真珠の入り江とミッシー伝説
四国西南部に位置する愛媛県愛南町。その中で市町村合併までは釣り人に「西海(町)」の名で知られたエリアは、黒潮踊る太平洋と豊後水道に面している。愛南町を含む南予地方は四国山地がほぼ東西方向に走り、山地がそのまま海に接するリアス式海岸を形成する。細長い岬と波穏やかな深い入り江が連続する海岸線は養殖業が盛んだ。名物のひとつが真珠。すなわちアコヤ貝の養殖で「月のしずく」、「人魚の涙」とも称される真円真珠発祥の地としても知られる。
養分豊富な入り江では、アジ、クロダイ、アオリイカといった人気魚が手軽に釣れるが、内海から深く切れ込んだ入り江のひとつ「御荘湾」は全国でも有数の大型クロダイ釣り場として人気だ。60cmオーバーが頻繁に釣りあげられ、70cmオーバーの目撃証言もある。そんな巨大なクロダイをファンは敬意を込めて「ミッシー」と呼ぶ。
オナガメジナの60cmオーバーが潜む
そして、それらのターゲットにもまして愛南町において人気があるのがメジナ釣り。中泊、武者泊といった港の周辺にある島々と沖磯群は大型メジナの宝庫であり、盛期の11~5月には海さえよければ週に2、3度は磯に渡るリピーターも少なくない。彼らが夢見るのは大型オナガメジナ。それも60cm、70cmオーバーの巨大魚である。伊豆七島の八丈島や、長崎の五島列島といった離島ではなく、渡船時間わずか数十分の距離で60cmを超えるオナガメジナがねらえる。
こんな磯のある地域は全国的に見てもごく稀だ。中泊の渡船先は鹿島、松島、小地島、横島といった島周りがメインで、武者泊はヤッカン、アブセなどの沖磯群。いずれも黒潮の差す海域である。
大型のメジナは老獪である。容易には口を使わず、駆け引きは繊細だ。寄せエサを撒くと磯際には魚影が見える。しかし、付けエサ(ハリに付けたエサ)は避けるようにして寄せエサのみを拾う。掛けてからのやり取りはスリリングで4号、5号という太イトを一瞬で切る強烈な力を持つ。しかし、イトを太くすれば食わず、細くしすぎれば取れない。そんな難しい魚ゆえ、手にした釣り人の喜びはひとしお。深く記憶に刻み込まれる一尾となる。
磯際での攻防。サオを一気に満月に絞り込む魚が相手となる
石垣の里
中泊港のすぐ側に外泊という集落がある。入江に面した山の急斜面の中腹まで民家が続く。それぞれの家には、隣家の軒に達するほどの高さの石垣が整然と積み上げられていて景観が独特である。これらは台風や季節風から家を守る石垣であり、集落は「日本の美しいむら農林水産大臣賞」、「未来に残したい漁業漁村の歴史文化財産百選」、「美しい日本の歴史的風土100選」にも選出された、石垣文化の一大景観地といえる。
食事も美味しい。水揚げ量が高知を抜いて四国ナンバー1といわれる深浦のカツオをはじめ、愛南町が日本有数の産地といわれるヒオウギ貝は一度は食べたいもの。ホタテ貝に比べ一回り小さな二枚貝で甘みが強い。デリケートな貝なので遠くの市場に出荷されにくく、旬は12~3月。当地の居酒屋や飲食店で味わえる。
この釣り場へのアクセス
愛南町には松山空港を利用。松山自動車道からR56を経由して栄町交差点手前の信号を右折して西海道路で中泊、武者泊港へ。
釣り場情報
〈中泊/メジナ〉
シーズン | 11~5月 |
問合先 | ながはま渡船 (中泊エリア。http://blogs.yahoo.co.jp/nagahama_tosen)、 ほてい渡船 (武者泊エリア。http://hotei8tosen.web.fc2.com/) |
- 釣り場情報は2016年1月現在のものです。