見下ろす景色は上空16,000フィートならではの解像度
いつもの旅よりも心躍るのはあの飛行機に乗るからでしょうか。早朝の伊丹空港(兵庫県)にはプロペラを回して飛ぶターボプロップ機DHC8-Q400(通称Q4)が待機していました。見慣れぬ機体を眺めながら、タラップを使い機内へ。しばらくすると、エンジン音が響き、「乗り物に乗っているな……」と改めて感じます。飛行機なのだから「乗り物はあたり前」と思うかもしれません。しかし、プロペラ音や振動が生み出す機体の雰囲気といえばいいでしょうか。一般のジェット機にはない親密さをQ4から感じるのです。
離陸した飛行機の窓からは六甲山系が見えました。山には雲がかかり住宅街に流れ込んでいく様子が目の前に広がります。まもなくして神戸港の船の行き来、淡路海峡大橋、淡路島が過ぎていきます。四国に入ると東西に横たわる吉野川、そして深い青の四万十川、ゆったりとしたフォルムの足摺岬(あしずりみさき)と続きます。高度が低く肉眼で家一軒一軒が見えるほど。これがプロペラ機Q4の醍醐味です。飛行機の種類や気象条件にもよりますが、一般のジェット機の巡航高度およそ10,000m以上に対し、Q4の高度は16,000フィート(約5,000m)というアナウンスが機長からありました。つまりこの機体はジェット機の半分程度の高さを航行しているのです(ちなみに、Q4の最大運用高度は7,500m)。さらに翼が胴体上部に取り付けられているため、視界が遮られることなく空からの風景を楽しむことができます。
人々の営みや地形の変化を楽しんでいると、窓の下が厚い雲で覆われてしまいました。「そろそろ九州かな」と、地上に思いを巡らせていると、いつの間にか雲が晴れ、雄大な霧島山系が見えてきました。鹿児島上空に到着です。風景を楽しんでいたからでしょう。あっという間のフライトでした。そういえば、地上では大きく聞こえたエンジン音ですが、途中から全く気になりませんでした。Q4の「Q」は「Quiet(静か)」という意味なのだそうです。機体から音波を出し、機内に入ってくるプロペラによる騒音や振動を小さくしているのだとか。アナログな雰囲気を醸し出すQ4でしたが、実はハイテクなプロペラ機だったのです。
普段の旅に新しい視点を与えてくれるプロペラ機の旅。そのDHC8-Q400(通称Q4)の特徴や航路、機内で楽しめるコンテンツに関する情報はこちらのウェブサイトでご確認いただけます。
お馴染みの愛くるしい表情はおいしさの秘訣
鹿児島の人にソウルフードはなにかと訊ねたら、いくつもの食べ物や飲み物が挙がることでしょう。なかでも老若男女に人気があるのが「白熊」だそうです。もちろん、ホッキョクグマではありません。「白熊」とは練乳をかけた氷菓のこと。
鹿児島空港から市内に出て、まず向かったのは鹿児島を代表する繁華街・天文館。天文館にある創業75年を誇る老舗のレストラン「天文館むじゃき」に、どんどん人が吸い込まれていきます。みなさんのお目当てはもちろん「白熊」。これは期待が高まります。オーダーを済ませると、まもなくして可愛らしい「白熊」が現れました。ドライフルーツなどで表情が作られ、スプーンを入れるのがはばかれます。たっぷりと練乳がかけられていますが氷の甘さはほどよく、この食べやすさが老若男女に長く愛される理由の一つなのかなと感じました。周りを観察すると2人で1つを食べている老夫婦がいました(レギュラーサイズは大きいため、2人で食べてもいいそうです)。「白熊」を地元の人たちに囲まれて食べていると、なんだか鹿児島ローカルになった気分でした。
目的地を決めないドライブだからこそ出会える景色
レンタカーで国道226号線を南下し指宿(いぶすき)方面へ。指宿は薩摩半島南東端の市。温泉地として知られ、付近ではおいしい魚が食べられるとのことでした(鹿児島はどこでもおいしいものが食べられるのですが)。道の駅で地の魚をふんだんに使ったランチを食べた後、摺ヶ浜(すりがはま)を散策していると、砂浜に白い煙が見えました。地中からの湯気のようでした。砂浜に手を当てると温かい。干潮時、場所によっては85度の温泉が出ているそうで、注意を促す看板が立っています。砂浜の一角には「砂蒸し風呂」のコーナーが。温水の混じった砂を身体に乗せ汗をかくという、いわば大自然のサウナです。活火山とともに生きる鹿児島には自然との接点がいっぱいです。
鹿児島市内に戻り、本日の宿である「城山ホテル鹿児島」へ。エントランスから振り返ると街の夜景が広がっていました。そして、遠くには桜島。明日は桜島に行ってみようと思いました。