ハノイ:複層的な歴史にひたり、ゆったり過ごす
首都として機能し、政治と文化の中心地であるハノイ。ベトナム北部に位置するハノイには四季があり、東南アジアでは珍しく冬はダウンコートを着るベトナム人もいるほどグッと冷え込むことも。都市として千年の歴史を誇り、中国、フランス、日本など植民地時代の文化を含め、古き良きものを大切に継承する悠久の都です。ハノイ36通りと呼ばれる旧市街や政府関係の主要な建物、植民地時代の美しいコロニアル建築などがコンパクトにまとまっているためノスタルジックな街散策にぴったり。歴史にひたりながらゆったりと深呼吸するように過ごすのがおすすめです。
1日目:千年の歴史が集約されたエリアを巡ってタイムトラベル
初日はその歴史を象徴するハノイ-タンロン王城遺跡(世界遺産)からスタート。ベトナム初代王朝がこの地にタンロン城を建てたのが1010年。以来その姿形を変えながらもベトナムの歴史を見守ってきたハノイの中心地です。ハノイ城やタンロン遺跡を初日に訪れれば、時代ごとの遺構物や建物を通して、いにしえのベトナム王朝にはじまり、フランス植民地時代、ベトナム共産党から現代に至るまでの歴史を駆け巡り、国や都市の特徴を一気につかむことができるはず。
世界遺産で悠久の都をタイムトラベルした後は、庶民が育んできた文化を楽しく、おいしく体験できる城下町・ハノイ旧市街へ。タンロン城の東側に職人街として始まった旧市街。通りには職人街のなごりで「ハンチエウ(いぐさ通り)」「ハンティエック(スズ通り)」などその通りで売買されていたアイテムの名前が付けられ、ハノイ旧市街36通りとも呼ばれています。現在は扱う品が変わってしまった通りもありますが、問屋街として今なお活気ある場所です。買い物に来た地元の方たち、山盛りの荷物を積んで走るバイク、自転車や天びん棒に積んだローカルスイーツ・花売りが行き交う方々を呼び止める声。けん騒のなかにどこか懐かしさのある世界を味わえます。
街歩きをしながら、お昼にはフォーやブンチャーなどの北部ベトナムらしい米粉料理に舌鼓を打ち、カゴバッグや刺しゅうアイテムなどの昔ながらの手仕事の品々や雑貨をお買い物。足が疲れれば、一日中コーヒーやお茶をたしなむベトナム人に混じって街のあちこちにある新旧さまざまなカフェに飛び込んでお茶をする。歴史ある街の中に溶け込むようにゆったりと散策が楽しめます。
2日目:世界遺産のハロン湾に船で浮かび、絶景を楽しむ
ハノイ旅2日目は車で2時間半ほど移動してハロン湾へショートトリップ。ハロン湾は海洋に大小2,000もの奇岩が浮かび、水墨画のような唯一無二の絶景を誇る世界自然遺産。その奇岩の数々のあいだを船で行くクルーズ体験はまさにここでしか味わえないものです。
クルーズは絶景だけでなく、小島に降り立ってのカヤックや海水浴、鍾乳洞散策なども楽しめます。また、エビ、イカ、貝、シャコなどのおいしいシーフードランチをベトナムビールやワインとともに絶景を眺めながら船上でいただくのも格別のひととき。
行程に余裕がある場合は、船上泊もおすすめ。ハロン湾に沈む幻想的な夕日、漆黒の空と海を照らす月と星の瞬き、翌朝水平線から昇る美しい朝日と輝き出す奇岩の姿を見ることができます。選ぶツアーや船によっては日の出とともに行う太極拳、料理教室、船上プール、水上で暮らしていたかつての様子を再現した水上村の訪問、夜にはイカ釣り体験なども。そして時にはお土産物などを積んだ行商の小船が寄ってきて船上でお買い物なんてことも可能。絶景の世界遺産クルーズでおもいっきりアクティビティを楽しみたいならぜひ船上泊を。日常から解き放たれた特別な時間を過ごせるでしょう。
3日目:新旧の時が織りなすフレンチコロニアルを感じる
最終日は、ベトナムがフランス領だった時代の街の面影をたどり、その文化を満喫する日です。ベトナムは19世紀後半から20世紀半ばまで周辺諸国とともにフランスに統治され、「フランス領インドシナ連邦」と呼ばれていました。今も特にその時代の特徴色濃く残る建造物が立ち並ぶオペラハウス周辺を歩けば、洗練されたレトロクラシックの美を体験できます。
ハノイのシンボルでもあるオペラハウス(ハノイ市民劇場)を中心に放射状に道路が延びる街づくりはまさにフランス都市設計の片りん。オペラハウスは現役のため、開催されている国内外のアーティストによるコンサートを予約して観劇しつつ、パリのオペラ座をほうふつとさせるその重厚な建物を中から楽しむのもおすすめです。
オペラハウスの周囲には、迎賓館、ハノイ証券取引所、旧インドシナ銀行、歴史博物館、革命博物館、ハノイ薬科大学など、フランス領インドシナ連邦時代を代表する建物が立ち並び、東南アジアの建築物が見せる表情とはまったく異なる街の景色が広がります。その多くはインドシナ様式とよばれる建物。フランス建築にベトナムの気候や文化が織り交ぜられて生まれた独自のスタイルです。街を歩くだけで、「ポールベール通り」「アンリ・リビエール通り」などと通りがフランス語名で呼ばれていたフランス領インドシナ連邦時代の、その世界がふわりと目の前に立ち現れるはず。
