カレンダーがあれば、気分はいつも大空に
「ANAオリジナルカレンダー」は飛行機好き、旅好き、ANAファンの方々に毎年大人気のカレンダー。2025年版はセット販売やポケットダイアリーも含めると23種あり、そのうち、航空写真家のルーク・オザワ氏が撮影を手がけている「飛行機カレンダー」は11種に上ります。
ここでは28年もの長期に渡り撮影を担当しているルーク氏に、ファンを魅了させてやまない情景写真の真髄、そして2025年版カレンダーの中から心に残る写真や撮影時のエピソードを伺います。
ルーク・オザワ氏プロフィール
航空写真の第一人者であり、航空写真の神様とも称される写真家。1973年、中学時代に羽田から函館へのANA機での搭乗体験に感動し、以来無類の飛行機好きとして機体の撮影はもとよりタグやチケット類などの収集に没頭。大学卒業後、企業に勤める傍らで飛行機撮影の腕を磨き、スタジオカメラマンを経て、1990年に長崎でのコンコルドの撮影をはずみに1991年に独立。1992年からANAの広報にかかわるようになり、カレンダーの撮影は1998年から担当している。これまでの搭乗回数は(インタビュー時点で)2,330本。初めて飛行機に搭乗したその日から、一回ごとに丁寧にノートに記録している。
唯一無二の「ルークショット」が彩る航空写真の世界
「たくさんの条件がそろって初めて一枚の絵(写真)が完成する」
気象、大地、建造物、そして四季のすべてを舞台に、飛行機とシンクロさせて完成するその技法は「ルークショット」と呼ばれ、独自の世界観を創り出しています。1982年の成田で夕景をバックにした飛行機の叙情的なカットを撮影したことがルークショットの始まりであり、1998年からこれまで27年もの間ANAのカレンダーを担当されてきました。写っているのは飛行機だけではなく時代そのものであり、飛行機を愛してやまないルーク氏自身の心の内です。
一枚のルークショットには飛行機への愛情、途方もない時間、ときには奇跡のような偶然が反映されています。飛行機写真のためなら天気図もスクラップすれば、足場が悪い場所の草刈りもいとわない。これほどまでに情熱を傾けられた写真のカレンダーに、魂がこもらないはずがありません。
また、ルーク氏は現場でレンズをのぞき、その場で情景を作りあげます。撮影した後で調整することが当たり前になった今でも、画像の補正やトリミングをすることはしないそうで、すべてが現場勝負。その完璧な状況に巡り合わなければ、シャッターを切ることはないそうです。
ANA機を撮影する魅力とは
「ANAの機体の色ってやっぱり空に似合う。40年撮っていて全く古さを感じない」
ANAの機体のペイントは非常に美しく、あせているものがない。それは青空にとてもよくなじみ、写真の完成度に如実に反映されるそうです。またANAが国内線にもBOEING 777やBOEING 787といった大型機を35機も導入しているというのは珍しいケースで、各地に赴くルーク氏にとって撮りがいのある絵になるのです。現在は状況に合わせてどの機体がどこに飛ぶか、日替わりで変わっていくので、常に予約サイトを見て確認。ネット以前の時代は毎月出される時刻表を見ながら、「ちょうどこの機体が日没の時間に撮れるな」、など考えたりすることが楽しかったそうです。
2025年版のカレンダーについて
「去年よりいいものを撮りたい。毎回一年がかりで取り組むライフワークです」
よりよい写真を撮るために何度でも空港に出かけるルーク氏。長年の経験でベストな時期がだんだんわかってくるものの、実際は行ってみないとわかりません。急に天候や気温が変わることもあり、特に花の咲く春はなかなか予想通りにいかないそうです。しかし光と色がルークショットの重要な要素。時間をかけて待つのはこだわりのひとつですが、それでもベストな情景にならなかった場合、潔く仕切り直します。また飛行機の機種はどんどん新しくなるため、今回は新しく導入されたBOEING 787-10型機の姿を入れないわけにはいかず、カレンダー写真の納期ギリギリまで撮影に挑んだそうです。
ルーク氏に2025年版のカレンダー4種について、撮影時の逸話を語っていただきました。
まずは、美しい日本の風景の中のANA機をとらえた、毎年最も人気のある壁掛けカレンダー「2025年版 ANA フライトカレンダー」から2枚を選んでいただきました。
