医療機関でANA機内食の提供を開始

2023/11/22

ANAグループは、2023年9月19日より大阪国際がんセンターに入院される患者の延食(えんしょく)にANA国際線エコノミークラス機内食のメインディッシュ(以下、ANA機内食)の提供を開始しました。医療機関で検査等を受ける際には、検査直前の食事を摂らずに、検査終了後まで食事自体を延ばすことがあります。食事は検査後に遅れて提供されるため「延食」と呼ばれています。今回は、延食としてANA機内食提供までの舞台裏をご紹介いたします。

2023年9月19日 プレスリリース:ANAの機内食を大阪国際がんセンターで提供します!

プロジェクトの背景

大阪国際がんセンターの検討会議の様子 1
大阪国際がんセンターの検討会議の様子 2

このプロジェクトは、ANAと大阪国際がんセンターとの間で進められていた「食」についての協議から始まりました。一般的にがん治療中は食事摂取に影響が出やすいとされていますが、大阪国際がんセンターでは「食を大切にする」を基本とし、治療中であっても食べることを重視しています。実際には、入院中の検査や治療などさまざまな状況でそれぞれに適した食の工夫が必要です。延食は、決まった時間に提供される通常の食事とは異なり、患者ごとの検査終了時間に合わせて提供し、検査後の体調や次の食事までの短い時間であっても食べやすい工夫が施されています。しかしながら、食品衛生に基づく厳しいルールを遵守しなければ作り置きはできませんので、個別に求められるタイミングで、検査後に適した暖かい食事を準備することは難しく、課題となっていました。この課題に対し、「ANA機内食の特徴を活かして、改善を図ることが可能では?」と検討を始めたことがきっかけでした。

ANA機内食の魅力

延食として検討される機内食

機内食は、機内搭載後上空で加熱のみを行って提供できます。延食は検査終了後に準備しますが、あらかじめ時間が決まっているわけではありません。加熱のみで提供できる機内食なら、検査後の一息つくタイミングで暖かい食事を召し上がっていただけます。しかも、ANA機内食は、薄暗い機内での視認性を意識した色合いに、必要な栄養素がコンパクトにまとまった適度なボリュームで、出汁や香辛料などで塩分量を抑えた身近な味付けになっており、医療機関での提供にも適していました。これらの特徴を踏まえて、大阪国際がんセンターの医師と管理栄養士で検討を進めた結果、延食(えんしょく)メニューの一つとして採用することが決まりました。

ANA担当者へのインタビュー

ANAケータリングサービス担当者の植田さん

どういった想いを持って取り組みましたか。

植田さん:ANA機内食は2020年12月より一般販売を開始し、2023年8月時点で198万食を販売してきました。これまではご家庭でお召し上がりになることを想定し、「おうちで旅気分」といったワクワク感や、調理が手軽なことからご家庭の必需品としての便利さをお客様にお届けしたく、販売を行ってきました。今回、ANAとして医療機関でご提供することは初めての試みとなりました。お取り組みに際しお話を伺う中で、大阪国際がんセンターの現状や患者様のご様子など、これまで接することのなかった分野の課題を知ることができました。また、ご病気でも食べることを大切にしている大阪国際がんセンターの方針を知ったこと、実際に病院へ訪問をしたことから、ANAの機内食で少しでも元気づけられたり、旅気分を味わってもらえたら私自身も嬉しいなと感じるようになりました。今回の医療機関での機内食提供を通じて、大阪国際がんセンターでの課題解決と、少しでも多くの方にワクワクをお届けしたいと考え、取り組んで参りました。

どういった点に苦労しましたか。

植田さん:医療機関へのご提供が初めてでしたので、大変勉強になることばかりでした。まず、医療機関としての基準があり、提供する機内食の原材料の確認や栄養素分析も求められ、これをクリアする必要がありました。さらに、実際の提供では医療機関の日常業務の中で通常の食事時間と異なるタイミングでの加熱と配膳という延食のオペレーションが、現場スタッフの負担にならないような工夫も施設側では検討されていました。具体的な調整段階に入ってからも、新型コロナウイルス感染拡大による全国的な医療ひっ迫のために一度ストップせざるをえなくなりました。しかし、今年5月「5類感染症」に位置づけが変わり、感染拡大が落ち着きを見せたころから調整が再開できました。そして、いよいよ患者さんへの提供が開始されることとなり、大変嬉しく感じております。「食欲があまり無くても機内食であれば食べる気になれる」や「機内の味を機内以外でも食べられるワクワク」を感じていただけたら幸いです。今後も多くの人に、機内食を届ける活動を進めて行きたいと考えております。

地域や患者様へのメッセージ

大阪国際がんセンターの松岡管理栄養士(左)、飯島医師(右)

飯島医師:近代医療において、優れた栄養管理が治療成績向上に大きく貢献し、「食」を中心とした栄養状態の維持が大切だったことがわかっています。一方、旧来の病院食は入院中の食の提供が目的で、食としてのイメージはさまざまだと思います。医療機関はレストランではありませんので、私たちが求めているのは単なる食の機会ではなく、個々の病状に適した食を介し、未来に対峙できる栄養を支えることです。経過中には食が進まないこともあり、普段以上に、味や見た目、そして嗜好にも配慮することが必要になります。もちろん、食を補助する医療としての栄養療法は前提として、大切な「食」のために今後も良いものは取り入れ、治療への貢献を目指します。

ANAは、食を通じて健康をサポートし、すべての人にワクワクをお届けできるよう、パートナーシップを進めてまいります。

SDGs 3番 すべての人に健康と福祉を
SDGs 17番 パートナーシップで目標を達成しよう