磯釣りの人気ターゲットをフカセ釣りでねらう
磯釣りの人気ナンバーワンターゲットとして確固たる地位を築いているグレ。スズキ目メジナ科に属する魚で、日本には標準和名でメジナ、クロメジナ、オキナメジナの3種類がいます。その中で分布域はメジナがもっとも広く、北海道南部から台湾にまで生息。クロメジナは相模湾以南の太平洋沿岸が中心で、オキナメジナは千葉県以南ですが個体数は少なく、釣りの対象となるのはメジナとクロメジナです。
「グレ」というのは、古くからこの釣りが盛んであった関西や四国地方での種類を問わない呼び名で、関西では特にメジナのほうを「口太(クチブト)」、クロメジナのほうを「尾長(オナガ)」と呼び分けることも多く、今は他の地域の釣り人もそれにならっています。
グレは沿岸の岩礁域に生息しており、歩いて行ける地磯や渡船で渡る沖磯からウキフカセ釣りでねらいます。臆病で警戒心が強いグレをマキエ(寄せエサ)で浮かせ、軽いウキ釣り仕掛けを流し込んでハリに付けたサシエを食わせるもので、いかにマキエとサシエを上手く合わせるかが、釣果のカギを握ります。
海底も含めて地形の変化に富む磯の周りは潮の流れが複雑なうえ、風もつきものです。ハリやイト、ウキなどの仕掛けが付いたサシエを単に送り込むだけでは、マキエと同じように流れません。さらにマキエに対してグレが浮いてくるタイミングやタナ(層)も刻々と変化します。潮の流れを読み、風を計算し、グレの動きを推理して仕掛けを組み、マキエを打つ位置、仕掛けを投入する位置やタイミングを考え、ラインを操作しマキエと同調するように流していく。それらが上手く ハマったときにグレのアタリが出るし、精度が高くなればなるほど釣果が伸びる。そうしたレスポンスのよさと明確さが、グレ釣りの面白さと奥深さになっています。
暖かい潮の影響を受けるエリアが主な釣り場
グレ釣りが盛んなのは、黒潮や対馬暖流といった暖かい潮の影響を受けるエリアです。太平洋側では、伊豆半島、伊豆諸島、紀伊半島(紀伊長島、尾鷲、梶賀、熊野、串本など)、四国(徳島県南、宇和海、沖ノ島など)、九州全域など、日本の各地に地域性豊かなグレ釣り場があり、たとえば対馬暖流海域を代表する人気釣り場の長崎県五島列島などは、九州のみならず全国からファンが訪れ大いににぎわいます。また、近年は海水温の上昇が影響しているのか、日本海側のグレ釣り場も注目度を高めており、島根県の隠岐諸島、京都から福井にかけての若狭湾、新潟県の佐渡なども注目されています。
冬は大型もねらえるグレ釣りのハイシーズン
グレ釣りには晩春から梅雨明けにかけてのいわゆる「梅雨グレ」の釣りと、初冬から3月ごろにかけての「寒グレ」の釣りの2つのハイシーズンがあります。
水温が高く、エサ取りも含めて活性が高い梅雨グレでは、浅いタナでテンポのよい釣りが楽しめます。一方の寒グレでは、水温が下がるにつれてエサ取りが減るのに加えて、産卵を控えてグレが大きくなるので良型がねらいやすくなります。
寒グレの釣りでメインの対象魚になるのは口太で、丸々と太った40cmオーバーの確率が高く、50cmを超える大型も期待でき、一年を通してもっとも型がねらえます。そのうえで、寒グレのシーズンも初期はまだ水温が比較的高いので、グレの摂餌行動も活発であり、マキエに対して目に見えるくらいの浅いタナまで浮いてくることが珍しくありません。下層から浮上してエサを拾い、反転して戻っていく上下動の動きをするので、アタリも明確に出ます。シャープな引きを楽しませてくれるうえ、良型の数釣りも期待できます。
初期を過ぎて季節が進むと水温が下がり、グレのお腹の卵も大きくなってくるので、初期のような上下の動きで浅いタナまで浮いてエサを拾うことは少なくなり、深いタナで水平方向へ動いてエサを拾ったり、あまり動かず沈んでくるエサを居食いしたりします。また、口にしたサシエに違和感を覚えた瞬間に吐き出すことも少なくないので、より繊細にシビアな釣りが求められるのですが、それだけに1尾を仕留めたときの達成感は大きくなります。