「これは富山空港です。立山連峰の西側に空港があり、午前中は山や飛行機に光が当たりません。お昼を過ぎないと飛行機も雪山も表現できないし、しかも立山がきれいに見えるのはワンシーズンに3日か4日くらい。午後、日が沈むまでの間に空港に降りてくるANA便が2便しかない中での奇跡の一枚です。地元の方もそんなに撮れないような、なかなかに手強い風景でした」
「桜の咲く時期はなかなか読めないので毎年振り回されます。しかも、桜の満開と晴れが一致するとも限りません。桜と飛行機と天候、この3つがパーフェクトな日は毎年1日しかない感覚です。全体の配置は出たとこ勝負で、風によっても離陸の位置が変わってしまいますが、毎年その1日を逃さないようにしています」
続いて、幅103cmの特大サイズで、まるでポスターのようにインテリアとして室内で楽しめる、大迫力のカレンダー「ANA スーパーフライトカレンダー」から。
「表紙のBOEING 787-10型機は羽田からのテイクオフです。大判のカレンダーなのでわかりやすいと思いますが、見てください。エンジンの突起部(エンジンコーン)が青いですね。ここは、時間が経つと色が茶色に変化してしまう部分なのですが、就航開始直後に撮影したため、まだ機体が新しくこの色なのです。まさにこれは、その時にしか撮れないカットです」
そして、航空ファン垂ぜん、コックピット画像とその機体が上下に配された「壁掛 ANA THE COCKPIT カレンダー」から。
「コックピットの写真の多くは、飛行機が到着してから次に出るまでの間に撮らせてもらっているので、撮影時間は3〜5分くらいです。1日の間に最高で11機分のコックピットを撮影したこともあります。6月のコックピットをよく見ると、飲みかけのコーヒーや手袋が置きっ放しになっているのが、撮影の慌ただしさを物語っています。飛行中の写真もありますが、絶景です、絶景」
そして最後は、世界最大の旅客機、エアバスA380の特別塗装機「壁掛 ANA A380 FLYING HONU カレンダー」から。
「オレンジのホヌは一番人気ですね、空港ではみんな撮っています。あの色が青空に映えるのです。12月のこの写真は地上から撮ったもので、ホヌが来てくれればラッキー…という予想はしていましたが、偶然です」
人々の心に届き続ける、カレンダーという存在
さまざまなものがデジタル化していく中で、カレンダーが担うものとは何かをルーク氏に尋ねました。
「部屋の壁やデスクの上にあるカレンダーは、何気なく目に入りこむものです。1カ月間同じ絵柄なので、色目や光が美しく、かつ季節感のあるセレクトを毎年心がけています。写真の部分を額に入れて飾ってくださっているというお話も耳にしますので、カレンダーの飛行機を見て、乗りたくなるような気持ちになってくれればうれしいですね。また近い将来パイロット不足が懸念されていますので、このカレンダーを見てパイロット志望者が増えてくれるとうれしい限りです。そしていつの日か、カレンダーを見てANAパイロットになりました、なんて声をかけてくれたら写真家冥利に尽きます。これからも皆様の心に届くような写真を撮っていきたいと思っています」
世界中の美しい景色をおさめた「風景カレンダー」も人気
ルーク氏が手掛けるカレンダー以外にも、8種の2025年版ANAカレンダーがリリースされています。なかでも「Welcome Aboardカレンダー」と「ANA グラフィックギャラリーカレンダー」の2種類は、もう30年以上も続いているロングセラーです。
今年は「壁掛 ANAグラフィックギャラリーカレンダー In The World」が新登場、国際線新規就航地のイスタンブール(トルコ)、ストックホルム(スウェーデン)、ミラノに就航するイタリアはトロペアが収録されています。また昨年から始まった、ハワイのリピーター向け「壁掛 ANA グラフィックギャラリーカレンダーハワイ」も大好評。ハワイ好きのANAグループスタッフが写真を厳選して制作しています。
同じく今年から、日本の風景を大切にしているお客様のために、グラフィックギャラリーカレンダーの北海道、日本編が新しく発売されるそうなので、ぜひチェックしてみてください。
- 記載の内容は2024年8月現在の情報です。変更となる場合があるのでご注意ください。
カメラマン:相馬ミナ