ローカル旅で見つける、沖縄のあたらしい魅力
沖縄とひとくちに言っても、人口は145万人を超え、離島もすべて含めるとその面積は東京よりも広く、それだけ多種多様な人々、独特の文化・歴史、自然を持っています。沖縄本島だけをみても世界自然遺産に指定された本島北部の「やんばる」や、琉球王国の歴史息づく那覇市の「首里」、本島中部には「アメリカンヴィレッジ」をはじめ異国情緒があふれる「北谷(ちゃたん)」など、豊かな個性を持った地域が点在しています。そのひとつひとつを見つめてみると、いままで知らなかった沖縄の魅力が見えてきます。
そんな地域にはいつも、その地域を魅力的に盛り上げるキーパーソンの存在が。お店を営んでいたり、その地域に暮らしているからこそ見える魅力を、紹介してもらいましょう。あなたの好きな沖縄の"地域"はどこですか?あたらしい魅力に出会える"沖縄ローカル旅"に出かけてみませんか?
やさしくてあたたかい、自然と人にあふれる「やんばる」
沖縄本島北部に広がる「やんばる」。「山原」という文字どおり、この地域特有の希少な動植物がいたり、亜熱帯の豊かな自然が広がるエリアです。那覇空港からは車で沖縄自動車道をひたすら北上していくと、1時間ほどでやんばるの玄関口、「許田IC」に着くことができます。
「自然が豊かなところです。森もあって海もあります。森と海が美しいところは世界にたくさんありますが、沖縄ならではの亜熱帯の植物の力強さや、北へ行くほど美しくなる海の青さは、やんばるだけの魅力だと思います」と、その魅力を語ってくれたのは、今帰仁村(なきじんそん)で、毎月23日にだけオープンする古民家のちいさな書店「はなうた書房」を営む勅使川原寛子さん。はなうた書房には、日本各地のちいさな出版社がこだわりを持って作った、贈り物にしたくなるような本が静かに並びます。
「そして、人のあたたかさと強さが感じられるところです。やんばるに暮らす方々は自分でビジネスを作り出している方が多く、それぞれ自分にできること、やるべきことをよく理解しているように思います。みなさん、この土地にいるからこそできることを、上手く見つけ出しているのが素晴らしいです」と続けます。
おすすめしてくれたのはキャッサバ農家が営み、タピオカ粉で焼いた生地のサンドイッチなどが食べられるカフェ「LIMAタピオカサンド」。「家族経営のあたたかい雰囲気でやんばる産のバナナやシークァーサーを使った自家製ドリンクもおいしいです」。続いて琉球藍の栽培から染色まで手がける藍染作家の工房兼ギャラリー「亜人 ギャラリー」、そして「家の価値を次の世代につなげることをテーマに、やんばるの日常を感じながら滞在できる」という宿「田港イン」を紹介してくれました。
「自分の足で立っている方が多いので、そういう方は優しくてあたたかく、お互いの距離の取り方も絶妙です。そういう面でも暮らしやすさにつながっていると思います」。
はなうた書房
- 沖縄県国頭郡今帰仁村玉城13
- Instagram:はなうた書房
田港イン
- 沖縄県国頭郡今帰仁村字仲宗根277
- ウェブサイト:田港イン
個性豊かな街が点在する本島中部を代表する「コザ」
沖縄本島中部の特徴を挙げるなら、個性豊かな街が点在していること。例えば読谷村(よみたんそん)には「やちむんの里」があって、伝統工芸のひとつ「やちむん(焼き物、陶器)」の窯元が軒を連ねています。北谷町(ちゃたんちょう)には、海岸沿いに「アメリカンヴィレッジ」というショッピング&グルメエリアがあり、その名のとおり、アメリカ西海岸を思わせるような異国情緒がたっぷり。
そして、県内で那覇市に次いで人口の多い沖縄市は、沖縄とアメリカの文化が混じり合った「チャンプルー文化」の街。その中心的な存在が「コザ」と呼ばれるエリアです。那覇市内からはバスで行くこともできますが(約1時間)、レンタカーなら沖縄自動車道の沖縄南ICの利用が便利です。
週末の夜には米軍基地の兵隊たちでにぎわうゲート通り。飲食店やライブハウスが軒を連ね、米軍統治下の雰囲気を残すこの場所に、ハムやソーセージなど食肉加工品であるシャルキュトリーの専門店「TESIO」があります。店内にはドイツ伝統製法で自家製したハム・ソーセージが並ぶだけでなく、ドリンクショップやチーズを扱うイタリア食材店、HOTDOGスタンドが入っていてにぎやか。
「中心市街地に走る目抜き通りに、米軍基地の玄関を構えるコザは、戦後から半世紀に渡ってアメリカ文化とともに歩んできました。街のあちこちに施されるグラフィティやネオンサイン。ROCKが響くライブハウス、世界各地の料理が食べられるさまざまなレストラン。異文化をチャンプルー(混ぜる)してきた街が醸す、沖縄のどこにもない、個性的でカラフルな在り様こそがコザの魅力だと感じています」と、オーナーの嶺井大地さん。
そんな個性あふれる街の中から、手作り、焼きたてが楽しめるシナモンロールの専門店で、地元客だけでなく、基地で暮らすアメリカ人も押し寄せる人気のお店「BROWN ROLL」や、迫力のグラフィティやネオンが彩る店内で食べる、BBQスタイルで調理するジャークチキンやオックステールの煮込みが絶品というカフェ「Blue Cafe GATE2」などを紹介してくれました。他の街にはない独特の個性が楽しめる「コザ」を、ぜひ訪ねてみてくださいね。
