ワイルドで豊かな海がくれる至高の釣り体験
広大なインド洋に臨む西オーストラリア州最大の都市・パース。エミューが砂浜を歩き、ザトウクジラが間近に泳ぐ海で、珠玉のビーチフィッシングと、ボートからの釣りを満喫する。心も体も思いっきり元気になる、贅沢な旅。
パースの釣り旅INDEX
SCENE01 旅のはじまり
1829年にヨーロッパ人による入植地の首府として建設されたパース。
都市圏人口200万人の町は、目の前をインド洋の大海原、背後をどこまでも続く内陸の荒野に挟まれながら、西オーストラリア最大、オーストラリア全土でも第4位の規模を持つ。
周囲に他の大きな町がなく、最も近い人口100万人都市のアデレードまででも2000km以上。
“世界で最も孤立した都市”ともいわれる一方で、鉄鉱石をはじめとする豊かな鉱物資源を背景に経済は好調で活気にあふれ、町の中心を流れるスワン川沿いのビジネス街や商店街、緑豊かな公園、区画整理された宅地、フリーマントルなどのオールドタウン、ワイン畑が広がるスワンバレーなどがコンパクトに集まり、“世界一美しく住みやすい”とも称される。
そんなパースは釣りも盛んだ。
地元で高い人気を持つのは、岸から手軽に楽しめる桟橋からの釣りや、白砂の浜から思い切りキャストするビーチフィッシング、そして春(9~10月)にはクジラの回遊もある、沖合に出ての海のボートフィッシングだ。
パースまでは、成田発のANA直行便で乗り換えなしの片道約10時間。出発は昼前、同日夜のうちに現地入りでき、時差もわずかに1時間(-1時間)なので、翌朝からすぐに行動できる。
9月下旬、2019年度アングラーズアイドルで、日頃から海のルアーフィッシングを愛好する松尾智佳子さんが、期待に胸を膨らませ南半球の夢あるデスティネーションを訪れた。
SCENE02 彩り豊かな町
1日目、この日は午後からビーチフィッシングを予定。
それまでの日中は、パース市内や近郊の名所を巡る。
モンガー湖は西オーストラリアの州の鳥であり、パースのシンボルでもあるブラックスワンが羽根を休める湖。
地元の人に「野鳥だから必ずいるとは限らないので、間近で見られたらラッキーだよ」と聞いていたのだが、松尾さんはその幸運をすぐに引き当てた。
湖畔には背の高いユーカリの木が立ち、さまざまな色の野生インコが姿を見せる。
その下をジョギングウエアに身を包んだ地元の人たちが颯爽と駆け抜けていく。
そこから少し南にあり、パースを象徴する場所にもなっているのがキングスパーク。
面積は東京ディズニーランドおよそ8つ分。
春には450種以上といわれる野生の花が咲き、カンガルーの手のような「カンガルーポー」、南十字星のような「サザンクロス」など、目を楽しませてくれるユニークな植物が目白押しだ。
眺望も素晴らしい。
広いところでは幅4kmもあるというスワン川の下流部と、その畔に建つ高層ビル群。
パースが自然と調和し発展を続ける都市であることをダイレクトに伝える景色は、見ているだけで「この町に住んだらきっと快適だろうな」と想像してしまう。
街歩きの最後は、パースの南19kmにある港町のフリーマントルを訪れた。
ここは西オーストラリアで最古の公共建築物であるラウンドハウスなど、入植時代からの歴史が息づく。
地元っ子が愛するソウルフードは、目の前の海で獲れる新鮮な白身魚のフライにポテトを添えた名物のフィッシュ&チップスだ。
「お腹いっぱいになりました(笑)、これで午後からの釣りもばっちりです!」という松尾さん。
一度ホテルに戻り、いよいよパースで最初の水辺に向かう。
SCENE03 エミューが歩く白砂の海岸
市内観光から戻った午後、滞在するヒラリーズボートハーバーのホテルに2人のガイドが迎えに来た。地元でショア(陸)からの釣りを専門に案内している、フィッシングガイドのロビーとアシスタントのトロイ。
釣りのメニューはお任せでお願いしていたところ、この日は北に1時間半ほど走るウエッジ島周辺のビーチに行くという。
日頃から日本のシマノ製品を愛用しているという2人は、松尾さんが準備していたタックルを手にすると、
「とてもいいね。ルアーフィッシングではぜひこれを使って。あとはエサ釣りも楽しいから、その時は僕たちが準備したものでやればいい。夜まで頑張れば大もののチャンスもきっとあるよ」とアドバイス。
さっそく出発する。
途中、海岸まであと少しという所で、「タイヤの空気圧を下げるから、少し休憩して待っていて」と言われ不思議に思ったが、その理由はすぐに分かった。
海方向への起伏を乗り越えるようにしてたどり着いたのは、どこまでも白い砂浜が続く遠大なビーチ。
どこが始まりで、どこが終わりなのか、見渡しても分からない。
目の前は遥か沖から絶え間なく風と波が押し寄せる海、背後は砂浜と崖でそれ以外は何もない。
松尾さんも「すごい!」と思わず声を上げた。
波打ち際に車を疾走させながら、車中で
