大洲を知りつくした案内人と街を歩くツアー
伊予の小京都とも呼ばれる愛媛県大洲市の城下町。今回、家族で楽しむワーケーションの拠点として選んだ「NIPPONIA HOTEL 大洲 城下町」は、歴史的建造物に暮らすように滞在しながら土地の自然や食、文化、歴史を味わえる分散型ホテルです。そんな「NIPPONIA HOTEL 大洲 城下町」での滞在を一層充実させてくれそうな体験プログラムを見つけたので、事前に予約してみました。
「おおず歴史華回廊」と名付けられたこの体験プログラムは、大洲城や臥龍山荘(がりゅうさんそう)といった名勝旧跡から路地裏の小さなお店まで、大洲の街の歴史を知りつくした認定案内人と一緒に歩きながら街を巡るツアーです。曜日や季節限定のツアーも含めて全部で11コースある中から、好みのコースを選ぶことができます。
今回は、1時間30分で臥龍山荘と大洲の街並を満喫できる新コース「肱南篇 臥龍山荘 豪商と名工の足跡をたどる旅」を選択。「NIPPONIA HOTEL 大洲 城下町」のフロントOKI棟に近い「大洲まちの駅 あさもや」で、私たちの案内人を務めてくれるキタ・マネジメントの新田伝弥さんと合流したら、早速街歩きツアーのスタートです。
臥龍山荘は謎解きエンターテインメント
まずは、大洲を代表する名勝の臥龍山荘へ。この山荘は、大洲出身の貿易商である河内寅次郎が余生を故郷で過ごすため、大洲城主の下屋敷だったところを買い取り、明治30年から10年の歳月をかけて築いたものだそうです。約3,000坪の敷地面積を誇る山荘の一部は国の重要文化財に指定されているほか、2011年5月にはミシュラン・グリーンガイド・ジャポンの一つ星にも選定されています。
概要だけでも、なんだか凄そうな雰囲気ですね。そうした予備知識がなくても山荘の敷地に足を踏み入れれば、肱川に臨む景観や歴史の重みが伝わってくる建物の佇まいに、少なからず圧倒されるはずです。見て、感じるだけでも十分訪れる価値はありますが、案内人の解説が加わると、名勝見学がいきなり謎解きエンターテインメントに様変わりするのが臥龍山荘の魅力です。
たとえば、山荘の門をくぐったところにある石積みは、3つの異なる積み方で肱川の流れに舟を浮かべて月を眺める場所であることが表現されていたり、月に見立てられた丸窓は座る位置や時間帯で満ち欠けしているように見えたり、部屋の四方にある欄間の透かし彫りの図柄で四季が表現されていたり。見過ごしがちな細部に、茶の湯や建築への深い造詣を持つ河内寅次郎の遊び心が、暗号のように臥龍山荘の随所に散りばめられているのです。
一つ一つそれらの解説を聞きながら山荘を歩くと、まるで100年の時を越えて河内寅次郎と対話しているような気になります。こんな楽しみ方ができるのも、案内人というファシリテーターがいてくれたおかげです。しかも、臥龍山荘の用途目的や細部に込められた意図、建築費用といった詳細のわかるような記録がほとんど残っていないため、大学教授や茶の湯の権威、建築家たちが現在進行形で解明を進めているというのも、ますますロマンを感じます。
臥龍山荘での余韻を引きずりながら、街歩きツアーは続きます。ここでも案内人のファシリテーションが光ります。大洲の歴史に関する解説はもちろん、テレビドラマのロケ地として使われた際の撮影エピソードなど、細い路地や改装中の民家、郵便ポストといった見過ごしがちなシーンをきっかけに、興味深い話が次々と繰り出されて飽きません。途中、大洲発祥の和菓子である「志ぐれ」を買ったりしながらの街歩きツアーは、内容充実の1時間30分でした。