TESIO
- 沖縄県沖縄市中央1-10-3
- ウェブサイト:TESIO
BROWN ROLL
- 沖縄県沖縄市中央1-31-15
- ウェブサイト:BROWN ROLL
美味しいお店もたくさん。沖縄の魅力が凝縮された那覇の街
那覇空港からゆいレールに乗って6駅、県庁前駅で下車するとすぐにあるのが「国際通り」。終戦後、沖縄県内でいち早く復興を遂げたこと、その長さがほぼ1マイルであることから、「奇跡の1マイル」とも呼ばれていて、さまざまな飲食店や土産物店などが立ち並び、まさに沖縄観光の「入り口」といった存在。そんな「国際通り」があり、県庁所在地でもある那覇市はまさに沖縄の中心。国際通りだけでなく、世界文化遺産「琉球王国のグスク及び関連遺産群」のひとつである首里城やその城下町、泡盛の酒造や紅型工房、そして約300年前、琉球王府が各地に点在していた陶窯をこの地に集めて以来、焼き物の街として知られる「壺屋やちむん通り」など、沖縄、琉球の文化や歴史を感じられるスポットが数多く点在しています。
「国際通りの裏の裏。昔ながらのスナックがひしめき、桜坂という呼称で地元から愛されるディープスポットの真ん中で、フルオープンエアの珈琲屋台を営んでいます。緑の木々や季節ごとに変わる木漏れ日、日だまりを愛でながら、定番の深煎りアイスコーヒーや、珈琲が苦手な方にも楽しんでもらえるアレンジ珈琲などをお楽しみになれます」と自己紹介してくれたのは、「珈琲屋台ひばり屋」を営む辻 佐知子さん。
「国際通り近辺は大通りからちょっと入ると、昔の建物が残っていたり、昔ながらの商売が残っているところがおもしろいなーと思っています。牧志や松尾エリアは道が複雑ですぐ迷子になりそうだけれどそれも良し。私は食い道楽なので徒歩であっちこっち食べ歩けるのも楽しいです」という辻さんが最初に教えてくれたのはイタリア酒場「ALCOLISTA」。何を頼んでもおいしいおすすめの店だそうです。その他、「子供から大人まで色んな世代の方が集まっていて理想的な公園だと思う」と紹介してくれたのがパラダイス通り近くにある「緑ヶ丘公園」。アート&クラフトのギャラリーショップ「RENEMIA」もおすすめしてくれました。レンタカーがなくてもしっかり楽しめる那覇の街、ぜひ散策してみてください。
珈琲屋台ひばり屋
- 沖縄県那覇市牧志3-9-26
RENEMIA
- 沖縄県那覇市牧志2-7-15
- ウェブサイト:RENEMIA
那覇空港からのアクセス抜群、本島南部を気軽に楽しむ
沖縄本島最南端に位置するのは「糸満市」。うみんちゅ(漁師)の街として知られ、沖縄戦終戦の地でもあり平和記念資料館も設置されています。織物の街・南風原町は沖縄の伝統工芸のひとつである琉球絣の産地として知られ、工房が集まる「かすりロード」は観光客にも人気。南城市には世界遺産のひとつ「斎場御嶽(せーふぁうたき)」をはじめとした、沖縄のパワースポットが点在。そんな本島南部は那覇空港からのアクセスもよく、例えば沖縄旅行の最終日、飛行機の搭乗前にぐるっと周遊、なんて楽しみかたができるのもこのエリアの魅力です。
アウトレットモール「あしびなー」や、DMMかりゆし水族館のあるショッピングモール「イーアス沖縄豊崎」、飲食店や土産物店が立ち並ぶリゾート施設「瀬長島ウミカジテラス」など、観光地としても発展著しい豊見城市(とみぐすくし)。「あしびなー」のすぐそば、閑静な住宅街の中にある「島の装い。STORE」は「沖縄のものづくりで暮らしを装う日々の店」をコンセプトに、独自のセレクトでやちむんや琉球ガラスなどのクラフト、雑貨、食品などが並ぶセレクトショップ。「個性的で魅力的な沖縄のものづくりにぜひ触れてみてください。お土産やギフトにもぴったりですよ」と、店長の小嶺萌々子さん。「アクセサリー作家 souのアトリエ・ショップも、作品だけでなく空間も素敵なのでぜひ立ち寄ってみてくださいね」。
「島の装い。STORE」からもすぐそば、ヤシ並木も美しい「豊崎美らSUNビーチ」は、夕陽スポットとしてもおすすめ。「先日も家族と行ったばかりなんです」と紹介してくれたのは、約10店舗の魚屋さんが集まり、刺身や寿司、その場で楽しめる海鮮などがある「糸満漁業協同組合 お魚センター」(糸満市)。旅の始まりにも、終わりにも、空港からアクセス抜群でさまざまな魅力を味わえる本島南部。ぜひ気軽に周遊してみてくださいね。
島の装い。STORE
- 沖縄県豊見城市豊崎1-329
- ウェブサイト:島の装い。STORE
地域ごとの個性を知れば、沖縄旅はもっと楽しくなる
さて、ご紹介してきた"沖縄ローカル旅"はいかがでしたか?今回は大きく4つのエリアに分けてご紹介しましたが、細かくみていけば、記事では紹介しきれなかった魅力あふれる地域がまだまだたくさんあります。行程に合わせてエリアを絞ってみたり、気分によって行き先を検討してみたり。ひとつ行きたい場所を見つけたら、その周辺にも目を向けてみるとあたらしい発見があるかもしれません。地域ごとの個性を知れば、沖縄旅はもっと楽しくなる。ぜひ、あなたらしい、沖縄旅のプランを見つけてみてくださいね。
- 記載の内容は2024年1月現在の情報です。変更となる場合があるのでご注意ください。