足を止めたいのは、フレンチコロニアルスタイルが凝縮された「SOFITEL LEGEND METROPOLE HANOI(ソフティルレジェンドメトロポールハノイ)」。建てられた当時インドシナ最大だった創業1901年の五つ星老舗ホテルは、幾度もの改築を経ても今なお格式高く美しい空間を提供しています。中庭に続くレストランのテラス席でアフタヌーンティーやチョコレートビュッフェをいただけば、当時の方たちがここで過ごしたような時間を味わえるでしょう。夜は少しおしゃれをしてレストラン「La Badiane(ラバディアン)」でフレンチを。フレンチコロニアルな1日を締めくくるのにふさわしいフレンチシックなお店です。
SOFITEL LEGEND METROPOLE HANOI(ソフティルレジェンドメトロポールハノイ)
- 住所:15 P. Ngô Quyền, Street, Hoàn Kiếm, Hà Nội 100000 , Vietnam
- ウェブサイト:SOFITEL LEGEND METROPOLE HANOI(ソフティルレジェンドメトロポールハノイ)(英語)
La Badiane(ラバディアン)
- 住所:10 P. Nam Ngư, Cửa Nam, Hoàn Kiếm, Hà Nội, Vietnam
- Instagram:La Badiane(ラバディアン)(英語)
ホーチミン:東南アジアの熱気の中、エネルギッシュに過ごす
ベトナム最大の都市で経済の中心地ホーチミン。ベトナム南部に位置し、乾季と雨季がある東南アジアらしい気候が特徴です。街の規模はハノイに比べて大きく、かつ発展著しいためまさにそのエリアは拡大中。16区、新都市1市、郊外県5県で構成され、エリアごとにそれぞれの特徴があります。商業で急成長しているホーチミンはベトナムで一番人口の多い都市で、新しいものをどんどん取り入れるエネルギッシュで躍動的な雰囲気にあふれています。突き抜けるような青空の下、東南アジアらしい暑さのなかでベトナムの活気を感じる旅ができます。
1日目:急成長する都市・ホーチミンの活気あふれる日常を体験
ホーチミン初日はサイゴン川のほとりに広がる街の中心地1区からスタート。統一会堂、市民劇場などの歴史的建造物が集まるホーチミンの中心地です。なかでもサイゴン大教会(現在改装工事中)とその横にあるサイゴン中央郵便局付近は観光客だけでなく、地元ホーチミンっ子も集まりにぎわうところ。サイゴン中央郵便局に足を踏み入れるとアーチ状の天井の下に伸びやかで美しい空間が広がり、正面にホーチミンの巨大な肖像画が現れます。郵便局として今も機能しているため、日本の自宅宛にエアメールを送れば旅の記念に。切手はもちろん絵葉書も郵便局内で販売されています。
隣接する3区のタンディン教会のエリアも、活気あふれるホーチミンの街の空気を味わえる場所のひとつです。見た目そのままにピンクの教会とも呼ばれるタンディン教会が青空の下に建つ様子は南国の晴れやかな映え写真を撮るのにぴったり。そしてそのすぐ近くのタンディン市場は、観光名所化している1区のベンタン市場よりももっと日常の市場の雰囲気が味わえると人気急上昇中のスポットです。ありとあらゆる生活用品が販売されていて、美しく器用に積み上げられた商品が並ぶ市場を歩けば東南アジアのパワフルな生活ぶりを感じることができます。
お腹が空いたら、市場近くにあるバインセオの名店「Banh Xeo 46A(バインセオ46A)」で食事を。薄く焼いたクレープのような生地にもやしや豚肉、えびなどが包まれているベトナム南部を代表する粉物料理バインセオ。たくさんのバインセオを焼くガスコンロが軒先に並び、熱風のなか次々と焼き上げられていく様子やバインセオにかぶりつく大勢のお客さんでにぎわう店内。その熱気やカオスはアジアの食堂ならではです。
昼間のけん騒としたホーチミンの楽しみ方とは別に、穴場なのがナイトバスツアー。日没後2階建てオープンバスに乗り、心地よい夜風に吹かれながらにぎやかな街並みを疾走。ライトアップされた名所や名建築の夜の顔をバスの高い目線から一望できるためおすすめです。チケットはオペラハウス前のチケットセンターで購入できます。
サイゴン中央郵便局
- 住所:02 Công xã Paris, Bến Nghé, Quận 1, Thành phố Hồ Chí Minh, Vietnam
タンディン教会
- 住所:289 Hai Bà Trưng, Phường 8, Quận 3, Thành phố Hồ Chí Minh, Vietnam
タンディン市場
- 住所:336 Hai Bà Trưng, Phường Tân Định, Quận 1, Thành phố Hồ Chí Minh, Vietnam
