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    【ハワイ ホノルル】日本から至近の「本場」海フライの舞台

    大西洋まで行かずとも!

    海で楽しむフライフィッシングは、アメリカの大西洋岸で発達した。とくに南端のフロリダ州には浅い海が広がり、そこにはすばらしい好敵手が泳ぎ回っている。「銀の王」と呼ばれ、古代の姿をいまにとどめる巨大魚ターポン、究極の気まぐれさでアングラーを翻弄するパーミット、障害物を好み、入り組んだマングローブ林の奥で通りがかる魚を待ち伏せるスヌーク、そして「浅瀬のキツネ」と呼ばれるボーンフィッシュなどだ。しかし近年、そんな海のフライフィッシングが、特にボーンフィッシュであれば太平洋のハワイでも楽しめることが知られるようになった。

    アーバンなボーンフィッシング。魚はビルなど気にしない
    アーバンなハワイのボーンフィッシング風景。魚はビルなど気にしない
    明け方のフラットで掛けた。沖に向かって一直線にラインが走って行く

    初めてボーンフィッシュを目にする人は、そのプラチナの輝きに誰しも息を呑む。太陽の強い光を鋭く反射する白金だ。そして、初めて掛けた時にはパニックが襲ってくる。そのパワーウエイトレシオは、まさにライトウエイト・スポーツカー並み。猛烈なスピードで浅瀬を疾走し、フライラインが聞いたこともないような水切り音を立てる。そんなライトタックルの相手が太平洋のど真ん中、お土産屋さんやモールが広がるホノルル・ワイキキの観光エリアからほんのわずかな距離にうようよといることなど、10年前は一部の人だけが知る秘密だった。

    ボートから釣ることもできる。すると魚の見え方が大きく違う

    それまで釣り人の間で、パシフィック・ボーンフィッシュの有名釣り場といえば、キリバスのクリスマス島だった。ハワイのオアフ島から1週間に1便しかない飛行機を乗り継いで出掛ける遠隔の地だ。しかし、その中継基地のオアフ島にも、知る人ぞ知る巨大ボーンフィッシュの釣り場が広がっていたのである。オアフ空港の真ん前すら釣り場である。

    オアフ空港裏のフラット。カヤックやボートがないと入りにくい所である
    白い砂と、濃い緑の森。オアフにもこんな場所があるのだ

    適度な難しさと海の美しさ

    ボーンフィッシュの釣りは、適度に難しくてすばらしい。つねに吹いている貿易風を切って、魚の進行方向にきちんとフライを届けるキャスティングの能力が必要だし、着水音も「ポチャン」と言わせようものなら一目散に逃げて行ってしまうことが普通だ。フライにヒットした後は、ファイティング・テクニックを駆使しないと、大型の魚を手にすることは難しい。しかし、すべてがうまく行ったときはたいへん素直にフライに近寄り、ヒレを震わせて興奮しながらパクリと飲み込んでくれるのがボーンフィッシュの気の良さだ。米国の有名フライフィッシャーだったレフティー・クレーがいみじくもこう言っていた。「世界各地で魚を追いかけてきたけれど、1種類しかダメと言われたら、私はボーンフィッシュを残す」。その言葉の意味するところは、1匹釣ってみるとよく分かる。そしてハワイの海の浅瀬は、とても美しい。

    ボーンフィッシュは浅瀬を疾走する剛力
    白銀のボーンフィッシュ。下向きについた口が、ボトムフィーダーだということを教えてくれる。釣り場へのアクセスや、魚を見つける目など、この釣りではすべての面において現地のフィッシングガイドが欠かせない
    できるだけ速く、正確に……秒単位で釣りのやり方は変わる