一方、太平洋側の伊豆諸島や四国西南部、九州南部などでは、尾長も好期です。口太ほどタナが深くなることは少なく、比較的浅いタナで食ってきます。ブラシ状の歯を持つ口太とは違い尾長の歯はヤスリ状で硬いため、ハリをのみ込まれるとハリスを切られてしまうので、尾長をねらう場合は浅めのウキ下での早アワセが鉄則です。水温の低い時期でも、口太とはひと味もふた味も違う強烈な引きと締め込みをみせてくれ、それが尾長の魅力になっています。
タナを取るか、無段階にさぐるか
グレをねらうフカセ釣りには、大きく分けて、ウキをヨウジなどで固定する固定ウキの釣り、ミチイトに付けたウキが一定の範囲を動く半遊動ウキの釣り、そしてウキ止めを付けずにタナを無段階にねらえる全遊動ウキの釣りの3種類があります。寒グレシーズンの初期は浅いウキ下で食ってくることも多々あるので、いずれの仕掛けでも大丈夫ですが、水温が下がりグレがエサを捕食するタナが深くなってくると半遊動ウキや全遊動ウキの釣りになります。
半遊動ウキの釣りは、オモリを使ってウキ下をきっちり決めてねらうので、グレの捕食するタナが分かれば、精度高くねらい続けることができます。グレの活性が高ければ連打(連続ヒット)に持ち込めるし、食いが渋いときにはグレが捕食するタナをじっくりねらうことができるのです。ただし、グレのタナを見つけるためのこまめなウキ下の調整が必要なのと、設定したタナでサシエがとどまるため、ピンポイントでマキエを合わせる必要があり、タナが深くなるほど難易度が高くなります。
ウキ下を設定しない全遊動の釣りは、基本的にマキエと同じ早さでサシエが沈んでいくように設定して探っていきます。必然的に仕掛けは軽くなるのでグレに違和感を与えにくく食い込みは良好です。仕掛けのフォールに合わせてカウントダウンし、アタリの出た位置を把握することで、2尾目、3尾目の連打につなげることができるのですが、仕掛けが軽い分、風の影響を受けやすく、風が強いときは難易度が上がります。
いずれにせよ、仕掛けの状態、マキエとの同調など、グレ釣りでは常に海中をしっかりイメージしながら釣りをすることが大切。そうして食わせることができれば、攻略の引き出しとして次の釣りにも役立てることができるようになります。
上品な白身は極上のうまさ
この釣りのもう一つの楽しみが、釣ったグレを食べることです。たっぷりと脂が乗る寒グレの白身は、口の中に上品な甘みが広がりとても美味。クセがないのでどんな料理にしても美味しくいただけます。醤油につけるとぱっと脂が広がる刺し身は、舌の上をつるりと滑り、かみしめるほどにうまみが増します。お酒の肴(さかな)にもご飯のおともにも最高です。
焼き切りはグレ釣りファンに人気の食べ方で、柵取りした身の皮を引かずに皮目をあぶって刺し身にすることで、皮と身の間の脂が溶け出してうまみが倍増するとともに、鼻孔をくすぐる香ばしさがたまりません。
しゃぶしゃぶもおすすめです。薄めに切った身を昆布だしのお鍋にさっとくぐらせたらポン酢で食べます。口の中ではらはらと崩れる身から広がるまろやかさを増した甘みが、ポン酢の酸味とベストマッチ。鍋に浮かぶグレの脂を吸った野菜や豆腐も美味しいし、〆の雑炊もたまりません。塩焼き、煮付けもそれぞれ美味しく、薄めに切った身を大葉で巻いた天ぷらは、梅肉や塩レモンでいただくと言葉を失ううまさです。
冬の海に出かけるのが待ちきれなくなる寒グレ釣り。ぜひ挑戦してみてください。
- 掲載している情報は2024年12月時点のものです。釣り場のルールや状況は変更になる場合がありますので、事前にご確認のうえお出かけください。
協力:つり人社