「最初はルアーでテイラーをねらおう。テイラーは波の下にある“ガター(窪み)”の中にいる。今日は思ったより風が強くてタフな条件だけど頑張って。夜になったらエサ釣りでマロウェイねらいだ。昨日は10時頃にヒットがあったよ」とロビーが説明する。
タイヤの空気圧を下げたのは、軟らかい砂浜をスタックせず、あちこち走り回るためだった。
テイラーは西オーストラリアの沿岸で最もポピュラーな魚だ。砲弾型の体形で60cmほどに育ち、朝夕の薄暗い時間を中心に波打ち際を回遊する。お目当てはエサとなる小魚。
マロウェイは日本にもいるオオニベのこと。標準的なもので1m、最大で2mにもなる大きな魚で簡単には釣れないが、ロビーはこれまでに何度もゲストの期待に応えてきた。
一様に広がっているように見える釣り場だが、ロビーは海の色と波の形から、窪みのありかを探し出す。
「あそこはいいね。でも、もう少し見て回ろう」。
1つの場所を見切っては、またすぐ次の場所へ。
そんな中、「あれを見て」と指差された方向に目をやると、目に飛び込んで来たのは真っ白な砂丘をつがいで歩く大きな鳥。
オーストラリアの国章にも描かれているエミューだ。
ゆったりとした足取りで、しばし我々の釣り場探しの伴走者になった。
SCENE04 サザンクロスの星空に吸い込まれる
ロビーは間違いなく、この釣り場を熟知している。
しかし、この日はなかなかバイトが得られない。
太陽の位置も徐々に低くなってきた。
インド洋に沈んでゆく、生命そのもののようなオレンジの塊。
太陽本来の神々しさが、“他に何もない”荒涼とした景色の中でひときわ鮮やかに感じられる。
やがて夜の帳が下り、辺りは闇に包まれた。
ここからは冷凍のサバやマイワシをエサにした投げ釣り。
オモリの付いた仕掛けを沖に向けてキャストし、ビーチに立てたパイプに数本を置きザオにしたら、あとは魚が食いつくのを待つ。
サオの先には魚のアタリがあった時に動きで知らせる夜光マーカーが灯る。
するとトロイが1本のサオに向かって駆け出した。
「チカ! 来たよ。これはおそらくテイラーだ」。
日本では見られない魚との出会いはいつだって新鮮だ。
そこから数尾を追加できたが、やがてアタリは遠のいた。
前日にマロウェイが釣れたという午後10時過ぎまで粘るアイデアもあったが、この日は夜になっても予想以上に風が強く波も立っている。
翌日は早朝から沖のボートフィッシングに出ることもあり、日没から3時間ほど粘ったところで切り上げることにした。
釣りへの集中をいったん解き、ふとあたりを見渡した時、サプライズが松尾さんを待っていた。
「すごい星空! 天の川もはっきり見えますね。いつの間に……こんな景色が広がっていたんだ!」
天頂から南の地平線に向かって延びる天の川。
そのやや低い位置に2つの明るい“ポインター”と呼ばれる星がある。
そこからもう少し地平線に近づいたところに光る4つの星が「サザンクロス(南十字星)」だ。
「明日はいよいよ海の上ですね。どんな魚が待っているのかな」。
旅の始まりから、オーストラリアの雄大な自然に包まれた松尾さん。
このあと、クジラも行き交う大海原で、驚くような魚たちと出会うことになる。
パースの釣り旅INDEX
釣り情報
パースのビーチフィッシング
西オーストラリアではビーチフィッシングの人気が非常に高い。パース周辺にも、日帰り圏内にルアーでのサーフフィッシングやエサを使った投げ釣りができる場所が多くあり、最新のスピニングタックルのほか“サイドキャスター”と呼ばれるオーストラリアで昔から使用される専用タックルがよく用いられる。主な釣り場は北部に連なる砂浜の海岸線。ただし、範囲が非常に広いため、実際に魚がよく釣れるエリアを絞り込み、なおかつ安全にアクセスするにはガイドフィッシングが最適だ。ガイドは広い釣り場の中から、砂浜と平行に走る窪みやその中にあるスポット的な深場を波の形や海の色から判別し探し出す。日中によく釣れるのは、テイラー、オーストラリアンサーモン(ニシン科のフィッシュイーター)、ニシン、シロギスなど。夜釣りでは大もののチャンスが広がり、マロウェイ(オオニベ)、大型のマダイ、サメ、エイなどもヒットする。パースから北に離れるほど都市部から隔絶されたエリアになり、3~5日かけて遠征する本格的なフィッシングツアーもある。なお海釣りにライセンスは必要ない。
問合先 | トラウトアンドキング (http://www.troutandking.com) |
今回の使用タックル
ルアー |
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パースへのアクセス
パースへは成田からANAの直行便を利用。フライト時間はおよそ10時間。パース空港から今回宿泊したヒラリーズボートハーバーまではタクシーで30分ほど。
- このコンテンツは、2019年9月の情報をもとに作成しております。