッピング A-styleでは、ボジョレー・ヴィラージュ・ヌーヴォーとボジョレー・ヴィラージュ・ヌーヴォー・ヴィエイユ・ヴィーニュの2タイプを販売。前者は、滑らかな口当たりでピュアな果実味が特徴の定番ライン。後者は、樹齢30年以上の古木(ヴィエイユ・ヴィーニュ)から採れたブドウを使ったプレミアムなタイプになります。
「ヴィエイユ・ヴィーニュは、樹齢が高い分、より深くまで根を伸ばすため、若樹では届かない広範囲の水や栄養を吸収します。また、ブドウは樹齢を重ねるごとに1本の樹から採れる収量が少なくなるので、1房のブドウに集まる要素がより凝縮していきます。より高品質で凝縮感があり、深みのある味わいに仕上げたのがヴィエイユ・ヴィーニュの特徴です」
このメゾン・ジョゼフ・ドルーアンの2本立ては、取り扱い開始当初から変わらないそうです。「毎年好評をいただいており、リピーターのお客様も多いですね。今年はANA創立70周年ですので、お客様にとって年に1回のボジョレー・ヌーヴォーをより特別感のあるものにしていただきたいという思いもあり、ラベルについては従来とデザインのタッチや色合いを一新しています」
気になるブドウの出来ですが、メゾン・ジョゼフ・ドルーアンの関係者によると、ブルゴーニュ地方、ボジョレー地区ともに今年は例年より早く夏日を迎え、ブドウの生育が非常に進んでいるとのこと。「ここ最近では最高のビンテージになりそうだと、期待が高まっているようです」と松尾さん。
解禁日限定の機内搭載が3年ぶりに復活
また、コロナ禍の影響で2020年から見送られていたボジョレー・ヌーヴォーの機内搭載が、今年は復活するという嬉しいニュースも飛び込んできました。「解禁日の11月17日にフライトのある一部の路線で、ビジネスクラスにボジョレー・ヴィラージュ・ヌーヴォーが、ファーストクラスにボジョレー・ヴィラージュ・ヌーヴォー・ヴィエイユ・ヴィーニュが搭載されます」。特別なラベルを冠した初物を、解禁日当日に機上で味わう特別感たるや、想像しただけでもワクワクが止まりません。
機上でボジョレー・ヌーヴォーを楽しむのも素敵ですが、自宅でもビジネスクラスやファーストクラス気分で楽しんで欲しい、と松尾さん。「ボジョレー・ヌーヴォーは新酒のお祭りという意味合いが強いワインなので、やはり家族や親しい人と食卓を囲みながらワイワイ楽しめるシチュエーションがお似合いだと思います」。
合わせる食事は、フレッシュなサラダからサーモンなどの魚料理、ロールキャベツやローストビーフといった肉料理と、前菜からメインまで幅広いのもボジョレー・ヌーヴォーの良いところ。現地の定番スタイルに倣うなら、鶏肉と野菜の赤ワイン煮込(コック・オ・ヴァン)や牛肉の煮込み(ブッフ・ブルギニオン)、エポワスというブルゴーニュ地方のチーズを合わせてみるのもいいですね。こうした料理を解禁日当日に準備して、届いたばかりの新酒を開ければ、現地で初物を祝うお祭りに参加しているような気分になれるかもしれませんよ。
- 記載の内容は2022年8月現在の情報です。変更となる場合があるのでご注意ください。