    テイリングという目印

    ハワイのボーンフィッシュは、水深2mから15cmくらいまでの、さまざまな深さの釣り場でねらう。しかしなんと言っても白眉は、水深50cm未満の浅瀬に入ってきて、尻尾丸出しでエサをあさる魚をターゲットにするサイトフィッシングだ。だいたいはエビ、カニ、シャコなどをねらっているため、フライもその手のもの。基本として知っておくべきは、底の色とフライの色をマッチングさせ、少し目立たせる要素を入れるとよいということ。フライを引く速度も、模倣する生物で違う。カニはぜったいに速く泳がないし、エビはピンピンと跳ね回ることを考えれば、それも納得できるだろう。

    明け方のテイリング。エサを探してうろつく単独魚。こういう魚をねらうのはとても難しい
    だいたいは、このようなアーストーンのフライを使う
    だいたいは、このようなアーストーンのエビカニを模したフライを使う

    ボーンフィッシュは、尻尾すらも太陽を受けてプラチナに輝き、遠くからも一撃で見える。泳いでいる魚は安定したV字の引き波を出すが、停まって捕食している魚は、不規則に振動する丸い波紋を生み出す。ターゲットを目視し、そっと近づき、フライを繊細に落とすと……。そんな興奮がハワイの海には待っている。

    この旅のインフォメーション

    行き先

    ハワイ・ホノルル
    ハワイ・ホノルル

    日本からはホノルルへの直行便を利用。フィッシングガイドは現地のプロショップや日本のフィッシングツアー専門会社に頼む。

       
    気候(ホノルル) 平均最高/最低気温(℃):26.7/18.1(1月)、26.7/17.9(2月)、27.1/18.6(3月)、27.4/19.5(4月)、28.6/20.8(5月)、29.4/21.7(6月)、29.9/22.5(7月)、30.0/22.2(8月)、30.3/21.7(9月)、29.9/21.1(10月)、28.5/20.2(11月)、27.1/19.0(12月)
    降水量(mm) 113(1月)、80(2月)、89(3月)、60(4月)、43(5月)、26(6月)、32(7月)、29(8月)、30(9月)、66(10月)、93(11月)、109(12月)
    通貨・公用語 通貨は米ドル(1ドル≒111円)。公用語は英語。道路は日本と反対の左側通行。
    ビザ 3ヶ月以内の観光目的の渡航にビザは必要ないが、ハワイを含むアメリカへの渡航には別に事前の電子渡航認証(ESTA)による手続き・承認が必要になる。

    釣り場情報

       
    対象魚 ボーンフィッシュ
    シーズン 一年中が釣りのシーズンではあるが、浅瀬の水温が低い時期は、太陽が出てから水が暖まるのに時間がかかり、釣りの時間も短くなってしまう。乾期は5月から10月なので、そのあたりを目安にしていくとよい(ただし雨期といっても日本の梅雨のような感じではないので釣りは可能)。また、海の魚は潮で動く。ボーンフィッシュは、自分たちにとって安全でエサがとりやすいタイミングで沖から浅瀬に入ってくるので、いないときには全くいない。この釣り場はここのタイミングというノウハウが必要なこともあり、最終的にはガイドとの相談になる。
    ライセンス ハワイでは海での釣りに特別なライセンスは必要ない。
    タックル ガイドサービスを使えばだいたい一流品のレンタルがある。自分で持って行く場合には、海用のフライロッド、7番か8番指定のもので、ラインはフローティングだけで大丈夫(ただし熱帯環境用にデザインされた、硬いコーティングを備えるものが必須)。フライも、ガイドが使っているものが一番安定して釣れるので、日本国内で無理に調達していく必要はない。
    ウエア タックル以外の必需品は、高性能の偏光グラス(レンズカラーはコパーが推奨される場合が多い)、帽子、紫外線から身体を守る日焼け止め、風通しのよいフィッシングシャツ、速乾性のパンツ、ウエーディングの釣りになる場合は海を安全に歩ける専用のフラットシューズ(中に厚手の靴下とネオプレーンソックスを履くと靴ずれを予防できる)。スコールに備えて軽量のレインジャケットもあるとよい。
    • 釣り場情報は2018年9月現在のものです。
    写真 : 勝俣雅晴

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