変わらないために変わる

 あけましておめでとうございます。本年もANAをご利用いただき誠にありがとうございます。

 皆さま、お正月はどのように過ごされたでしょうか。社寺で初詣をされた方もいらっしゃることと思います。今月の『翼の王国』では、全国の神社の中でも格別のお宮として崇敬を集めている伊勢神宮を特集しています。国の安泰や世界平和といった願いを伝えるのがよいとされる神宮で、日々の感謝とともに、今年は改めて世界中の人々の心に平穏が訪れることを切に願いたいと思います。

 さて、伊勢神宮への参拝は江戸時代に庶民の間でブームとなり、今もなお世界中から年間約800万人もの参拝者が訪れ、リピーターも絶えません。「なぜ人はリピートするのか」という問いかけに神宮の神職さん曰(いわ)く、①2000年以上もの悠久の間、変わらぬ荘厳な佇(たたず)まい、②繰り返されるお祭り(年間のお祭りの数はなんと1500回を上回るそうです)、③御札やお守りを年ごとの節目で新たに受ける(お土産を買う日本人の風習に繋がっている)ことが時代を超えて人を惹きつける秘訣なのではとのこと。

 こうして長い年月受け継がれてきた伝統と文化、人々が繰り返し訪れる仕組みに加え、宿泊や飲食物の提供は神宮では行わず、周辺地域に富と繁栄をもたらすという、現代でいう「地域創生」を重視した考え方。そこには持続可能なビジネスモデルとしても多くの学びがあるように思います。「世のため、人のため」であることがサステナブルである必須条件ではないでしょうか。

 そしてもう一つ、神職の方からは「変わらないために変わる」というお話を伺いました。代表的なのは20年に一度、社殿を造り替える式年遷宮。この行事によって、古(いにしえ)の建築技術や調度品を現在に伝えることができる。今でも「いつでも新しく」「いつまでも変わらない姿」を望むことができるとされています。

 私たちANAも、変化の多いこの時代において、変わらない大事なものを守り続けるために「常に変わり続けていきたい」と、改めてそう感じています。

 今年、皆さまにとって素晴らしい変化、旅や出会いの素敵な思い出がたくさん生まれますように。ANAがそのお手伝いをさせていただけたら大変嬉しいです。

 本年もご愛顧のほどよろしくお願いします。

全日本空輸株式会社
代表取締役社長 井上慎一