Banh Xeo 46A(バインセオ46A)
- 住所:46A Đinh Công Tráng, Phường Tân Định, Quận 1, Thành phố Hồ Chí Minh, Vietnam
2日目:熱帯の湿った熱い空気を全身で満喫するメコンクルーズ
ホーチミン2日目はデイトリップで南国の自然を満喫するクルーズの旅へ。ベトナム南部は東南アジアを代表するメコン川が海へと流れ出るデルタ地帯。特におすすめなのがメコン川クルーズで、東南アジアの水辺の風景や暮らしを垣間見ることができます。
ホーチミンからの道中は水牛が歩くのどかな田畑の風景を楽しみながらクルーズの拠点となるミトーへ車で移動。モーター付きの船に乗り換え、貨物船、漁師、フルーツや生活用品を山積みにした小舟とすれ違いながら、中洲や小島をホッピング。小島ではココナッツキャンディ作りやハチミツ農場をのぞいたり、果樹園で南国フルーツの数々を堪能したり、生春巻きに使われるライスペーパー作りを体験したりできます。
時間があれば夕方からの蛍を見るツアーや、ミトーからさらに南下したカイベーやカントーの水上マーケットを見に行くのもおすすめです。たくさんの小舟がそれぞれの売り物を乗せて行き交い、水面を埋め尽くすように集まる水上マーケットの風景を見れば、そのカラフルさと活気に東南アジアらしいパワーを感じるはず。メコン川クルーズ、蛍のツアー、水上マーケットのツアーはいずれもホーチミンはもちろん、日本からでも予約できます。
3日目:けん騒から離れ、最旬のシティライフを楽しむ
目まぐるしく変化・発展を遂げるホーチミンのなかでも、最新のトレンドを体験できるのが旧2区にあるタオディエン。ホーチミンの中心1区から車で20分ほど、サイゴン川を挟んだ対岸にあります。少し前までは船でしか渡れない地域だった旧2区のタオディエンは車での往来が可能になって以降、欧米人向けのヴィラやマンションの建つ高級住宅地として開発され、急速に街の表情が変わった地域。そして地下鉄開通も目前の今、1区のけん騒を避けたおしゃれな若者や欧米人が集まるスタイリッシュでいて穏やかな空気の流れる最旬エリアになっています。感度の高いセレクトショップやカフェがあるこのエリアは、点在するコンセプチュアルな店をのぞきながらゆったりと歩いてみましょう。東南アジアの明るい日差しの中を、アーティステックなカルチャーの波に身を委ねるように過ごせます。
「Saigon Concept(サイゴンコンセプト)」は注目のショップが集まった複合施設。ベトナムを代表するテーブルウェアブランドに成長した「amai(アマイ)」のアウトレット店「amai grand b (アマイグランドビー)」、ビンテージソンべ焼き「SÔNG BÉ MODERN VIETNAMIESE ANTIQUE SHOP(ソンべモダンヴィンテージアンティークショップ)」、洗練されたメイドインベトナムの香りが手に入る自然派コスメブランド「NauNau(ナウナウ)」などがこの複合施設一つに集まっています。カフェもあり、モダンな建物の内庭で暑さを避けて涼をとるのもおすすめです。
街歩きや買い物に疲れたら、フュージョンベトナミーズが味わえる「Laang Saigon(ラーンサイゴン)」で食事をしたり、ハイクオリティのスパ「Moc Huong Spa(モックフーンスパ)」で旅の疲れを癒したりと、この一角でラグジュアリーなベトナムシティツアーを完結できるのも魅力です。
Saigon Concept(サイゴンコンセプト)
- 住所:14 Đ Trần Ngọc Diện, P. Phú Thuận, Thu Duc, Thành phố Hồ Chí Minh , Vietnam
- Instagram:Saigon Concept(サイゴンコンセプト)(英語)
Laang Saigon(ラーンサイゴン)
- 住所:22 Đ. Đặng Hữu Phổ, Thảo Điền, Thu Duc, Thành phố Hồ Chí Minh, Vietnam
- ウェブサイト:Laang Saigon(ラーンサイゴン)
Moc Huong Spa(モックフーンスパ)
- 住所:61 Xuân Thủy, Thảo Điền, Thu Duc, Thành phố Hồ Chí Minh, Vietnam
都市を超え、時を駆けて。何通りにも楽しめるベトナムを自分らしく旅する
南北で違う気候、歴史、カルチャー、そして今の顔を持つベトナム二代都市ハノイとホーチミン。見たいこと、したいこと、感じたいこと、味わいたいことを追求して自由に組み合わせれば、自分だけのベトナムの今を満喫できるプランになるでしょう。行程に余裕があれば、二大都市を両方訪れることで、より重層的にベトナムの魅力に迫れておすすめです。
- 記載の内容は2024年5月現在の情報です。変更となる場合があるのでご注意ください。
コーディネーター:勝恵美、鵜飼朋子