世界的にも貴重な「奇跡」の湖
水月湖と三方湖は、日向湖、久々子湖、菅湖とともに、福井県の若狭湾に面した通称三方五湖(みかたごこ)を成す湖。各湖は若狭湾一帯が沈降した際、山間の凹地が沈んでできたため、海がごく近くにあるにもかかわらず、釣りをしていると山上湖にいるような心地になる。湖畔はひっそりとしていて、静かに釣りができるのが魅力だ。
対象魚はコイ、フナ、シーバス(スズキ)、ウナギ、テナガエビ、ハゼなどだが、訪れるのは圧倒的にコイ釣りファンが多い。そのほかには、たまにシーバスファンを目にするくらいである。そして、三方五湖の中でも、特にコイ釣りファンがよく通うのが水月湖と三方湖である。
なかでも水月湖は、コイ釣りだけではなく、アカデミックな分野でも世界的に注目されている。湖底にプランクトンの死骸、落ち葉などが長い年月をかけて縞模様に堆積する「年縞」という堆積層があり、水月湖のものはその状態が世界一といわれるほど良いのだ。そこで得られたデータが、現在の考古学や地質学の世界において、正確な年代特定を行なうための拠り所となっている。
水月湖は三方五湖のちょうど真ん中に位置し、川と繋がっていないため水の動きがほとんどない。また、深場は無酸素状態なので、底をかき乱す生物が存在しない。さらに一般的な湖は1~3万年で湖底が埋まってしまうのだが、水月湖の場合、断層の影響で底が沈んでいくため埋まることがないという。こういった奇跡的ともいわれる条件により、世界でも類を見ない7万年分もの途切れのない年縞が確認されたのである。
夢の大ゴイが泳ぐ
そんな水月湖だが、コイの生育にも理想的な環境を備えている。海水と淡水(真水)が入り混じる汽水域は1年を通じて水温が安定しており、魚が活動しやすい。また、シジミなどのコイのエサが豊富だ。豊穣なこの地で育ったコイの引きはパワフルで、ほかの湖で釣れるコイとは引きの強さが一味も二味も異なると熱心なファンは言う。
大型に育つことが知られるコイだが、1mを超すことは珍しく、まして釣りあげるとなるとチャンスはめったにない。だが、水月湖および隣接する三方湖は、メーターオーバーのコイに一番近い湖と言われている。なかでも水月湖は、釣れれば90cm以上というケースが多いのだ。とはいえ、「一晩で1mクラスを3尾釣った」という話もあれば、1週間、あるいは1ヵ月間(!)ねらい続けても1尾も釣れなかったという話もある。決して簡単に釣れるわけではないのだ。
出掛けるなら春がおすすめ
コイ釣りのシーズンは、地域を問わず、産卵を控えて浅い場所に魚が入って来る春と、冬を前にエサを積極的に食べる秋がメインだ。その中で、冬場の寒さが厳しい水月湖と三方湖の場合は、遅めの春が訪れる5月のゴールデンウイーク頃から7月初旬くらいの初夏までがおすすめの釣りシーズンとなる。その際、水月湖は水深6~8mを境に淡水域と硫化水素を含む無酸素の汽水域に分かれるという特徴があるので、ねらうのは岸寄りでよい。コイも無酸素帯は避けて、岸寄りを回遊していると思われるからだ。
水月湖には、レッドコアと呼ばれる鉛の入ったラインをちぎって逃げたという規格外の大ものの情報もある。夢の大ゴイをねらって、古代からの時間が連綿と続く独自の水辺を訪れてみてはいかがだろう。
この釣り場へのアクセス
小松空港から北陸自動車道・敦賀ICを下りてR8を西へ。敦賀市街へ向かいR27へ。三方でR162に入り三方五湖へ。
釣り場情報
〈水月湖・三方湖/コイ、フナ、ワカサギ、ウナギ、ハゼ、テナガエビなど〉
シーズン | コイ釣りのおすすめ時期は5~7月 |
遊漁料 |
水月湖・海山漁協 1日600円、三方湖・鳥浜漁協 1日500円 |
管轄漁協 | 海山漁協 鳥浜漁協 |
問合先 | 上州屋敦賀店(釣具店/敦賀市若葉町。http://www.johshuya.co.jp/shop/shop.php?s=151) |
- 釣り場情報は2015年5月現在のものです。