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    掲載日:2023.02.13

    東京ホテルステイを楽しむ:伝統と革新が生むここにしかない体験

    アットホームなサービスに浸る。文豪たちが愛した「山の上ホテル」

    都心の丘の上に現れる象徴的な姿。昼のテクスチャー、夜のシルエット両方に気品が漂う

    実業家の吉田俊男により1954年に創業、当時から「文化人のホテル」と広告を打つなど他のホテルとは違うコンセプトでアピールしていた「山の上ホテル」。現在の客室数は35。きめ細かくアットホームなサービスに惚れ込んだ、川端康成、三島由紀夫、池波正太郎など日本を代表する文豪の定宿であり、数多くの作家たちが原稿を書くために利用しました。今なお多くの文化人に愛され、部屋の机に向かってみれば、自分でも驚くような名作を書ける……ような気分になれるでしょう。

    ロビーフロアには作家の描いた個性的な絵画などが飾られている

    修繕の際にはW.M.ヴォーリス設計の竣工当時の図面を基に施工。手間のかかる仕上げには専門の職人を探し出して対応するほどのこだわりが、隅々に行き渡る居心地の良さを演出しています。ロビーフロアには手入れの行き届いたインテリアが整然と並び、座る場所によって印象が変わります。細かなディテールを愛でつつ館内を見て回るのは至福の時です。
    ホテル内には客室数に対しては多いともいえる6軒のレストランがあり、なるほどここでなら進んで「缶詰め」になりたいと思ってしまいます。

    ヨーロッパのアールデコと、昭和レトロが絶妙に入り混じる唯一無二のデザイン

    おだやかに流れる時間を感じながら、自分に向き合う

    箱庭付きの部屋は都会のオアシス。近隣の公園から野鳥もやってくる

    ぜひ滞在してもらいたいのが、箱庭付きスイートの403号室。小さな日本庭園のような趣があり、樹木からは豊かな季節が感じられます。都心にありながら客室はとても静か。ロビーと同じように、各地で集められたと思しき工芸品の数々が棚に鎮座しています。一人であれば長編小説をゆっくり読んだり、美しい画集を心ゆくまで堪能したり。二人ならば時間を気にせず語らいながらボードゲームはどうでしょうか。外に出たくなくなったら、ルームサービスの食事もいいかもしれません。

    時間がゆっくり流れているような客室。手紙を書くなど、普段できないこともしてみたい

    若さあふれる雰囲気でいっぱいの学生街にあるホテル、合理的ではなく行き届いた親切に感動……と手紙にしたためたのは「ムーミン」の作者トーベ・ヤンソン。かわいいムーミンのイラストとともに記されていたそうです。
    サービスとともに山の上ホテルたらしめているもの、それは全館に点在する手書きの文字ではないでしょうか。ロゴやメニューなどにはすべて画家の遠峰健による味のある手書き文字が使われ、見つけるたびに心が躍ります。

    ここにも遠峰健の手書き文字が。これらの一つ一つがホテルらしさを作りあげている

    小さなホテルがこだわり続ける、ここだけの美味しさ

    「コーヒーパーラーヒルトップ」ではぜひ「伝統のババロア」を。受け継がれる優しい味

    かつては日本料理の一部であった天ぷら。揚げたてを一品ずつ提供するスタイルで、日本料理の一つのジャンルにまで昇華させたのが、当時、山の上ホテルの和食料理長だった近藤文夫(現 てんぷら近藤)と言われています。箱庭付きの客室で目から季節感を楽しんだ後は、舌でも季節を堪能するため「てんぷらと和食 山の上」へ。「コース料理」のほか、「お好み」でも食べられるので、カウンターで相談しながら、揚げてもらう「次の一手」を考えるのがとても楽しい。魔法のようにあっという間に目の前に現れるスピード感は、天ぷらならではです。

    季節を食べる。店内にはワインセラーもあり、天ぷらに合うワインを選んでもらえる

    全9席、静かで暖かな秘密の蔵の中のようなバー「ノンノン」。1杯目にはオリジナルカクテルの「ザ・ヒルトップ」を。ウォッカベースにリンゴとオレンジのリキュールで、カジュアルな風味がバーのハードルを下げてくれます。この時の収穫は香り高い台湾のウイスキー。目の前で削り出される氷はさながら芸術品のようで、グラスの中でウイスキーに溶けていく姿がまた美しい。博識のバーテンダーの話にいつの間にか杯を重ね、夜は静かに更けていきます。

    部屋はすぐそこ、という安心感はホテルならでは。初めての味にもチャレンジしやすい

    神保町の古本街をパトロール。お気に入りの1冊を探す

    多くの店が本に日の当たらない北側に面している。永い年月を経た紙の香りが町に漂う

    山の上ホテルからは徒歩で5分ほど、地下鉄神保町駅周辺には数百軒もの書店・古書店がひしめき、数百万冊の書籍が見つけてくれる人との出会いを静かに待っています。ここは長年探していた本に出会う可能性もあれば、まったく知らなかったジャンルの本を発掘できるかもしれない、計り知れない可能性を秘めている知の海なのです。

    カフェや歴史ある純喫茶も多い。しかし今日はホテルに持ち帰ってゆっくり読みたい

    神保町に美味しいカレー屋が多いことには諸説あります。学生が多いためメニューがリーズナブル、あるいは片手で本を読みつつも、一方の手でスプーンを使えるから。さて、ふと気になった大判のアートブックを気の向くままに買ってみました。ホテルの机に広げ、誰にも邪魔されず描かれた世界に没入するひとときは何ものにも代えられません。本が重くても大丈夫。不要なものとともにホテルから宅配便で送れば身軽になるから、帰りがけにもう一度、あの海に戻ることができます。

    いにしえの設計に想いを馳せるなら「東京ステーションホテル」もおすすめ

    創建時のイメージそのままの美しい外観に思わず見惚れる(写真提供:東京ステーションホテル)

    「東京ステーションホテル」は1915年創業、2012年に再開業。国の重要文化財の東京駅丸の内駅舎にある名門ホテルです。ヨーロピアンクラッシックな客室は、窓枠ひとつをとっても見応えあり。山の上ホテルと同じく川端康成や松本清張などの作家に愛され、東京駅そのものが物語のモチーフになることもありました。駅内外にある数え切れないほどのショップやレストランをまるごと味わい尽くせる贅沢な立地。皇居周辺のランナー需要を見込んだ、食事とスパのセットを打ち出すなど、新機軸の企画も多数生まれています。

    日本のホテル旅に求めるのは物語

    夕焼けが美しいホテルニューオータニ客室からの眺め。旅の第二幕である夜はこれから

    長い歴史や文化があるからこそ、次につながるものが次々と生まれ、その変化から目が離せない東京の老舗ホテル。ホテルの中や周辺をゆっくり歩くことで、積み上げられた時間がじんわりと染み込んでくるのがわかります。ホテルを作り上げた人々の途方もない思いと、さらにその先の未来を感じられる滞在こそが、何より贅沢なことであると思わずにはいられません。次の旅の行き先、もう決まりましたか?

    ホテルニューオータニ

    The Okura Tokyo(オークラ東京)

    山の上ホテル

    • 住所:東京都千代田区神田駿河台1-1
    • ウェブサイト:山の上ホテル

    東京ステーションホテル

    • 記載の内容は2022年12月現在の情報です。変更となる場合があるのでご注意ください。
    ライター:森井ユカ

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