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    掲載日:2024.03.28

    「春の九州」おすすめ5エリア:五感を満たす、徒歩の旅

    うららかな春は、散策やハイキングにぴったりの季節。九州の5つのエリアから、ゆっくり歩いて楽しめる旅のプランを紹介します。自分の足で回るからこそ、味わえる風景が待っている場所ばかり。歩いて五感が刺激されれば、その土地の思い出がもっと色濃く残る旅になるはずです。

    長崎県長崎市:幕末、明治の歴史を巡る坂歩き

    「さるく」という言葉を聞いたことはありますか?長崎の方言で「ぶらぶら歩く」という意味。そんな言葉が生まれるほど長崎が「さるく」街なのは、その地形に秘密があります。中心街は平地が少なく、すり鉢状。つまりは、狭い坂道や石段が多く、車や自転車よりも歩いた方が便利な街というわけです。

    すこし歩けば坂にぶつかり、そのたびに上ったり下ったり。さぞかし疲れるだろうと思うかもしれませんが、そこはご安心を。坂の両脇には歴史ある建物や古くからある商店が立ち並び、退屈することもなければ休憩がてら楽しめる場所がたくさんあるのです。

    歴史ある建物に囲まれた狭い坂道は旅情たっぷり

    そもそも、長崎は鎖国をしていた江戸時代に海外との唯一の窓口となっていた土地。日本文化に西洋や中国の文化が混ざり合ってできた「和華蘭文化」が今もなお色濃く残り、私たちを楽しませてくれます。

    東山手は江戸時代末期、初めての外国人居留地だった場所。各国の領事館など、今でも古い様式の建築物が数多く残っています。ここにある坂といえば「オランダ坂」。石畳が美しく、両脇には石垣や赤れんがの塀が。坂の入り口にあるのは淡いブルーの外観が目を引く「東山手甲十三番館」。上った先には素朴で愛らしい「東山手洋風住宅群」が密集して建っているかと思えば、日本で唯一の本格的中国様式の霊廟「長崎孔子廟」の黄色い瓦屋根も見えてきて、まさに「和華蘭文化」そのものを感じることができます。

    オランダ坂。正面に見えるのが「東山手甲十三番館」

    一方、南山手は主に住宅地として親しまれたエリア。「ドンドン坂」には今でも現役で使われているという洋館があるほどです。風情ある石畳を歩いていると、9棟の伝統的建造物が集まる「グラバー園」やせん塔がそびえるゴシック風建築の「大浦天主堂」が見えてきます。さらに、上った先の眼下には長崎の街並みが広がり、造船所の巨大なクレーンの向こうには青く広がる長崎湾。ちょっと息が切れたとしても、この景色を目にすれば上ってよかったと思えるはず。

    グラバー園と旧グラバー住宅。長崎湾を一望できる

    東山手と南山手は歩いていける距離。どちらのエリアも細い路地が多く、脇道にそれていくのもまた一興。さっきまで見上げていた洋館の屋根を見下ろしたり、ふとした拍子に古い建築物の裏手に出たりと、坂を「さるく」からこその楽しみがあります。数ある坂を制覇するもよし、和洋折衷の歴史ある建物を巡るもよし。心地よく疲れて坂を下った先には、長崎名物ちゃんぽんやカステラも待っています。

    東山手や南山手エリアまでのアクセス

    長崎空港からリムジンバスで長崎駅前まで約45分。長崎駅から市電で約10分。

    グラバー園

    • 住所:長崎県長崎市南山手町8-1
    • ウェブサイト:グラバー園

    佐賀県有田市:磁器作りが風景になった街

    佐賀県の西の端。ここ有田は、焼き物の街として知られています。街に入って歩いてみれば、そこかしこに窯元の煙突がそびえ立ち、道端に陶器のかけらが埋まっていたり、トンバイ塀と呼ばれる独特の景色があったり。陶芸が暮らしのすぐそばにあることが伝わってきます。

    それもそのはず。有田は日本で初めて磁器が作られ、焼き物のために生まれたといわれている街。400年以上にわたる歴史を表しているひとつが、空に向かって伸びているたくさんのれんが造りの煙突。今ではガスや電気を使っていますが、昔は薪をくべて器を焼いていたからこその景観です。つたが絡んだり、先端から雑草が生えていたりと、すでに使われていないことがわかりますが、それでもそこには必ず窯元があるという印なのです。

    磁器作りの街ならではの風景が広がる

    そして、煙突の下にあるのが登り窯。10数年使ったら壊して新たに作り直すのですが、その際に出る耐火れんがの廃材や窯道具、陶片などを固めて作った塀があちこちにあります。「トンバイ塀」と呼ばれるもので、1830年に作られたという非常に古い塀もあれば、歩いているうちに古い住宅の壁の一部が同じように作られているのを見つけることもできます。

