伝統建築

武雄温泉 楼門

佐賀県の西部、武雄市の中心に堂々と構える鮮やかな朱色の楼門。その2階建ての門をくぐると、1,300年の歴史を抱く武雄温泉があります。肌がしっとりするため昔から「美人の湯」として親しまれてきました。共同浴場の木造建築として日本最古の「元湯」や領主の専用風呂であった「殿様湯」など、バラエティに富んだ温泉施設を巡るのが人気です。

釘を使わずに造られた楼門は、日本銀行本店や東京駅駅舎を手がけた「日本近代建築の父」辰野金吾(1854〜1919)の設計によって、1915年に建てられました。向かいには同じく辰野が設計した武雄温泉新館があり、楼門と共鳴するようなデザインになっています。

ここで逸話を一つ紹介しましょう。辰野金吾が楼門と同時期に設計した東京駅のドームの天井を見上げると、干支の装飾があることに気づきます。しかし、12あるはずの干支は8つだけ。そう、残り4つの干支の飾りは武雄温泉楼門の2階にあるのです。佐賀県出身である辰野の遊び心だったのか、風水学的な考えによるものだったのか、今も真意は謎に包まれたまま。ぜひ東京と佐賀の両方を旅して建築の面白さに触れてみてください。

日本地図 東京から南西に位置する佐賀

朱色と白のコントラストが鮮やかな武雄温泉楼門(国指定重要文化財)は、夜にライトアップされる。

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