2021.10 体験レポート
Photo by Natsuki Endou
鳥取県中部にある三朝温泉から車で10分ほど。標高900mの三徳山の険しい山の中にあるのが西暦706年に開山した三佛寺です。有名な国宝「投入堂」は三佛寺の奥の院。断崖絶壁に建つ「日本一危険な国宝」とも言われ、日本遺産第一号認定地のひとつでもあります。
参道の階段をのぼると納経所でまずは志納金(大人400円)を納めます。石畳の参道の両脇に並ぶ子院では、座禅や写経などの修業体験もできます。石造りの急な階段の先には水琴窟(すいきんくつ)があり、神聖な空気が漂う境内に、「キーン」と優しい音色が響きます。
投入堂にお参りする前に、まず本堂で登山の無事を祈ります。気を引き締めて参拝登山の受付所へ進み、入山料(大人800円)を納めます。服装はスカートやワンピース類はNG、スパイクや金具の付いた靴は参道保護のため禁止されています。トレッキングシューズや靴底に凸凹のある運動靴が望ましいですが、滑落防止・参道保護のためベストは藁草履(わらぞうり)なのだそう(藁草履は受付で購入が可能)。その他の装備はリュック、水分、軍手などを持っていきます。「輪袈裟(わげさ)」という略式の法衣を首から下げて、修業の旅へ出発です!
赤い門扉をくぐると、そこは厳かな気配に満ちた修業の場。深い杉林に美しい渓谷、清流に架かる赤い欄干がアーチを描きます。橋を渡ってすぐ目の前に現れたのは険しい山道!三徳山は、もともと山伏たちの修業の聖地だったため、舗装された登山道はなく、何千、何万回と山伏たちが踏みしめた獣道のような険しい道のりを進みます。
お堂までは40分ほどですが、標高差200mの登山道はなかなかにハードです。急斜面の木の根っこをよじ登り、チェーンをつたって岩を登るなど数々の難所が待ち受けます。そうして息を切らして最初にたどり着くのが、崖の上に建つ文殊堂(もんじゅどう)。
手すりのないお堂の縁側に腰かければ、山々が連なる絶景パノラマを独り占めです!
文殊堂とその先の地蔵堂を過ぎても岩場の険しい道が続きます。登山道では足を滑らせたり、木の根に足を取れたりしないように、常に気が抜けません。山中には他にも鐘撞堂(かねつきどう)や納経堂(のうきょうどう)、岩窟の中に建てられた観音堂などがあります。これらのお堂は、古いものだと平安時代に建てられた貴重な文化財。「胎内くぐり」と言って、観音堂と岩の隙間にある真っ暗な道を抜けると、投入堂はもうすぐそこです!
「投入堂」と書かれた道しるべに従って滑りやすい岩肌を伝って進むと、急に視界が開けます。目の前には断崖絶壁に建つ国宝・投入堂!役行者(えんのぎょうじゃ)というお坊さんが法力で岩窟に投げ入れて建立したと伝わっています。最近の研究では平安時代後期に建てられたことがわかっていますが、今なお建築方法は謎なのだとか。大自然と調和した見事な美しい姿に、圧倒されるばかりです。
投入堂を見て満足して、思わず気が緩んでしまいそうですが、下りも急斜面が続きますので、慎重に下山しましょう。ふもとの受付所に戻ってきたら、輪袈裟を返却します。険しい山道を乗り越え、美しい景色と出会った達成感は格別です!
輪袈裟にも書かれていた「六根清浄(ろっこんしょうじょう)」の六根とは「眼・耳・鼻・舌・身・意」を表し、三徳山の急峻な岩肌を登り、荘厳な寺院に祈りをささげることで六根を清らかにするという考え方。神仏の宿る山・三徳山で日々の喧騒を離れ、心身を浄化してみてはいかがでしょうか。
住所
鳥取県東伯郡三朝町三徳1010
体験情報
受付時間 8:00~15:00
志納金 大人400円、小人(小中学生)200円
入山料 大人800円、小人(小中学生)400円
参拝登山は雨天積雪時不可(例年12月~4月1日頃まで)。
投入堂への参拝は必ず2人以上です
URL