    「トンバイ塀」をよく見るとさまざまな磁器のかけらを見つけることも

    そんな塀を眺めつつ、皿山通りや碗坂通りの商店街をぶらぶらと歩いてみましょう。春や秋には陶器市が開催されるだけあって器を販売する店が多いのはもちろんですが、よく見ると作陶のための生地や絵の具を売る店、器用の箱を作る店も。有田は、土地で材料を賄い、器を作り、運んで届けるまでを一貫して担っている土地。焼き物を生業として成り立ってきたことがわかります。

    有田焼は、硬くて丈夫な磁器であるのはもちろん、白磁に藍色で染め付けされた端正な雰囲気が特徴。さらに、赤や黄、金などを使った昔ながらの鮮やかな器もあれば、あえて白磁だけのシンプルなものも。窯元が手がけているものは数がそろううえに安価ですし、逆に作家による作品は個性的なデザインが多かったりと、バラエティ豊かなのも器の街ならではのこと。

    散策した後は、足を延ばして「アリタセラ/Arita Será」へ行けば、大量生産の器から美術工芸品まで見ることができ、有田焼の懐の深さを知ることもできます。

    有田焼を扱う店が20以上軒を連ね、宿泊施設やレストランも併設されている「アリタセラ/Arita Será」
    写真提供:アリタセラ/Arita Será

    好みの器を探しながら歩いていると、そんなふうに陶芸の街ならではの歴史を感じることができるのが有田という街。持ち帰った器にも、より一層愛着が増していくに違いありません。

    有田市街地までのアクセス

    佐賀空港からリムジンタクシーなど、車で約1時間30分。

    アリタセラ/Arita Será

    福岡県福岡市:春の夜に千鳥足が心地よい屋台巡り

    暑くも寒くもないほどよい空気を感じながら、外で食べるあれこれはおいしいもの。となれば、博多の屋台巡りはぴったり。早いところでは18時開店のお店もあるため、まだ明るいうちから食べては歩き、飲んでは歩きしていれば、街の空気に溶け込んでいけるはず。博多の屋台は、戦後の混乱の中でさまざまな店舗が仮設として立ち並んだのが始まりといわれています。エリアは大きく分けて3つ。

    中洲屋台街は、那珂川(なかがわ)と博多川に挟まれたエリア。日本有数の歓楽街で、夕方になるとたくさんの方々でにぎやかに。川沿いにずらりと並んだ屋台のネオンが美しく、観光客向けのきれいな屋台が多いのが特徴。川沿いの景色とともにどこかエキゾチックな雰囲気です。

    川からの風が心地よい中洲屋台街

    そこから歩いて10分ほどの場所にあるのが天神屋台街。繁華街として昼も夜も人の多いエリア。会社帰りにふらりと立ち寄る人など地元の方たちが足繁く通う屋台がほとんど。老舗から新しい屋台まで軒数も多いため、空席を探しやすいのもうれしいポイントです。

    中洲も天神も、福岡グルメを楽しめる屋台ばかり。豚骨ラーメンや明太子オムレツ、ひとくち餃子やモツ鍋などはもちろん、一般的な屋台によくあるおでんや串焼きなども。店ごとに得意メニューがあるため、さっと食べて飲んでは、すこし歩いて、また別の屋台へ……とはしごするのがおすすめです。

    お客さん同士、またお店のスタッフとの距離が近いのが屋台の醍醐味
    写真提供:福岡県観光連盟

    一方、中心街から少し離れた場所にあるのが長浜屋台。以前は1軒にまで減ってしまったのですが、2023年に復活し、現在は長浜ラーメンを始めとする9軒が並びます。こちらは、本場の長浜ラーメンや明太子専門店、さらには本場中華を出す店など、長浜にしかない個性豊かなラインアップ。

    長浜ラーメンを目的に訪れる方も多いそう。お酒を飲んだ後の締めにも
    写真提供:福岡市

    どのエリアもぶらぶら歩きながらお目当ての屋台を探すのも楽しいもの。空席ができた隙にさっと入り、お腹がいっぱいになったらまた歩く。そのうちおいしそうな匂いにつられてまた別の屋台へ。酔いが回ってきたらまだ少しだけ冷たい夜風に当たって休憩しつつ、また別ののれんをくぐる。そんなふうに屋台とともに福岡の夜散歩を楽しんでみてください。

    各屋台街までのアクセス

    福岡空港から地下鉄で約10分。中洲屋台は「中洲川端」駅、天神屋台は「天神」駅、長浜屋台は「赤坂」駅が最寄り。

    大分県別府市:地球のエネルギーを五感で感じる街

    そこかしこから上がるもうもうたる湯けむり。煙突はもちろん、道端の側溝や川のほとり、建物の土台にあるちょっとした穴からまでも。ここは大分の温泉地、別府にある鉄輪(かんなわ)温泉。蒸気の中を歩くようなものといっても言い過ぎではないほどで、古くから湯治場として親しまれてきた場所です。

