日本初!廃棄対象の作業車両をアップサイクル!

2024/07/30

全日空モーターサービス株式会社(以下、ANAMS)は、空港内で使用され廃車対象になっていたベルトローダー* 1をディーゼルエンジンからEV化* 2した車両にアップサイクルしました。

最新技術を駆使して新しい車両へと蘇らせる航空機地上支援機材のEVへの転換は、日本のエアライングループで初の取り組みです。

  • * 1 航空機に手荷物を搭載するための車両
  • * 2 電力を供給源とした動力

技術力を基盤にしたアップサイクル

空港には、ベルトローダー以外にも航空機牽引車やパッセンジャーステップ車、除雪車など航空機の周辺で活躍する特殊な車両がたくさんあり、それらを航空機地上支援機材(以下、GSE)といいます。
ANAMSは、これらGSEや旅客搭乗橋(PBB)の保守管理、メンテナンス、設計、販売まで含め、幅広い役割を担っている会社です。
全日空モーターサービス株式会社の詳細:https://www.anams.co.jp/index.html

この度、ANAグループが誇る技術集団であるANAMSの社員の発案で、29年間使用され廃棄対象であったベルトローダーを、構造改造の設計から電気回路の組み上げ、EV用専用バッテリー・モーター・減速機の搭載などを自社で実施し、電力による完全稼働に成功しました。

EV化前のベルトローダー
EV化したベルトローダー

ANAグループの地上における脱炭素の取り組み

ANAグループは、「航空機の運航以外で発生するCO2排出量を2030年度までに33%以上削減(2019年度比)」という中期環境目標を掲げており、GSEのEV化はこの目標達成に欠かせない要素の一つになっています。今回のベルトローダーのEV化は、新しくEV車両を購入する以外に廃棄対象だったGSEを蘇らせるという選択肢を得ることができ、ANAグループの脱炭素の取り組みに大きく貢献することが期待されています。

2024年夏頃を目途に、羽田空港にて運用開始を目指します。

プロジェクトメンバーにインタビュー

普段GSEの整備を担当しており、ベルトローダーEV化のプロジェクトメンバーであるANAMS GSE整備部の小暮さんと内野さんにお話を聞きました。

プロジェクトメンバー:伊東さん(左)小暮さん(中央) 内野さん(右)
小暮さん(右)・内野さん(左)の作業風景

ベルトローダーをEV化しようと思ったきっかけは何ですか?

(小暮さん)2030年度までに脱炭素化の目標に向けて、ANAMSでも何かできることがあるのではないかと考えこのプロジェクトが発足しました。車両更新のタイミングでEV車両を購入していくこともすすめていますがそれだけでは中期環境目標達成は間に合わないという危機感もありました。また、車両が古くなってしまってもまだ使用できる状態で廃棄してしまうのはもったいないという気持ちもありました。

開発から導入まで大変だったこと・忘れられないことは何ですか?

(小暮さん)構想から2年かかったプロジェクトで私は現場の責任者として、作業の進捗や不具合有無の確認などを行なっていました。通常の業務ではGSEの修理をメインで行なっていましたので、車両を一から作ることは初めてでした。今までディーゼルエンジンを装着していた車両のエンジンや配線を全部外し交換していく中で、配線図をゼロから書くことは初めての挑戦でした。EV車両は配線が全てですからこの配線図を書くことに一番時間がかかりました。思い描いていた通りの仕上がりになって大変うれしいです。

(内野さん)思い出に残っていることは、社内で発表する日が事前に決まっていたので、その日までに動かそうと計画して作業を行なっていましたが、さまざまなハードルがあってぎりぎり前日に完成しました。でも、いざスイッチをオンにしても動きませんでした。そこから修理をして、最初に動いたときはとても感動したことが忘れられません。また、EV化には非常に多くの部品を使用するのでそれらの部品の仕入れや管理もとても大変でしたし、部品の配置についてもメンバーとたくさん議論しながら進めたことで納得のいく仕上がりになったと思っています。

こだわったポイントはありますか?

(内野さん)実際に車両を操縦するオペレーターに負担がかからないように考えながら作業しました。荷物の搬送時の操作やアクセルのかかり具合などエンジン車と変わらないようにしました。

また、元の車両から形を変えずに改良することにもこだわりました。搭載する部品のサイズは決まっているので既存の車両にフィットさせることはとても大変でした。

ANAグループで運航しているANA Future Promise Jet&Propと同じコンセプトであるので、車両のデザインも機体と同じ「水と緑」のモチーフを採用しました。ANA Future Promise Jet&Propに荷物を搭載している姿を早く見たいですね。

今後チャレンジしてみたいことはありますか?

(小暮さん)今後2台目、3台目の改良も検討していく中で、今回のプロジェクトで課題もたくさん見つけることができました。これらの課題をクリアし知見や技術を貯めながら、さらに効率よく高品質なものに仕上げていくことが今後の私たちのチャレンジです。

ANAグループはこれからも地上における脱炭素の取り組みを推進していきます。

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