    別府市内には、「別府八湯」と呼ばれる8つの温泉地がありますが、その中でも鉄輪の源泉は温度が高く、湯量と圧力があるため蒸気が力強く吹き出してくるそうです。

    いたるところで湯けむりが上がる鉄輪温泉街

    その蒸気を生かした「蒸し湯」が楽しめるのが鉄輪ならでは。清流沿いにだけ生息する薬草である「石菖(せきしょう)」を石室の床に敷き詰め、蒸気でほかほかに満たされた中に寝転ぶというものです。独特の清涼感ある香りに包まれ、出るころには芯からあたたまっているだけでなく、体が軽く感じるほど。ほかにも、観光だけでなく湯治場として長期滞在する方も多いことから、立ち寄り湯が多いのも特徴で、そのほとんどが加水をせずに源泉かけ流し。古き良き街並みを楽しみつつ歩きながら、蒸し湯や地元の温泉を回るのが何より楽しめる街なのです。

    「鉄輪むし湯」。石室の床に石菖が敷き詰められ、空間は蒸気でポカポカ
    画像提供:別府市

    そして、温泉の蒸気を活用したもうひとつのお楽しみが「地獄蒸し料理」。鉄輪では、噴出する蒸気の上にせいろをのせた「地獄釜」が存在します。湯治客がとう留する素泊まりの宿の庭先や、鮮魚店の裏手、さらには民家の中まで蒸気を伝える管が引き込まれていて日々の煮炊きに使われているのだそう。地獄蒸しを出す飲食店へ行くもよし、鮮魚店で好きな魚介を蒸してもらうもよし。もちろん、地獄釜のある宿を選んで好きな食材を持ち込むもよし。蒸されてぎゅっとうまみが濃縮した魚や野菜は絶品です。

    「地獄蒸し工房 鉄輪」で人気の「地獄蒸し玉手箱」
    写真提供:地獄蒸し工房 鉄輪

    真っ白な湯気を浴びて歩きながら、目についた湯に入り、また歩いては蒸された野菜や魚介に舌鼓。地面から湧き出す天然のエネルギーを感じながら歩けば、身も心もすっきりするに違いありません。

    鉄輪温泉までのアクセス

    大分空港から車で約50分。もしくは大分空港からエアライナーで「観光港」停留所まで約45分。「観光港」停留所から車で約10分。

    鉄輪むし湯

    • 住所:大分県別府市鉄輪上1組
    • ウェブサイト:鉄輪むし湯

    地獄蒸し工房 鉄輪

    熊本県阿蘇市:馬と歩く春の草原

    みずみずしく清々しい新緑を思う存分味わうには、熊本の阿蘇はうってつけの場所。阿蘇五岳のひとつである烏帽子岳のふもとにあるのが「草千里ヶ浜(くさせんりがはま)」。78万5,000平方メートルの大草原と、雨水がたまってできたという2つの池があり、ゆっくり歩いて回るのには1時間ほどかかる広さ。

    何より視界いっぱいが緑で満たされるほどの大草原。馬や牛が放牧されていてなんとものどかな風景が広がります。のんびり散策しつつ、標高差30mという小さな「駒立山」に登ってみれば、より視界が広がって360度新緑の世界が楽しめます。

    新緑まぶしい「草千里ヶ浜」。約3万年前に形成された火口のうちにもうひとつの火口が生じたという場所

    また、乗馬クラブもあり、草原の中を馬に乗って散策することも。スタッフが常に手綱を引いてくれるため初心者でも安心。子供からシニアまで楽しめます。馬の背に乗れば視線も高くなって、足で歩くのとはまた違った風景を堪能できます。

    「阿蘇草千里乗馬クラブ」。普段着のまま乗馬でき、幼児と一緒に乗るコースも選べる

    もっと高い場所からの風景を楽しみたくなったら、近くにある阿蘇火山博物館から杵島岳や烏帽子岳へのトレッキングも。道が整備されていて登りやすく、片道1時間ほどで絶景が見渡せる山頂へ着くことができます。熊本市内を見渡せるスポットや、阿蘇でしか見られない春の草花を楽しむこともできます。

    烏帽子岳のハイキングコースで見られるミヤマキリシマ(5月上旬〜6月中旬ごろ)

    大きく広がる空と草原を前に聞こえてくるのは風に揺られる草の音と、馬や牛の鳴き声だけ。地に根を張る草花の近くを歩けば緑の香りが鼻を抜け、馬に乗ればほほにあたる風が気持ちよく通りすぎる。高台に足を向ければ空がぐんと近くなり、静寂に包まれる。深呼吸しているうちに背筋が伸びていき、のんびりおだやかな気持ちになれるのが、阿蘇という場所なのかもしれません。

    草千里ヶ浜までのアクセス

    熊本空港から車で約50分。もしくは熊本空港からリムジンバスで阿蘇駅まで約1時間。阿蘇駅から路線バスで約30分。

    阿蘇草千里乗馬クラブ

    • 住所:熊本県阿蘇市赤水1929
    • 雨天休み、不定休
    • 記載の内容は2024年2月現在の情報です。変更となる場合があるのでご注意ください。
    ライター:Kaori Hareyama

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